派遣村 全申請者へ支給 生活保護行政の画期
「おにぎりたべたーい」の言葉を残して餓死した北九州の事件、秋田での抗議の自殺など生活保護の申請拒否が大きな社会問題となってきた。その中で、厚生労働省の目の前の「派遣村」で申請者236人全員に手当てができることになったのは、生活保護行政にとって一つの画期をなすことである。
派遣村、生活保護「ほぼ全員に」 210人既に受給 共同1/9
生活保護受給者の9割以上が65歳以上の高齢者と疾病・障害で86%。つまり「稼働能力」のある層は生活保護から排除されている。
OECDの調査による貧困率は15.3%(02年。そしてこの基準は生活保護基準と驚くほど一致している{「子どもの貧困」阿部})だが、05年の生活保護受給率の全国平均は1.05%。子どもの貧困率も14.3%(00年)だが、子どもを持つ世帯の生活保護受給率は1%、母子家庭でも7%しかない。
稼働能力があると言っても働く場所がないとはたらけない。住居がないと就職活動すらできない。また、アルバイトとか見つけても給料日までの生活費、交通費はどうするのか。まず疲弊仕切った心身を回復しないと働くこともできない・・・こうした問題を放置、いや「水際作戦」と称して排除してきた「生活保護」行政にとって、今回の措置は、大きな転機となりうる。
「利用しやすく自立しやすい」制度にすることが大事である。
日本弁護士連合会が08年11月18日に
「生活保護法改正要綱案」を発表している。
◆「改正要綱の4本柱」として
・水際作戦を不可能にする制度的保障
・保護基準の決定に対する民主的コントロール
・権利性の明確化
・ワーキングプアに対する積極的な支援の実現
を掲げ、
◆「ワーキングプアに対する積極的な支援の実現」の項の説明では・・・
「我が国では生活保護の利用世帯の約9割が高齢者世帯、傷病・障害者世帯及び母子世帯である。現在の生活保護は、稼働年齢層のワーキングプアを広く受け容れるものとはなっていない。そこで、その原因となっている水際作戦を根絶するとともに、韓国の基礎生活保障法における「次上位階層への給付」制度など諸外国の例に学んで、生活保護基準以下の生活に落ち込む前の低所得者(ワーキングプア)層に対し、住宅扶助・医療扶助・生業扶助に限定した部分的給付を行い、早期の自立に向けた積極的な支援策を講じることができるようにし、「利用しやすく自立しやすい生活保護制度」を実現する。また、これによって、収入が生活保護基準を若干上回っただけで一切の給付が受けられなくなり、他方で社会保険料負担や医療機関での自己負担が生じることによる保護受給世帯よりも可処分所得が少なくなる「逆転現象」を防止ないし緩和することができる。
その前には、
人権擁護大会宣言「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人の尊厳に値する生存を実現することを求める決議」06/10/6
も出されている。
4分の1の世帯が貯金がないと言われている。誰しもが病気、リストラでホームレスになる危険性が潜む社会となっている。そうした時に、まさにセーフティネットとして機能する制度でなければならない。
派遣切りにあった若者、失業者のきちんと保護することは国、自治体の責任であるが、一方で、巨額の内部留保をためこんでいる大企業の社会的責任の放棄を、行政にだけ押しつけるのはいかがなものか。派遣切りの中止、雇用の確保、財政負担をきっちりしてもらわないといけない。
【派遣村、生活保護「ほぼ全員に」 210人既に受給 共同1/9】 舛添要一厚生労働相は9日の衆院予算委員会で、約300人が宿泊している「年越し派遣村」について、266人から生活保護の支給申請があったことを明らかにした上で「(施設の使用期限の12日までには)ほぼ全員に手当てができる」との見通しを示した。 東京都内の公共施設4カ所に分散して滞在している派遣村の失業者らは、自治体に生活保護を申請。千代田区と中央区によると、9日午後までに少なくとも計210人が支給を受けている。 派遣村の実行委員会は9日、使用期限の12日以降の新たな宿泊場所として、都内の旅館2カ所を1週間程度借り上げ、250人分を確保したと発表した。 12日までに住宅を見つけられなかった人は、希望すれば旅館に移ることができる。 千代田区によると、5日から7日までの3日間に派遣村の計223人が区に生活保護の支給を申請。うち206人について8日と9日に生活費や住宅費の支給を決定、即日支給した。また「郷里に帰る」とした1人についても、生活保護の一種の旅費を支給したという。 (共同)
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