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介護保険計画 「自立」強要の危惧 

 高知市の介護保険の次期計画(09-11年)立てるための協議会がはじまった。
 今回の計画は、反対、懸念の声が広がっている2012年の介護型療養病床の廃止など療養病床転換計画と時期が重なるため、見通しが極めて不透明な中でのものとなる。
市の「素案」の中で、非常に気になる記述がある。「自立」と「行政の役割」等についてである。

◆「自立」について
「介護保険制度の主旨(自立をめざすこと)」〔76頁〕。介護予防サービスでは、「ケアプランの作成にあたっては『自立して介護保険から卒業する』ことを目標設定する」ことなど、各所で「自立」が強調され、介護サービスを受けなくなることが「目的」とされている。
 
しかし、介護保険法にはそんなことは書いてない。
目的については
 第一条「この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。」
 ~ 介護、医療が必要な状態であっても、「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができる」ことと明記してある。そのため「介護の社会化」が唱えられたのではないだろうか。

 「自立」に関しては
 第四条で「国民の努力及び義務」の中で「国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとする。」と書いてあるが、それは「健康保持に努力しよう」という当たり前のことを書いているのであって、「介護保険」のそのものの「目的」ではない。

 また「要支援状態」の規定では 「身体上若しくは精神上の障害があるために入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部若しくは一部について厚生労働省令で定める期間にわたり継続して常時介護を要する状態の軽減若しくは悪化の防止に特に資する支援を要すると見込まれ、又は身体上若しくは精神上の障害があるために厚生労働省令で定める期間にわたり継続して日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態であって、支援の必要の程度に応じて厚生労働省令で定める区分(以下「要支援状態区分」という。)のいずれかに該当するものをいう。」となっており、「常時介護を要する状態の軽減若しくは悪化の防止に特に資する支援を要すると見込ま」れなっている。
~「常時介護を要する状態の軽減若しくは悪化の防止」となっており『介護保険からの卒業を目的とする状態』とはなってない。

 また高知市の素案は、「介護予防の推進」でも「自立期間の延長をめざす」と、要介護にならないことが「自立」との表現をしているが、上述したように、第一条の「目的」は、要介護状態になっても「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができる」よう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため」としているように、観点が180度違う。

 素案には、「元気で健康でいたい」という当然の願いとその支援、そうならなかった場合にも『自立』〔「自律」が相応しいかも・・〕して生活できる支援のあり方が、「自立」という用語で混在している。

 なぜそうなるのか・・・それは、「高齢者支援センター毎の介護度維持改善率についても公表する」という具体的方針とあいまって、介護サービスからの無理からの追い出し、給付の削減、抑制という意図、危険を内包しているとしか思えない。
 介護予防の成果は、個別具体的であり、センター毎の公表に何の意味があるのか。それは「○○センターは改善率が低い」という無用な数字の競争を作り出すだけではないか。

◆「行政の役割転換」について
「行政の役割転換」(32頁)で、行政は「市民の最低限の生活を保障」するが「健康福祉の中心は、地域住民の主体的な活動に移っていく」・・・と書かれている。
憲法、地方自治法のどこにそんな規定があるのか。憲法25条「健康で文化的な最低限度の生活」、「国は…増進につとめなければならない」、地方自治法も自治体の目的を「福祉の増進」と規定してある。その立場を放棄、あいまいにする表現で大いに問題がある。
表現は違うが、「行政はここまで、あとはみなさんの『自己責任』」という主張と軌を一にする、
そもそも地方自治の原則の1つは『住民自治』であり、住民の願いに基づいて行政が行動するのは当然である。制度の運用とともに、広く住民の活動をサポート、発展させることも行政の役割となるのではないか。また、そうした行政を作り出す市民運動の高揚が必要である。
「中心は住民の活動だ」と、行政と住民の活動を対立的にとらえることに、そもそも誤りがあると思う。

◆高まる「高齢者支援センター」の役割
 高齢者支援センターの役割の記述を拾って見ると、『自立』をめざした介護予防のケアマネジメントの質の向上、そして療養病床再編が大規模で行われる中での「施設から居宅」に対応する訪問介護や施設での「自立をめざした取り組み」の研修の強化、在宅復帰の相談窓口と病院、施設との連携、06年4月に施行された高齢者虐待防止法にもとづく虐待防止対策の窓口であり、成年後見制度などの権利擁護の機能の強化、介護相談・苦情の対応の充実が、うたわれている。
 
 しかし、体制は、国は中学校毎と目安をしめしているが、4つのセンターという体制は変わらず。人的配置が強化されることになるのかどうかは不明だが、機能強化にふさわしい体制がないと「絵に描いた餅」になりかねない。

 さらに、高知市では、公正・中立性を担保することからセンターを直営にしたのだが、委託への転換を執行部が口にしている。
 以前にもまして、公正・中立さ、公的役割が求められる中で、「委託」へ変える理由は見あたらない。
 高齢者の生活全般に関わるセンターとし、市民の状況をつかみ、総合的な施策(例えば生涯学習としての公民館事業、移動困難者対策など公共交通施策、ボランティアなど市民活動の発展など)に生かすための重要な職場と位置づけるべきであろう。

 尚、民間委託をめぐって、11月10日の「高知市行政改革推進委員会」で、こんなやりとりがある。

・委員/それともう一点,アウトソーシング推進計画で,22 年度に民間委託となっている地域包括支援センターについてですが,個人的な事で恐縮ですが,私はこの2月に約40名の人達と尊厳を支える地域ネットワーク会議を立ち上げました。と言うのは,高齢者をどう見守っていこうか,そういうネットワークづくりを一回きちっとやっていこうという事で立ち上げたんです。
平成18 年度に地域包括支援センターができたときに,市長の話の中で,これからネットワークづくりや地域包括支援センターが中心にやっていきます,そして高齢者を見守っていきますという話だったと思います。計画書の中にもそういうふうに書かれていました。
これは非常に大事な部分なんですが,それなのに22 年度にも民間委託するというのはちょっと分からない。そこら辺の理由を説明していただきたいと思います。

・事務局/ 地域包括支援センターの件でお答えします。地域包括支援センターは,18 年4月の介護保険法の改正の中ででき,高齢者の相談,介護予防のプラン作成,権利擁護,成年後見制度,ケアマネージャーの支援,そしてお話のありました地域のネットワークづくりという事で,非常に大事な部分を担っていると認識しており,高知市としても直営でスタートしている状況です。
ただ,全体的には,定数の問題とか一定規模の市では委託が多いという状況です。
高知市としても二十数名の職員を配置していますが,公平中立性を担保でき,なおかつ,そういった機能を果たせる,現在の直営と同じような機能を担保できる法人があればアウトソーシングの方法もあるという事で,今後の方向性として出していますが,今の時点ではそれを満たせる法人は育っていないと考えています。
すぐに民間委託するという事ではありませんし,充分に検討してやっていかなければならず,非常に重要な事だと認識しています。

さて11日の協議会だが、公募委員の一人が知人で、同じような問題意識で意見を言っている。

①出歩けるまちづくり・・・バリアフリーの問題 
低床バスの導入などが言われているが、福井のバス路線廃止問題に見られるように移動困難者の対応が今後重要になることを指摘。市側は「追加します」との返事。

②自立問題 「家族介護から介護の社会化」が介護保険の目的であり、「自立」の強調、数値目標の設定は、必要なサービスの切捨てにつながるのではないか。賛成できないと指摘
 市側は「ケアプラン作成の時の目標だから」と言い訳していたが、「自立」の概念については、「尚、検討します」となった。

③行政の役割について
「行政の役割転換」について、憲法25条、地方自治体の目的「福祉の増進」とあいいれない。行政の役割放棄である、と指摘
 市側は「措置制度から契約制度に変わったもとで行政の役割に変化がある」と弁解したが「健康で文化的」という文言入れることになった、行政の役割について「検討させてくれ」と回答。

④療養病床再編問題
高知は在宅支援診療所、訪問看護などの体制は弱い。厚労省は在宅死を2割から4割にするとかの目標をもっているが、本当に在宅が進むのか。この計画でよいのか。と指摘
市側が「それは尚、検討します」と回答。なお医師会から出ている委員からこの問題で発言がなかったとのこと。

 あと保険料については、現行の6段階(最高額が平均の1.5倍)から9段階(同、1.75倍)と、より累進性の強い方式が市側から提案された。

パブリックコメントは、1月28日まで。

こうした矛盾がでるのも、そもそも、介護保険導入時の国庫負担の削減、給付費の削減を目的にした04年の改悪、そして社会保障費抑制路線という大問題がある。
介護は、雇用効果がもっとも高い職種である(国立社会保障・人口問題研究所、京極氏のレポート)。内需中心の経済をつくり上でも、介護をはじめ社会保障の分野は重視されるべき分野である。

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