「秋田を見習え」 その光と影
なにか言えば「秋田を見習え」みたいなことがでるが、高知県教育振興基本計画検討委員会の議論でこういう指摘もあっている。
「前回の会議の概要に『秋田県は素晴らしいから真似しよう』とあった。民間のデータでは、3年後に秋田県は理系がワースト2、3位、文系は最下位になるとも言われているのに検討したのか。」
3月高知市議会でも、秋田の教育を真似する問題をとりあげた。
学力調査で、2年連続日本一になった秋田だが、「秋田県2年連続学力日本一の光と影」(江畑怜人『教育』09年2月号)という現地レポートがある。
“日本一の影で10の大罪”というもの。
秋田県は何年も前から、小4~中3を対象にした学力テストを実施。
テスト結果は市町村教育長会議で公表される。そして、テスト結果が悪ければ校長は教育長に叱責され、担任は「今後の対策」というレポートを提出させられる。また結果が良くても担任は、「落ちないための対策」レポートを提出させられる。
全国学力調査の行われる4月の学校は、予備校のような惨状。次々実施される「点検カード」「家庭学習カード」への点検で担任は赤ペンマシーンと化す。
算数、数学の「単元テスト」の結果は、学校の平均点の順位ごとに県教委のHPで公表される。
担任はテスト結果をよくするため、過去問題を解かせたり、朝自習・昼自習・放課後補習などに必死。学校行事も削減されている。
その結果は「先生、最近、学校はおもしろくない。先生もテストの話しかしなくなったね」という子どもの言葉が耳を離れないと紹介している。
また、健康を害したり定年前に学校を去る教員が増えているという。
上記の「3年後」に伸びないというのは、押し付けられた「学校知」からの逃避ではないかと思う。
昨日も「点数をあげるのは簡単」「しかし、失うものもある。大らかさとか」という同検討委員会での議論を紹介したが、以前の議論では「小中学校の学力をあれほど細かく言わなくても良いのではないか。高知は大らかで、子どもたちは元気で明るく、一生懸命やって、素晴らしい大学進学実績を残している。検討委員会として、意識合わせが必要ではないか。」との意見も・・・
おそらく首長も議員も任期は4年、行政も数年で異動・・・この間に、「結果を出す」という思考が、目先の「頑張らせる」対策になるのではないかと思う。
ところで、社会経済生産性本部が発表したレポートがちょっとおもしろい。
「公共・行政サービスの生産性 ~都道府県・市区町村別にみた生産性指標」
「教育分野の生産性 」で、「生徒あたり教員数・教育費などに対する学力テストの成績から教育分野の効率性(生産性)を比較すると、都道府県別に比較すると、小学校教育と中学校教育ではほとんど差がない。」「高校教育になると都道府県間の差が拡大している」というもの。
ちなみに高知は、小学校の効果比較では、学力テストで41ある一位の1つ。中学校の効果比較では、学力テストと進学率では、46ある一位の1つ。高校の効果比較では、27ある一位の1つ。と、もっとも効果率が高い部類に入っている。つまり、全国的にそんなに差がない、ということだろう。
むしろ、地域よりも階層間の格差の拡大こそが、問題であとの指摘が多い。(「学力と階層」苅谷剛彦著、「子どもの貧困」阿部彩著など)
おもしろいのは、「全国学力テストの平均点は、住宅床面積と高い相関関係がみられた。これは、広い家に住んでいる都道府県ほど学力テストの成績がよくなる傾向にあることを示唆している」というもの。
自分の空間がある、逃げ出したいときに、逃げる居場所がある・・・子どもの成長にとって重要なことだ。住宅は生存権の1つである。
「学力対策」に力を入れるなら、ゆったりした広さの公営住宅をせっせと建てることを真剣に考えてはどうかと思う。
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文科省全国学力調査中学校国語B問題対応の教材開発商品価格:1,995円レビュー平均:0.0
全国学力調査の結果が出たようですが。全国学力調査の結果が出たようですが。成績下位の沖縄・大阪・北海道って○教組の活動が盛んな地域のような気がするのですが。秋田や福井など北国勢が上位なのに北海道が都市部でも成績が低いので疑問に思いました。組合の活動に熱心だと子どもの学力が低調になってしまうのでしょうか。[⇒回答を読む]
全国学力・学習状況調査は学校の成績に関係ないからやる気ない人もいたのでは?全国学... [Read More]
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