福岡の民主党「有権者は合理的判断が難しい」
今朝、福岡市議団の方が、医療PFI問題で、視察に来ていたので、同席した。
民主系の市長が、市立子ども病院(三次救急)を、市東部の人工島(事業の失敗で土地が売れず)に移転、PFI方式で建替えを計画。搬送時間が大きく伸びると小児科、産婦人科の医師、住民が大反対し、移転の是非をとう住民投票を直接請求したが、議会の民主党が「有権者は合理的判断が難しい」と反対したと、その経過などを聞かせてもらった。
反対討論の中で、学者の話を援用し「有権者は大抵の場合、適切な判断を下すために必要な情報を持たず、専門的知識が少ないほか、ムードや感情に左右され、合理的、長期的な判断が難しい点」があると住民投票そのものに疑義を呈している。自民党もそこまで言うか、と驚いたとのことだか、この発言が住民の怒りを呼び、2チャンネルあたりでは炎上しているらしい。
また、PFI事業では、市側は「滋賀県や高知県の教訓でまなんで、リスク管理をする」とか説明しているようだが、政府も医療の運営PFIには厳しい見方をしているのに、おめでたい話というか、移転・PFIありきの利権の匂いがプンプン。(11月の臨時議会の日本共産党と民主党の討論を下段に紹介。とちらが説得力あるか、読み比べてください)
もともとこの移転は、自民系の市長が市民病院と統合して人工島に移転するとしていたものを、「見直す」とした「民主系」の新人が破って、一度は市民が決着をつけていた。それを「見直し」の結果、やはり『人工島』に移転するということで「裏切られた」「リコールだ」となっているらしい。
総選挙も近いが、福岡市では「自民から民主になっても同じ。病院問題をみたらわかる」となっているとか…。
移転、PFI反対で議会で議会で論陣を張っているのは共産党しかなく、医者や自民党の後援会をしていた弁護士さんなど含め、広範な市民の共同が広がっているとのこと。
近く、朝ズバで報道(金曜日?)されるらしい。
福岡市議会 08.11.19 第5回臨時会
◆45番(ひえじま俊和)登壇 私は、日本共産党市議団を代表して、本臨時議会に提案されている議案第182号、福岡市立こども病院人工島移転の是非を問う住民投票条例案に賛成し、条例案を否決すべきとの委員長報告に反対して討論を行います。
本条例案は、こども病院の人工島移転の是非を問う住民投票の実施を定めるものであります。市民が地方自治法の規定に従って、3万545人の有効署名数をもって条例制定の直接請求を行ったことを受け、本臨時議会が招集されたのであります。
本条例案に対して吉田市長は、市民に説明し意見を聞いた上で総合的に検討して人工島が適地だとの判断をしたこと、議会で審議され議決されたことなどを理由に挙げて、住民投票条例を制定する必要がないとの意見を表明しました。人工島移転計画の撤回と住民投票の実施を求めた我が党の質疑に対しても拒否する答弁を行いました。そこで、我が党が住民投票条例の制定に賛成する理由と、市長意見に対する我が党の見解を明らかにしておきます。
まず、市長がこども病院の人工島移転を決めたことは何の道理もないということであります。その1点目は、こども病院を人工島に移転させれば、子どもの命が救えないという問題です。
こども病院は現在本市の中心部にあって、市内のどこからも搬送、通院がしやすい場所にあります。さらに九大病院や福大病院などと連携して、主に西部地域の小児救急医療を担っています。こうした小児医療のバランス配置は、本市の医療政策に基づき、また、医療関係者の長年にわたる努力によって築かれてきたものであります。そのこども病院を人工島へ移転させれば、バランスが崩れ、西部地域は小児救急医療の空白地となります。これに対し、市長は都市高速道路を整備するので心配ないなどと言われますが、その計画は具体的に進展しておらず、2013年の新病院開院時に間に合わないということが判明いたしました。たとえ都市高速道路が延伸されても、西部地域からの搬送時間は現在地と比較して2倍以上かかることが予想されます。心配ないなどと言う市長には急患の子どもの搬送の実態も、一刻も早く病院に着いてほしいというその願いの家族の苦悩も理解できないのでしょうか。
とりわけ人工島に移転すれば、ハイリスク分娩に対応できないとの多くの産婦人科医による指摘は現場の声として無視できないものです。出産時に脳内出血を起こした妊婦がたらい回しされて死亡した東京の事件は、危険を伴う分娩が1分1秒を争って対応すべきものであることを改めて示しています。人工島に移転することによって搬送に時間がかかり、同様の事態を招くおそれが強いと言わざるを得ません。また、市長は、西部地域の患者受け入れについて、九州医療センターや浜の町病院と協議しているなどと言われますが、医師、看護師不足や事業採算などの問題もあり、空白をカバーできる保障は何もありません。子どもの命を救うために、こども病院は市の中心部にあるべきであります。
2点目に、人工島の破綻救済にほかならないという問題です。
市長は、人工島の病院用地を取得する予算をつけ、年度内にも土地売買契約を行おうとしていますが、市長が急ぐのはなぜか。博多港開発は土地が売れずに銀行団への返済が滞り、昨年度末、住友、三井、三菱UFJ、みずほなど、大手銀行による融資が打ち切られて危機的事態に陥りました。そこで融資の大部分を引き取ってもらった福銀には損はさせまいとして、市長は、より広い用地を税金で買い取るしかないと判断したのではありませんか。さらに人工島事業の推進の起爆剤に位置づけている新病院が頓挫すれば、今後の企業誘致やコンベンションセンター、美術館、大学などの公共施設の誘致、都市高速道路などインフラ整備にも影響が出て、人工島事業そのものが立ち行かなくなると恐れたのではありませんか。子どもの命と、財界、銀行の利益をてんびんにかけた上に人工島の破綻救済に狂奔する吉田市長に、子どもや医療を語る資格はありません。
3点目に、市長が公約した見直しの問題です。
吉田市長が一昨年の市長選挙で公約したのは、こども病院の人工島への移転計画を見直しますというものでした。患者家族の皆さんを初め、市民が移転中止を期待したのは当然です。ところが、吉田市長は前市長の方針を見直すどころか、継承、継続し、同じコンサルタント会社に調査業務を委託して、恣意的な報告書を出させ、また、現地建てかえ費用について、名前も言えないようなゼネコンの意見を聞いたとして、勝手に43億円も上乗せするなどして検討から排除し、人工島が最適との結論を導き、こども病院の人工島移転を決定しました。
市長は総合的に検討したなどと言われますが、その実態は当初から人工島移転を前提にして名ばかりの検証を行った、まさに検証偽装にほかならないのであります。どんな言いわけをしようとも、吉田市長の公約違反は明白です。裏切りだ、うそつきだとの市民の批判を浴びても、なお開き直る市長の態度は全く異常であります。
そもそも政治家の公約とは有権者との約束であり、公約違反は自身の存在意義をも問われる重大問題であります。本来なら市長は市民に謝罪した上で再選挙を行い、市民に信を問うのが筋であります。住民投票さえ拒否する市長に対し、もうリコールしてやめさせるしかないと市民が怒るのも当然であります。
4点目は、市長の新病院基本構想は病院事業における本市の公的責任を放棄するという問題です。
市長の基本構想案によると、敷地面積を3.5ヘクタールに広げ、ベッド数を現行190床から260床へとふやすなど大規模化し、その整備費用の単価を引き上げて、総額約186億円と見積もっていますが、収支を合わせるために病床利用率も外来患者数も今より1.4倍以上にふやすなどというあり得ない目標を立てています。そのため当局が、本市の急患診療センターと保健所5カ所の急患診療所における小児診療を廃止し、夜間、休日の急患を新こども病院に一本化することを検討し、新病院の患者増加見込みに含めていることが明らかになりましたが、これは、本市の子ども20万人の命を救う急患診療体制をも壊すような大問題を、市民にも議会にも隠れて検討することは許されません。そうでもしなければ成り立たないような計画は白紙に戻すしかないのではありませんか。さらに、個室の有料化で患者負担をふやし、職員の人件費もカットするなど、このような計画がされていますが、これのどこが21世紀にふさわしい病院でしょうか。毎年の赤字は17億円どころか何倍にも膨らむのは避けられません。その先にあるのは医療水準の切り下げ。そして民営化をたくらんでいるのではありませんか。新病院構想は、人工島だからこそ過大な規模にならざるを得ず、収支計画も机上の空論。破綻するのは必至であり、その結果、公立病院としての役割が投げ捨てられようとしているのであります。
我が党は以上4つの問題点を上げ、こども病院の人工島移転は何の道理もないことをただしましたが、市長の答弁は、今後検討していくが、人工島という場所だけは変えられないと固執する異常なもので、全く市民の納得を得られるものではありませんでした。道理のないこども病院の人工島移転はきっぱり中止する以外にはないのであります。
次に、市民の声を聞かない市長の態度は全く不当だということであります。
吉田市長は、住民投票は必要ない、必要ないとする理由の1つに、市民に説明し、意見を聞いたことを上げていますが、この間の市長の態度は、ただ一方的に説明して、市民の意見を聞いたというポーズだけ。ただ帳面消しにすぎなかったのであります。昨年の検証・検討における市民意見募集では、人工島移転に反対する意見が圧倒的多数でした。整備場所について諮問しなかった病院事業運営審議会からも答申で検討すべきとの意見があったと指摘されました。市が開いた市民説明会及び患者家族説明会では厳しい反対意見が続出しました。
特に患者家族の皆さんは、重い病気の子どもたちを切り捨てるのか、子どもたちの命を救ってくださいなど悲痛な叫びを上げています。こども病院の人工島移転に反対する署名は総計18万人以上に達するなど、かつてない規模の反対運動が展開されています。このように、こども病院の人工島移転について、市民は繰り返し反対の声を上げてきましたが、市長はこれをことごとく無視し続けてきたのであります。とりわけ現場で子どもの命を守るために日夜御尽力されている小児科医、産婦人科医の皆さんが、人工島移転には協力できないと反対を表明し、小児科医会が人工島への移転計画は、将来の子どもたちのためにならないと今月ついに反対決議を上げるに至ったことは極めて重大であります。こども病院が守るべき子どもたちとその家族、こども病院が連携すべき専門医師の多数が声を大にして反対している人工島移転を強行することがどうして許されるでしょうか。
吉田市長は一昨年の市長選挙で、市民の手から遠く離れたところで何もかも決まってしまうと山崎前市長の市政運営を批判していました。そして、聞く耳も、聞く心も持たない市政はもう終わりにしましょうと訴えていました。市長は昨日の答弁で、患者家族である2人の請求代表者の意見陳述に対して、心の叫びであるということはしっかり受けとめております、2人の気持ちは痛いほどわかりますと、あたかも気持ちに寄り添い、理解を示すような素振りをしましたが、それは口先だけ。人工島移転を推進すると繰り返しました。吉田市長、あなたの態度は、まさに偽善だ。患者家族の切なる願いをこれでもかと踏みにじる、余りにもひどいものではありませんか。
さらに市長は、議会で議決されたから住民投票は必要ないなどと言われますが、反対請願を継続審議とした議会の意思を無視して、9月議会に議案を提出し、各会派に可決を迫って強引に議決を得たのであって、これをもって正当化しようという態度は、まさに傲慢きわまりないと言わなければなりません。市民の声を無視し続ける吉田市長に一片の正当性もなく、我が党は厳しく糾弾するものであります。
最後に、今日、住民自治の発展、市民の市政参加は、地方自治体と地方議会の重要課題であります。市議会として市民の直接請求を真摯に受けとめ、その切なる願いである住民投票を実施することこそ求められております。しかるに委員長報告のとおり、昨日の第2委員会で、自民党、公明党、民主・市民クラブ、みらい福岡が住民投票は必要ないとの吉田市長に従い、条例案に反対し、否決を決めましたが、これは市民の願いを踏みにじるものであります。
そもそも自民、公明、民主などが当初から一貫して、無駄な大型開発である人工島事業を推進し、その破綻救済への巨額の税金投入に賛成してきたのは、その責任は重大です。博多港開発を救済するための市立病院の統合、移転を一たん決めたのも、これら推進勢力であります。それに対して市民がノーの審判を下したのが一昨年の市長選挙であり、そこで民意は明確に示されたのであります。こども病院の人工島移転が打ち出されたのは前回市議選挙の後であり、現在の議会構成はこの問題についての民意を反映したものにはなっておりません。したがって、議会として、こども病院の人工島移転についての民意を確認するという点から見ても、住民投票を実施して、市民に直接是非を問うべきであります。
我が党は、市政の大事な問題は住民みずからが決めるという住民自治の立場からも、市民から直接請求されたこども病院の人工島移転の是非を問う住民投票の実施を求めるものであります。
以上、こども病院の人工島移転の白紙撤回を求め、住民投票条例の制定に賛成する理由を述べてきましたが、今回、市長と推進勢力が住民投票条例を否決したとしても、こども病院の人工島移転に反対する市民の世論は一層高まり、いずれ厳しい審判が下されることを確信して、我が党の賛成討論を終わります。
◆栃木義博)登壇 民主・市民クラブを代表して討論に参加いたします。私たちは本議会に提出された福岡市立こども病院人工島移転の是非を問う住民投票条例案が、法律論の観点から妥当性を欠き、かつ政策的合理性の観点からも非現実的であると評価し、当該条例案に対する反対討論を行うものであります。 その理由について、順を追って申し述べます。 第1の理由は、住民投票実施をめぐっては解決されるべき諸課題が多く、今日においても制度設計が国レベルで確立していないという点であります。現在、内閣府に設置されている地方制度調査会においては、昭和51年の第16次地政調から、平成12年の第26次地政調にわたって住民投票制度のあり方について議論されていますが、住民投票について議論されたものとしては最新の第26次地政調における地方分権時代の住民自治制度のあり方及び地方税財源の充実、確保に関する答申においても、住民投票制度の一般的制度化については、住民投票の対象とすべき事項、選挙で選ばれた長や議会の権限との関係、投票結果の拘束力のあり方等、種々の検討すべき論点があり、一般的な住民投票の制度化については、その成案を得るに至らなかったとして、さらなる検討が必要であることが指摘されています。 さらに、平成16年5月に地方分権改革推進会議により提出された地方公共団体の行財政改革の推進等行政体制の整備についての意見書においても、今後、一般的な住民投票の制度的枠組み等の検討を深めるに当たっては、制度設計を国の法律で定めるか、地方の条例にゆだねるか、住民投票の発議における首長や議会の判断の余地をどの程度とするか、住民投票の対象事項をどうするか、住民投票の結果に拘束力を持たせるか、投票の成立要件をどうするか、現行の直接請求制度との関係等について意見の集約を図る必要があるとして、住民投票実施に当たっては、今もなお整理されるべき課題が多いことが指摘されています。 それだけ住民投票制度のあり方というものが政治論的または法律論的に整理することが難しい課題であることを示唆するものでありますが、諸所の学説において、住民投票制度がどのように位置づけられているのか、なぜ住民投票を制度化することが困難であるかという点を識者の指摘を引用して具体的に述べたいと思います。 まず、住民投票という制度そのものに対する考え方でありますが、東京大学名誉教授の原田尚彦氏によれば、現行の地方自治は間接民主主義を基本とし、直接民主主義の諸制度は、間接民主主義を補完し、その欠陥を矯正するために限定的に認められた例外的制度にとどめていると、住民意思の直接の発動によって決定される住民投票については、法律論の立場から行き過ぎた解釈に警鐘を鳴らしています。また、同氏は、住民投票という直接民主主義の手法は、議会制民主主義が機能不全に陥った場合にこれを矯正し、自治を復元する道を開く、いわば補足的な制度であるとも指摘しており、すなわち住民投票を実施するには議会が機能不全に陥っていると認められる事象が発現されることが前提であることを指摘しております。 そこで果たして福岡市議会が機能不全に陥っているか否かが住民投票を実施する際の判断基準として考えられますが、私たちを初め、責任ある会派は、議会において、こども病院のあり方については長い時間をかけて論点を整理するとともに、慎重な議論を重ねてきたところであり、良識ある議会人としては到底受け入れることのできない見解であります。これまでの議会における議論の詳細については後述いたしますが、何をもって議会が機能不全に陥っていると判断されるのかについては直接請求の内容からは読み取ることができません。 次に、住民投票の制度化に当たっての課題ですが、駒澤大学法学部教授の大山礼子氏は、我が国において住民投票を実施する際の課題として、1、有権者は大抵の場合、適切な判断を下すために必要な情報を持たず、専門的知識が少ないほか、ムードや感情に左右され、合理的、長期的な判断が難しい点、2、住民の意見は単純なものではなく、人によって微妙なニュアンスの差があるのが普通で、二者択一の設問では住民の総意は諮りがたい点、3、住民投票による政策決定は、いわば責任者不在の決定であって、首長も地方議会も結果について説明責任を負う必要がない点、4、住民投票は地方議会における議論や結論に至る過程を軽視することになるという点、5、住民投票は少数者の権利を侵害する決定がなされる危険性がある点の5項目を指摘しております。 さらに、私たち民主・市民クラブは、住民投票が住民の意思を確認するために非常に重要な手段であり、適切に利用すれば代議制民主主義を補完して、住民の意思を政治に反映する有効な手段になり得る点については否定するものではありません。しかし、以上述べたとおり、現行制度による住民投票については、民意反映の客観性や法的効力に課題なしとは言い切れない問題をはらんでおり、今後十分な議論による合意形成が必要であると考えています。 第2の理由は、本市議会におけるこれまでのこども病院のあり方に関する議論を軽視しているという点であります。 福岡市議会においては、昨年本市がアイランドシティ検証・検討作業を表明して以降、市立病院のあり方に関して医療機能、療養環境、経営形態を含め、さまざまな角度から議論がなされてきましたが、平成19年第1回定例会から本年9月に行われた平成20年第4回定例会までの議論に限っても延べ39人の議員が本会議場で質疑を行い、また、特別委員会や各分科会及び各常任委員会における議論も含めると、810項目にも及ぶ質問がなされており、十分な審議を重ねてきたところであります。議論の視点に関しては、新病院の整備場所のみならず敷地面積、担うべき医療機能、移転に伴う小児医療の配置バランス、交通アクセス、医師等人材の確保、整備費用、経営形態、収支見込み、病院事業の財政健全化、市民の意見、医療関係者の意見の受けとめ方、病院事業運営審議会答申の受けとめ方、アイランドシティ整備事業検証・検討に関すること、新病院事業の進め方等、多くの視点から議論を尽くしてきました。その結果、その中でも、こども病院のアイランドシティへの移転で懸念されていた病院への交通アクセスの問題に関しては、自動車専用道路の整備については、その必要性を多くの会派が市に強く主張し、行政も具体化に向けて作業を進めているところであり、現こども病院の移転後の西部地域における医療バランスの問題に関しても、議会における指摘により、周辺医療機関との連携を協議するための会議体設置を市に促し、設置にこぎつけるなど、議会での質問や討論を通して、議会はその役割を最大限に発揮してきたところであります。 ところが、本議会で提案された条例案においては、議会における討論の過程を無視して市民に二者択一の選択を迫る内容となっています。議会制民主主義のもとでの政策決定においては、単に表決の結果だけが重要なのではありません。表決に至るまでの討論を通じて問題点を明らかにし、他人の意見を参考にしながら自分の意見に修正を加え、必要とあれば互いの歩み寄りと妥協によって合意に達するプロセスそのものに価値があるのであります。一部の限定的な主張のみで、さきに述べたさまざまな論点や、議会における議論のあり方について何ら触れられていない本条例案は、議会人として断じて容認できるものではありません。 第3の理由は、本条例案においては、市の病院事業計画における合理的な反論がほとんどなされていないという点であります。 本市は、市立病院経営のあり方を根本から検証するという市長公約に基づき、現こども病院の建てかえを機に、医療水準の向上と療養環境の確保を図り、経営改革を推し進めることにより、新しい時代にふさわしい医療を提供することを第一義的に考え、当該目的を実現するためにはどのような場所がふさわしいかという手順で、アイランドシティが移転先として最適であるという結論を導いています。その際、複数の候補地との比較検討を、数値を用いて論理的に行い、その結果に対しての合理性は担保されていると評価しています。また、移転によって発生するさまざまな課題については、それをいかに解消あるいは最小化するかという視点から議論を行い、その解決策についても明示してきたところであります。ところが、本議会で提案された条例案においては、それら合理的な市の説明に対して、何ら論理的な反論を行うことなく、単に病院移転地の是非のみを問うという、結果的に議論の矮小化を図る内容となっています。政策論の観点からすると、論理的な反論もないままアイランドシティへの移転の是非のみを問うような住民投票の実施は一貫性、展望性に富んだ本市の総合行政が維持できない可能性が高く、到底賛成できるものではありません。 以上の理由から、本議会に提出された福岡市立こども病院人工島移転の是非を問う住民投票条例案に対しては、反対の意を表明するものでありますが、最後に、こども病院は福岡市全域の子どもたちの医療のみならず、九州を越えて西日本全域の子どもたちにとっての最後のとりでともいうべき小児専門の病院であります。そのような重要な施設が本市に存在し、それを運営していることを我々福岡市民は誇りに感じ、そのような誇りを抱くにふさわしい医療機能を備えた病院を整備していくことが本市の責務であるという所見も申し添えておくとともに、私たちの主張に対しましては、議員各位並びに140万市民の皆様の御賛同を賜りますよう強くお願い申し上げて、私の討論を終わらせていただきます。
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