学童保育の安全確保へ 国民生活センターの調査・提言
国民生活センターは、昨年に続いて、「学童保育」について調査報告を発表している。今回は、特に「安全」に絞り込んでいる。
学童保育の安全に関する調査研究<概要> - 求められる放課後の安全な生活空間、格差の解消、保険への加入 09/3/5
07年の調査で、定員超過が3割を超え、必要な生活空間が確保されてないもとで、ケガが事故の連絡が1万件にのぼっていること。一方、契約書などに「免責」の規定があったり、保険への未加入の問題が浮き彫りとなっていたる。今回の調査に基づく「5つの提言」は、議会など自治体にむけての取り組みで役に立つと思う。
全国1,811市区町村を対象に調査し、回答は1,133件、62.6%となっている(国民センターに出した報告を、市町村の担当部署に要請すると手に入れられると思う。昨年、高知市の分を市議に取ってもらった)。
また運営主体別(公立公営、公立民営、民立民営)に107施設の面接調査(個別のケガ・事故、ヒヤリ・ハット記録について)をしている。
①ケガ・事故情報を収集し、事故予防に向けての検討、共有化を図る
事故の件数は12832件、うち入院が179件であるが、「件数」を集約しているのは半数未満。
「自治体へ報告している」 公立公営97.2%、公立民営79.3%、民立民営41.4%。
「集計している」 公立公営52.7%、公立民営32.3%、民立民営14.2%
「情報を分析し利用者に提供」公立公営26.4%、公立民営20.7%、民立民営11.9%
全体として「実態を把握していないことが明らかになった」「情報を分析し、指導員の研修に利用したり、再発防止策を立てるまでに至っていない市区町村が多い」と指摘している。
(件数は1年前の調査の3割増。入所者増、過密化によるものと考えられる)
②子どもの安全を守る生活空間(施設・整備)を確保し、人数の適正化を図る
男性が51.2%、うち一年生39.7%と、一年男子が多く、ケガは16時が29.3%が最多。
41人以上の施設で、事故の通院日数、入院日数が長期化の傾向であり、施設内の事故は「衝突、接触」によるものが多く、生活空間の確保と子ども数の適正化を提言している。
③指導員の配置、雇用条件、研修制度、専門職化にむけての改善
中途退職者のうち常勤職員は8.5%だが、非常勤は17.6%で3年目には50%台まで減少。民立民営では中途退職者(07年度)が多く、常勤17.9%、非常勤71.0%。
こうした中で、日替わり勤務で子どもの名前が覚えられない、低賃金でなり手がいない、研修の機会がないなどの実態がヒアリングで出されている。
専任で常勤の指導員の複数配置、雇用条件・研修制度の改善を提言している。
④条例・規則等で安全面の規定を設け、格差解消にむけ財政支援を拡充する
衛生管理、防犯、防災の「規定がない」がいずれも70%。ケガ・事故の「規定がない」59%と、安全面の規制が未整備であること。
救急措置の研修 公立公営58.7%、公立民営50.7%、民立民営35.6%
危険箇所の点検、修理 公立公営92.9%、公立民営81.6%、民立民営46.02%
など、公・民での格差が確認された。
また、ケガ・事故の防止のために考慮すべきことでは「施設の狭さ」「過密・大規模化」「指導員の研修」「指導員の不足」が上位に来ている。
安全面の規定、施設の最低基準、保守管理の体制などが必要で、そのための財政支援が不可欠と提言している。
⑤災害共済給付制度を学童保育にも適用する
子どもが傷害保険に加入しているか市町村が把握してない6.9%、加入してない4.7%。
まずは、傷害保険、賠償責任保険等の全員加入を促進するとともに、学校、保育所と同様に「災害共済給付制度」の適用となるよう法改正が求められる。
とくに民営の保護者が人的資源、資金を出し合ってサービス提供を担っている施設では、同制度の適用により、低額で補償範囲も広く、手続きも簡易であるなどの利点を強調している。
« 働くルールの確立で雇用創出と 労働総研が提言 | Main | 迷走・献金 つまずく二大政党 世論調査 »
「教育・子育て」カテゴリの記事
- ダイバーシティ&インクルージョン 組織のアップデート(2024.08.11)
- 2024国際女性デー 差別・格差の根っ子に、非正規、奨学金ローン(2024.03.14)
- 創造と管理、心理的安全と恐怖 組織の自己改革(2024.01.11)
- 不登校 きっかけは「先生」最多・考~ 組織の構造的問題として(2023.11.16)
- 高知の校則に関して(提言) 子連10/25(2023.11.02)
Comments