グアム協定 「チェンジ」なかった軍拡路線
オバマ政権発足後初めての日米外相会談で「在沖米海兵隊のグアム移転に関する協定」に署名した。日米軍事同盟強化では「チェンジ」はなかった。
グアム協定署名 問われる五つの「合理性」 琉球新報2/18
[グアム協定署名]むなしく響く負担軽減 沖縄タイムス2/18 沖縄の主要紙は、協定の目的は「海兵隊のグアム移転費用を日本側に負担させ、米軍再編計画を確実に実行させること」(琉球新報)、しかも「内容(全文)も知らされないまま、あっという間に交わされ… 旧安保条約もそうだった」(沖縄タイムズ)と告発している。
協定の内容は、
・米領であるグアムに米軍基地を建設するために、不況と財政危機で苦しむ日本が61億ドル(財政支出分28億ドル)もの巨額の負担をするという世界に例を見ない屈辱的なもの。
・米軍再編・強化の計画(ロードマップ)の実現を再確約し、沖縄県民が拒否しているにもかわらず、辺野古での新基地建設を具体的に進展させることを頭ごなしに約束したもの。
極めて重大な調印がされたが、主要マスコミは、小沢・クリントン会議とか、酩酊騒ぎとかばかりで、ほとんど無視している。
日米同盟をどう強化するか、という観点からだけで、今回の合意を、国会承認が必要な条約にして調印したことについても、民主党政権になった場合でも「拘束できるという効果をもつ」(朝日)「適切な判断」(日経)とし、地元沖縄との協議について、朝日、毎日が軽く触れているだけである。
琉球新報は、社説を「無理を重ねず、ブッシュからオバマ米新政権への交代を機に米軍再編合意も見直し、軍事から外交重視へ、基地から経済重視へ日米安保も転換を始めたい。」と結んでいるが、テロとのたたかいが、世界の危機の増加と不安定を拡大したという厳然たる事実にたつとき、まっとうな主張だろう。
協定は、国会承認が必要であり、再議決も含めて許さない運動が必要だ。
【グアム協定署名 問われる五つの「合理性」 琉球新報2/18】
日米両政府は17日、「在沖米海兵隊のグアム移転に係る協定」に署名した。協定の最大の目的は、海兵隊のグアム移転費用を日本側に負担させ、米軍再編計画を確実に実行させることにある。
協定によれば、日本側の負担金は「2008会計年度ドルで28億ドルの額を限度」(1条、7条)と定めている。円高ドル安の今なら、1ドル90円換算で2520億円だ。
なぜ日本が、これだけの膨大な税金を米軍の新基地建設のために支出しなければならないのか。
その理由を協定は「沖縄県を含む地域社会の負担を軽減し、もって安全保障上の同盟関係に対する国民の支持を高める基礎を提供する」(前文)ためと説明している。
沖縄の負担軽減と安保の安定的運用がセットになって、普天間移設と部隊のグアム移転が計画された。移設も移転も日本側の要望だから日本が費用を負担するという。
だが、本当にそうなのか。ハワイの海兵隊太平洋軍司令部に研究滞在した大阪大学大学院のロバート・エルドリッヂ准教授は「グアム移駐は沖縄での削減を求められたからではなく、より柔軟にいろいろな所に展開できるように、国防総省が以前から考えていたこと」と解説している。
だとすれば「沖縄の負担軽減」の論理は、日本に巨額の財政負担を強いるための詭弁(きべん)にすぎない。
“現代の不平等条約”ともやゆされる「日米地位協定」でさえ、「新たな米軍施設の建設費用は米国の負担で行われる」とある。
「法的根拠のない多額の費用負担」に対する経済的・法的合理性を問われ泥縄式に協定締結というつじつま合わせに出たと映る。
米軍は普天間移設に反対してきた。支援部隊と攻撃部隊との一体的運用という軍事的合理性が、その主張の論拠だった。
だが、危険な基地の放置が沖縄県民の反軍・反米感情を高め、安保の安定的運用を阻害しかねないとの政治的合理性が軍事的合理性をけ散らした。
その政治的合理性も、経済的・法的合理性を欠き、泥縄の協定締結で体裁を保とうとしているが、辺野古沿岸での新基地建設の「環境的非合理性」の克服は困難だ。
無理を重ねず、ブッシュからオバマ米新政権への交代を機に米軍再編合意も見直し、軍事から外交重視へ、基地から経済重視へ日米安保も転換を始めたい。
【[グアム協定署名]むなしく響く負担軽減 沖縄タイムス2/18】 中曽根弘文外相とクリントン米国務長官は、オバマ政権発足後初めての日米外相会談で「在沖米海兵隊のグアム移転に関する協定」に署名した。 協定締結の動きが突然、表面化し、内容(全文)も知らされないまま、あっという間に協定が交わされる。一九五一年九月、サンフランシスコ講和条約と同じ日に締結された旧安保条約もそうだった。 グアム移転協定の中身は、県民生活に深くかかわり、県の将来を大きく左右する。県議会が昨年七月、「名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する意見書」を賛成多数で可決したのは、問題の重大さを認識したからだが、県議会の意志は今回、一顧だにされなかった。 衆院選で民意を問うならまだしも、なぜ今、唐突に協定なのか。いくつもの「なぜ」が次から次に浮かび、疑問はふくれ上がるばかりだ。 日米両政府は二〇〇六年五月、在日米軍再編に関する最終報告(「再編実施のための日米のロードマップ」)をまとめた。 協定は、ロードマップに記載された米軍再編案の実施と、グアム移転のための日本側の資金拠出を約束したものである。 ロードマップを国会承認が必要な協定にあえて「格上げ」したのはなぜなのか。 衆院で三分の二の勢力があるうちに、条約と同レベルの拘束力を持つ二国間協定を結び、政権交代が実現しても、合意内容が変更されたり破棄されることがないよう縛りをきつくする―政府の隠れた意図は明白である。 一九九五年十一月に設置された日米特別行動委員会(SACO)の取り組みと、米軍再編に基づく取り組みが決定的に異なるのは、米軍再編に基づく普天間移設が事実上、地元の頭越しに進められたことだ。 丁寧な合意形成を図るというもっとも大事な手続きが軽視されてきたことは、ロードマップの「正当性」を疑わせるものだと言わなければならない。 憲法第九五条は、一つの地方公共団体にのみ適用される特別法は、住民投票で過半数の同意を得なければこれを制定することができない、と定めている。 グアム移転協定は沖縄だけを対象にした特別法ではなく、今回、この条文を適用することはできないだろう。しかし、多くの県民が、ロードマップに盛り込まれた日米合意案には「合意していない」と思っていることも確かだ。 協定に盛り込まれた日本側拠出額二十八億ドル(上限)の積算根拠は、依然として不透明である。 海兵隊のグアム移転経費であるはずなのに、二〇〇九年度政府予算案に計上された日本側負担分の一部は、グアムの米海軍、空軍の施設整備に充てられることも明らかになっている。 ロードマップの協定化は、沖縄にとって、あまりにも問題が多い。国会は、小の虫が踏みつぶされることのないよう、問題点を洗い出し、沖縄の「目に見える実質的負担軽減」を実現してもらいたい。
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