「民間開放」でも行政に責任 耐震偽装判決
耐震偽装で、行政の責任を問う判決がでた。
耐震偽装訴訟 愛知県の責任認め5700万円賠償命令 朝日2/24
規制緩和し、民間が行った建築確認は、自治体は形式的に追認するだけでいいと省令できための国である。しかし、責任は問われた。
だったら、最初から「公」がやったらよいわけで、「官から民」の危うさが示した。
以前「2つのプール事故とアウトソーシング」の中で、こう書いた。
05年6月、最高裁は、民間機関の行った建築確認(行政処分、公権力の行使にあたる)についての国家賠償責任は、事務の帰属主体である自治体が負うという判断を出した。このことについて、専修大学の晴山一穂教授は“最高裁の論理では、「たとえ民間がやっても確認結果は市に報告され、市は、それをチェックして、違法であれば確認を実質上取り消すことができるという規定が建築基準法にはある。そういう監督権限があるから、市の事務だ」ということ”とのべ、「本当にチェックしようと思ったら、市としては数百枚の構造計算書を一から全部見直さなければならないことになるが、それなら最初からちゃんと確認検査をした方がよいということにもなる」「指定確認検査機関の制度を作ったのは国であって、数枚の報告書でいいという手続も国土交通省の省令で決められたことなのです。こうした状況のもとで市だけが責任を負うとなると、ずさんの審査をした民間会社の責任を免罪することになるのではないか」とのべている。・・と。
派遣切りに対し、住居や職の提供、相談に自治体が奔走している。銀行の投資の失敗に、税金を投入するのも同じ。
「おいしいところは民間で、尻ぬぐいは公務・税金で」・・・これが「規制緩和、民間開放」の共通のスローガンではないか。
責任だけおっかぶせられる行政の職員もたまったものではない。
【耐震偽装訴訟 愛知県の責任認め5700万円賠償命令 朝日2/24】
姉歯秀次・元1級建築士による耐震強度偽装事件で、強度不足が判明して建て替えられた愛知県半田市の「センターワンホテル半田」の経営会社「半田電化工業」(中川三郎社長)が、建築確認をした県とコンサルタント会社などに総額約5億1600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が24日、名古屋地裁であった。戸田久裁判長は、審査に過失があったとして県などの責任を認め、約5700万円の支払いを命じた。
一連の事件で、強度不足を見逃したとして行政の責任が認められたのは初めて。判決で戸田裁判長は建築確認審査は「危険な建築物を出現させないための最後の砦(とりで)」で、建築主事には建築主の信頼に応える専門家としての注意義務があると指摘。「設計上の問題について調査すべき注意義務を怠った」と述べた。
一方で、当時は最長21日以内に審査するよう求められており、時間的制約に加え技術的基準は多岐にわたり、すべての項目を審査するのは困難だった、とも述べた。
判決はまず、建設省(当時)監修の「建築構造審査要領」などを基準に審査する義務があったと指摘。その上で、基準に沿い、耐震壁の強度や設計型式について、具体的に検討した。
10階建てホテルの2~10階の耐震壁については、強度を満たすとした姉歯・元1級建築士の設計について、「建築の専門家としての常識的判断に反し明らかに不適切」と指摘。「構造図を見れば明らかで、建築主事は通常の審査で容易に発見できたのに放置または看過した」と述べた。
耐震壁がなく柱だけで支える1階の「ピロティ」の構造についても、阪神大震災で倒壊の危険性が指摘されたため、県が原則として禁止している型式で、技術的基準に反するとした。「大災害の貴重な教訓として確認された設計上の重要な注意事項」で留意がとりわけ必要なのに、建築主事は設計者に問い合わせもしなかったと指摘した。
これら設計上の問題について調査しなかったことが、建築主事としての注意義務違反にあたると結論づけた。
県などの賠償責任の範囲については、補強すれば建て替えの必要はなかったと指摘して、耐震補強工事費用分などにとどまるとした。その額は約2億5千万円で、すでに施工業者から2億円の弁済を受けているため、残りを最終的な賠償額と認定した。
判決について、県は「主張の一部が認められなかったのは誠に残念。今後の対応は内容を十分精査して検討する」とのコメントを出した。(岩波精)
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