守りたいもの 「コウノトリ育む農法」の講演
15日、自治体政策セミナーの特別講演「 どんな地域にも地域を生かす地域資源がある-コウノトリ育む農法の意義と将来展望.」~西村いつき(兵庫県豊岡農業改良普及センター地域第2課長)の話は、極めておもしろかった。
テレビのスペシャル番組でも見て概要は知っていたが、県庁内の内部プロセスの様子、1つ1つ課題を鮮明にし、地道なデータ収集と手探りでの技術体系の確立や地域の合意づくりどの苦労など、地域振興に果たす公務労働の役割の大切さが実感できるものだった。
16日に赤旗で紹介されていた同農法
人と環境にやさしい稲作 「コウノトリ育む農法」
講演では・・・
「コウノトリは害鳥。エサを取るときに、足が汚れるのが嫌で稲の苗を選んで踏む」という古老の話しに、一日、追跡版を組織し実態調査。「歩くのは7千歩。踏んだ株は17.そのうちダメになったのは1株」と…こうした地道な調査の積み重ねで、誤解を解いていったとのことなど・・・
そして、
仕事の枠を超えて消費者の支援など販路の確保を常に意識し、産業と成り立つようすすめたこと、食育、環境教育とあわせ、子ども、地域にまちへの誇りが生まれたこと、観光産業としても力になったこと、大学などの協力など知の拠点づくりにも結びついていることなど・・・
最初は誰もができない、無茶を言う、税金の無駄使い、というところから始まったようだが、三人の母親の視点で、食の安全、安全安心な環境を次世代に残すことを大義に掲げ、目標と課題を鮮明にして、そして、人との結びつきを大切にしたことなどなど・・・女性の感性、力強さを感じるものがあった。
公務員の職員教育として実施しても、なかなかすばらしい力になる。
ちなみにスライドの最後に、最初の子どもの巣立ちのシーンが、普天間かおりさんの「守りたいもの」の歌をバックに流されたが、参加者の多くがウルウルしていたようでした。ユーチューブで以下のものを発見・・・
コウノトリの巣立ちの紙芝居(歌入り)
こうした農法は、温暖化対策としても重要である。
たとえば緑肥としてヘアリーベッチを栽培するのだが、10aあたり、10 kgの窒素固定を行なうとのこと。さらに二酸化炭素はその10倍を土壌に固定する。
EU環境総局は、昨年6月12日に、「土壌と気候変動に関する高級レベル会合」をブリュッセルで開催している。
EUの炭素の年間排出量15億トン。一方、土壌には700億トンの有機態炭素が蓄積されている。化学肥料だけを使用すると、土壌から大量の二酸化炭素が排出する。
イギリスでは過去25年間に毎年1,300トンの炭素が失われたと試算されている。いくら他で温暖化対策をすすめても、土壌管理を怠れば、二酸化炭素削減の努力は水泡に帰す危険がある。
EU 土壌と気候変動の関係でハイレベル会合 土壌有機物減少に危機感 農業情報研究所08/6/13
世界の土地の24%、日本の土地の35%が劣化 FAO報告 同7/3
不景気で、農林業への就職希望が増加していが、この機会に、一定の暮らしができるよう価格保障、輸入規制なども含めてトータルな政策転換が必要だろう。
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