母子家庭 病気でも働く、進学断念が増加
子どもの貧困は一刻も放置できない。「あしなが育成会」のアンケートについて報道されている。
母子家庭「病気でも働く」32% 生活厳しく 共同2/9
母親は病気でもはたらく32㌫、非正規雇用58㌫、進学を断念9㌫といずれも昨年より悪化している。
あらためて「あしなが育成会」のHPを見てみた。
昨年10月5日の大会で決議した
「遺児母子家庭の生活保障と遺児の教育支援等に関する要望」にはこう記述されている。
―― 遺児家庭の母親の年間勤労所得は137万円と、一般勤労者の31.5%にまで落ち込んでいます。また、家計の赤字は毎月4万円となっています。そのため、現在では、奨学金だけでは子どもの教育費が賄えず、4世帯に1世帯の子どもたちが進学をあきらめるなど、無念の進路変更を余儀なくされています。
15歳から24歳までの若者の45.9%が非正規社員という、ワーキング・プアが巷に溢れる日本にあって、高校にさえ進学できない遺児たちには、夢も希望もありません。日々無気力になっていく子どもを見て、自分のふがいなさを責め、「もう死ぬしかない」と訴えている母親もいます。 ――
そして、総合的な「子ども対策」、高校、大学進学の支援、18歳で切られる各種手当ての延長、母子家庭からの自治体での採用枠など5点を要望している。
浅井春夫氏ら著作「子どもの貧困 子ども時代の幸せ平等を」での提起と重なる部分が多い
折しも、今朝の「赤旗」に、「子どもの貧困」の著者・阿部彩さんのインタビューが一面を使って載っていた。
2月23日からはじまる県議会でもメインテーマとして質問をしていく予定である。
【母子家庭「病気でも働く」32% 生活厳しく 共同2/9】 病気や自殺で父親を失った母子家庭を対象に「あしなが育英会」(東京)がアンケートしたところ、「病気の時や病気がちな状態でも働いている」と答えた母親が32%いたことが9日、分かった。生活の困窮が原因で進学を断念した遺児も昨年2月の6%から9%に上昇した。 育英会は「健康や労働環境、賃金など母子家庭の母親に関するすべての生活条件が悪化している。『どうせ勉強しても進学できない』と感じている遺児も多く、生きることへの絶望感につながらないか心配だ」と懸念している。 アンケートは昨年12月から今年1月にかけて実施。昨年の2月、9月に続き3回目。高校1-2年の奨学生がいる1878世帯を対象にし、814世帯から有効回答を得た。 「病気でも働いている」のは227人で、昨年2月から8ポイント増加した。就業中の母親692人のうち非正規雇用は58%で、昨年9月より2ポイント増えた。 もっと知りたい ニュースの「言葉」 母子家庭(2007年6月1日)厚生労働省によると、2003年時点の母子家庭数は約123万世帯で、5年前から28%増。母子家庭の世帯当たりの平均所得は233万円で、一般世帯(580万円)の4割。児童扶養手当などを除き、就労による所得に限ると約170万円にとどまっている。暮らし向きについての意識調査では「大変苦しい」が全世帯では23%だが、母子世帯では53%に上った。
遺児母子家庭の生活保障と遺児の教育支援等に関する要望
平成20年10月5日 第20回遺児と母親の全国大会
私たちは、遺児母子家庭の生活保障と遺児の教育支援等について、強く要望いたします。
遺児母子家庭の生活を取り巻く厳しい現状に目を向けてください。
切迫した生活苦の中にある、私たちの切実な願いを聞いてください。
私たちから希望を奪わないでください。
何とぞ、以下の要望項目にご理解を賜り、その実現に向けて、ご尽力いただきたく、心よりお願いを申し上げます。
要 望 の 趣 旨
遺児救済運動、いわゆる「あしなが運動」は昭和42年、交通遺児救済から始まりました。その後、支援の対象を災害遺児、病気遺児、震災遺児、自死遺児へと広げ、この40年間で約7万人の遺児が高校等へ進学するのを支援してきました。さらに、平成12年からは、海外の震災遺児、エイズ遺児、戦争遺児、大津波遺児らと日本の遺児との交流を開始し、世界の遺児2億人の連帯運動へと発展しています。
遺児と母親の全国大会は、昭和44年に第1回目を開催し、今回で20回目となります。
過去19回の大会で掲げた要望事項で実現に至ったものは、高校授業料減免制度の導入、遺児家庭への歳末手当の支給、自損交通事故に対する自賠責保険の適用、ミニバイクの速度制限の導入、自賠責保険金の引上げ、遺族年金や児童扶養手当の支給期間を満18歳から高校卒業時まで延長したことなどです。
遺児救済運動が始まった40年前も、遺児家庭の母親は貧困にあえいでいました。
しかし、育英会の奨学金により、遺児は高校等に進学することができました。そして、遺児たちは、着実に社会人となり、収入を得、苦労して育ててくれた母親に親孝行をしています。さらに、結婚・子育てをし、子どもが望めば大学まで進学させることもできるようになりました。
また、遺児母子家庭の母親は、これまでの遺児と母親の全国大会での訴えが実現することで、次第に整っていく福祉政策に励まされ、人並みの老後を過ごすことができています。
たとえ貧しくても、希望があったのです。
しかし、今日の格差拡大、福祉削減の社会の中で、遺児家庭の母親の年間勤労所得は137万円と、一般勤労者の31.5%にまで落ち込んでいます。また、家計の赤字は毎月4万円となっています。そのため、現在では、奨学金だけでは子どもの教育費が賄えず、4世帯に1世帯の子どもたちが進学をあきらめるなど、無念の進路変更を余儀なくされています。
15歳から24歳までの若者の45.9%が非正規社員という、ワーキング・プアが巷に溢れる日本にあって、高校にさえ進学できない遺児たちには、夢も希望もありません。日々無気力になっていく子どもを見て、自分のふがいなさを責め、「もう死ぬしかない」と訴えている母親もいます。
バブル経済崩壊後、この国は経済財政の再建に向けて「改革なくして成長なし」、「企業成長なくして国民生活の安定・向上なし」と構造改革に全力をあげてきました。
しかしながら、その代償として、なぜ、遺児母子をはじめとする社会的弱者が真っ先に犠牲にならなければならないのでしょうか。なぜ、私たちの未来を担う子どもたちが、不運にも父親を失ったばかりに、貧困のために社会から排除されなければならないのでしょうか。
遺児家庭の親を支援し、遺児に教育を受ける機会を与え、子どもを立派に成長させ、次世代への貧困の連鎖を断ち切ることこそ、政府が担うべき役割、政治が果たすべき使命ではありませんか。そのための施策を実施していくことが、結局は、社会全体の活力を高めることにつながると考えます。
日本経済は現在、不況に向かいつつあるといわれています。政府は今こそ、遺児母子家庭をはじめとする社会的弱者の生活権と社会権を保障するための施策に全力で取り組んでください。私たちは、次の5項目の実現を政府・各党に強く要望いたします。要 望 項 目
<要望1>
次世代への貧困の連鎖を断ち切ってください。そのための本格的な取組を切望します。子どもの教育や就労を支援する施策を統一的、一元的に推進するため、行政組織の再編、例えばイギリスの「子ども・学校・家庭省」のような体制の整備と、関連予算の大幅な拡充を求めます。
また、遺児母子家庭の相談窓口となる「教育・就労・福祉テラス」のようなワン・ストップ・サービスの仕組みを全国津々浦々に整備してください。
貧困の連鎖を断ち切るためには、貧困世帯の子どもたちへの就労支援まで含めた教育こそが大切です。
イギリスでは、貧富の格差、若者の失業、犯罪の増加などの社会の荒廃に対して、ブレア前首相が教育改革を断行しました。「貧困家庭に育ったことであらゆる機会が奪われている。機会の不平等を是正するのが政府の役割」という認識の下、具体的な数値目標を設定し、特に母子世帯などの貧困家庭の子どもへの教育・就労支援を手厚く行い続けています。ブレア政権の政策を引き継いだブラウン現首相は、担当省庁を再編して「子ども・学校・家庭省」と改め、日本でいえば厚生労働省、文部科学省等が省庁の壁を超えて、子どもや若者の貧困対策に多額の予算をつぎ込んで大きな成果をあげています。
具体的には、①貧困世帯の低学力の小中学生らに「メンター」と呼ばれる講師によるマンツーマンの特別授業を実施し、基礎学力向上を図っている。②貧困層の多い地域の劣悪な環境にある学校を底上げする改善プログラムを実施し、2002年から03年にかけて貧困層地域の大学受験者が4.2%も増加した。③仕事に就けない若者を対象に全国9千人の「相談員」が住居探しや資金の貸付までマンツーマンで対応し、安定した職業に就けるまで、その自立を支援している。④2002年9月以降に生まれた全ての子どもが高校までの義務教育が終了する満18歳までに100万円以上の資金が受けられる「チャイルドトランスファンド」制度を国が新設し、大学進学や就職を経済面で強力に支援している-などです。
教育や就労支援などの予算は、日本の5.5兆円に対し、イギリスではその3倍以上の17.9兆円(5年間で2.5倍急増)となっています。また、日本の教育予算の対GDP比は3.4%(平成17年)でOECD加盟国の中で最下位です。しかも、昭和63年の調査開始以来、日本としては最低の数字です。
貧困世帯の子どもの問題は、その世帯だけの問題ではなく、日本社会が抱える重大な問題です。少子高齢化の進む日本だからこそ、240万人の母子世帯の子どもを含めた貧困にあえぐ家庭の子どもを、社会全体で育てることが急務です。子どもたちを社会から排除するのではなく、温かく育んでください。
日本においても、消費者行政を統一的、一元的に推進するための「消費者庁」構想と同様に、貧困世帯の子どもの教育や就労支援などを統一的、一元的に推進する行政の新しい組織を立ち上げ、貧困の次世代への連鎖を断ち切るため、イギリスと比較しても遜色のない本格的な取組を切望します。
さらに、教育・就労・福祉の各種サービスメニューについて、遺児母子家庭などが一カ所で相談できるワン・ストップ・サービスの仕組みを整備してください。司法へのアクセスを容易にする「法テラス」に倣って、教育(Education)・就労(Employment)・福祉(Welfare)の頭文字をとり「E.E.W.Terrace」(愛称「いいわテラス」)を全国津々浦々に展開してください。孤立しがちな遺児母子家庭にとって、なんでも相談できる「縁側のある街」が住みやすい社会です。
<要望2>
教育の機会均等が保障されるよう、遺児母子家庭など貧困世帯の子どもへの高校奨学金制度を充実してください。
日本学生支援機構の高校奨学金制度は、平成17年度高校入学生を対象とする事業から都道府県に移管され、その運用は各自治体に任されるようになりました。そのため、都道府県によって貸与金額、採用人数、採用条件などが異なるという事態が生じています。政府は、全国の高校奨学金制度の実態を調査し、教育の機会均等を保障するはずの奨学金の機能が弱体化するのを防止してください。
① 都道府県の高校奨学金制度については、平成16年度以前の日本育英会の奨学金規程と同程度の基準により、全国統一の運用にしてください。
② 父母の連帯保証人に加えて別生計の保証人を要求する制度(群馬、新潟、静岡など多数)を改め、連帯保証人だけで貸与等ができるようにしてください。
③ あしなが育英会など民間の奨学金との併用を認めない運用(青森、東京、岡山など多数)が見られますが、その制約を撤廃してください。
④ 高い学力水準を要求する運用(北海道、静岡、佐賀など多数)が見られますが、生活保護基準以下の世帯の生徒には、学力を問わず、全員を採用してください。
あしなが育英会の高校奨学金希望者は、平成10年の912人から19年には1,908人と2倍以上に急増していますが、進学の際は、授業料支払いに苦慮し事前に計算していかなければなりません。県毎に採用条件が異なることは遺児母子に不安を与えるだけです。
採用条件や貸与満了時に別生計の親族などの保証人を立てるのも、日頃の忙しさで親戚等との関係が希薄になっている遺児家庭などの母子家庭の母親にとって大変困難です。連帯保証人のみに制度にしてください。
また、地方自治体の奨学金は、あしなが育英会など他の民間団体の奨学金との併用を認めていないものがありますが、一つの奨学金だけでは進学できない遺児が31.7%に上ります。その制約の撤廃を強く望みます。
さらに、生活保護基準以下の貧困世帯の子どもにはできるだけチャンスを与えるために、あしなが育英会と同様、学力を問わず全員を採用してください。
<要望3>
生活保護基準以下の遺児母子世帯など貧困世帯の子どもに係る高校、大学の授業料等について、公的支援を強化してください。
① 高校・大学の授業料は、全額免除にしてください。
② 高校卒業時、大学などへの進学のための一時金(進学支度金)制度を公的資金で新設してください。
高校進学率は97.6%を超え、ほとんどの中学生が高校へと進学し、大学へもいまや2人に1人が進学する時代に、高校や大学教育の機会を失うことは、「個人の損失」で片付けられる問題ではなく、社会や国にとって将来の「公財」を失うことにもつながります。
平成18年度文部科学省調査(573大学の統計)によれば、日本の私立大学授業料の平均は83万円。入学金、施設費などを合わせると初年度130万円で、2年目以降も100万円超を払い続けなければならず、通学費、教科書代などを含めると、母子の勤労年収すべてを使っても足りません。他国と比較しても、ドイツは大学授業料が無料、フランスも年数万円の登録料のみ、イギリスも年間平均18万円と、日本の10分の1ほどです。アメリカには連邦政府が行う低所得者用の「ペル奨学金」があり、家庭の所得が一定額以下ならば申請者全員が給付を受けられる制度があります。
そこで、高校、大学の授業料を国公立、私立関係なく、全額免除いただけるよう公的支援を要望いたします。また、大学などへの進学のために一時金制度を公的資金で新設してください。<要望4>
母子家庭世帯の生計を支えている遺族年金や児童扶養手当について、現行制度では、高校卒業時(18歳到達後の年度末)で支給が打ち切られてしまいます。遺族年金や児童扶養手当の支給期間を大学や専門学校卒業時まで延長してください。
遺族基礎年金の支給要件や遺族厚生年金や障害厚生年金の加算の対象となっている子の年齢を、18歳の誕生日の属する年度の年度末(高校卒業時)までから、大学や専門学校などに子どもが就学中の場合は、その卒業時までに延長してください。同様に児童扶養手当の支給も延長してください。
平成6年度末までは、母子世帯の所得保障である遺族年金や児童扶養手当などは満18歳の誕生日で打ち切られていました。私たちは、過去の大会でも母子世帯の最も切実な要望として、「高校卒業時までの延長を」と訴え続け、平成7年4月にやっと高校卒業時まで延長されました。
しかしながら、前述のとおり、あしなが育英会の調査では、母親の年間勤労所得は平成10年から18年のたった8年で63万円も激減し、一般家庭との格差も大きく広がりました。
遺児をはじめとする母子世帯など貧困世帯の子どもが貧困から脱出するには、大学や専門学校などの高等教育への進学の機会を広げることやが何より大切です。しかし、母子世帯の所得が大幅に減り続けているため、貧困からの脱出がますます困難になっています。高校卒業時からが最も多額の費用が必要な時期です。遺族年金などの所得保障が続けば、貧困からの脱出に大きな効果が見込まれます。
<要望5>
国、都道府県及び市町村(東京都23区を含む)は、その職員の1パーセントを遺児などの母子家庭の母親から採用してください。遺児母子家庭の母を行政サービスの対象としてではなく、地域における福祉行政の担い手として活用してください。国は、こうした「1パーセント・ルール」の普及と定着のために、率先して尽力してください。
日本全国に母子家庭の母親が123万人います。母子家庭の母は総人口の1%を占めています。女性だけで見ると、日本女性の52人に1人は母子家庭の母親です。
一方、非現業部門で働く一般職の国家公務員は29万人余、一般職の地方公務員は295万人、合計325万人強が一般職の公務員です。このうち、42万人以上の地方公務員が福祉関係の部門で働いています。
母子世帯の母を行政サービスの対象としての視点だけで捉えるのではなく、地域における福祉行政の担い手として活用してください。特に遺児家庭の母は、福祉に対する理解と福祉を必要とする人びとに対する熱意が違います。国民本位の行政とするため、福祉行政を内側から変える契機となるはずです。
国、都道府県と市町村(東京都23区を含む)は、団塊の世代が引退期を迎えようとする現在、職員の1パーセントを目標に遺児母子世帯など貧困世帯の親から中途採用するなど、積極的な人事施策を展開してください。国は、こうした「1パーセント・ルール」の普及と定着のために尽力してください。
あしなが育英会が2月に実施した調査では、求職中の者が9.5%で、一般の45歳~55歳の完全失業率2.8%(総務省「労働力調査」08年2月)の3.4倍でした。就業中の者は84.5%ですが、そのうち不安定就労が56.7%にも上っており、遺児母子家庭の母親には、ぜひとも安定した職場が必要であることを付け加えておきます。
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