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自治体の非正規と専門性 備忘録

 「自治と分権」09冬に「自治体における非正規・関連労働者の仕事と権利」のテーマで永山利和さん(日大教授)、城塚健之さん(弁護士)、川西玲子さん(自治労連副委員長)の鼎談が載っている。
法の谷間となっている自治体の非正規。住民と接する最前線ほど非正規となっている。「構造改革」の中で進められた自治体のリストラ、官製ワーキングプアの問題・・・、それで人権保障という公務を担えるのか、あらためて考えさせられる。 以下は「備忘録」

「自治体における非正規・関連労働者の仕事と権利」  「自治と分権」 09冬
  永山利和(日大教授)、城塚健之(弁護士)、川西玲子(自治労連副委員長)の鼎談の「備忘録」

◆「公務員制度改革」路線の一部として出てきた自治体の非正規労働者の問題
・非正規雇用問題  地方自治体は法的問題があり、民間企業より厳しい/官製ワーキングプア
  非正規の増加 「分権型社会の任用制度の在り方に関する検討会」(00年)
~02年に「非常勤職員の活用を広範囲に勧めていく」という提言
(95年 日経連「新時代の『日本的経営』」のめざした雇用形態を公務員制度の任用仕分けに使うことを明記。また「共助」「自助」を事務・事業に広げるなど多様な雇用形態の混在政策、)
・現在の問題 ①労働条件に条例の規定がないと切り下げ ②長期継続雇用への期待を消す任用制度
  ~ 雇用の不安定化、非正規職員の差別問題だけでなく、業務遂行の質的な劣化問題となっている。

◆非正規でも、関連でも国民や住民の人権保障を担う仕事に変わりはない
・非正規の担っている仕事も「公務」。人権を保障する仕事。住民から見れば区別はない
  →住民の社会権の具体的保障に適切に関与するには、高い専門性、経験にもとづく臨機応変な対応が必要
  → それを安定的に遂行するために、身分の安定性が不可欠。コスト削減にもっともなじまない分野
・「任用」という行政処分
 コスト削減の結果として「非正規」「関連」。自治体では「任用」によって身分が設定(当局の解釈)
 → 期間を区切った「行政処分」により身分を付与。期間が過ぎると身分消失/雇止めの原則自由というとんでもない内容(民間の労働者雇用に適用される法的保護を外されている)
  → 「関連」~民間なので反復雇用、雇用継続の期待の合理性などで「解雇権の乱用」が類推適用される
       ただ、委託、指定管理者も期間が定められているので、期間を区切った雇用が非常に多い
  ⇒ 身分の不安定さは、すべての処遇が劣悪であることの根本原因/要求の声をあげられない
    ~ ある程度までは「使命感」でがんばるが、臨界点を超えると燃え尽き、崩壊が始まる/医療崩壊等
        ⇒ 非正規・関連の身分の安定は、住民全体にとって不可欠の課題

◆求められる役割と劣悪な処遇~ 現場から
・問題の基本~「公務公共業務を担い、果たすべき役割と見合わない不安定な身分、劣悪な処遇、そして労働力の入れ替わりからくる質の低下」
・保育の現場 ~半数以上が臨時も珍しくない。担任、業務量も責任も変わりなく、「臨時」と言えない実態
   ~ 一時金、退職金、育児休業、経験加算など自治体ごとの「規範」をつくり対応を、と均等待遇の運動
・地公法の壁 短時間で本格的・長期的な勤務につく労働者を「任用」する仕組みがないことが問題
  「何年働いても自給1000円。張り合いもなく生活も苦しい」(保育士)、「実態は正規と同じ、一年任用で12年。賃金は3分の1。病気やケガでやすめば賃金カット。せめて病気休暇がほしい。」(病院)
   → 現在、総務省「短時間勤務のあり方に関する研究会」で検討
・地域の賃金引下げを推進 民間のパートより100円やすい時給
  ~「大新東」の担当者 非正規の賃金の低さに驚き「そこと勝負して仕事をとっても儲けはあまりに少ない」

◆法的にみると・・・
・改善方向、法的課題 ①雇止めの防止 ②あまりにも劣悪な処遇の引き上げ

◎期待権侵害による損害賠償を認めた中野区の東京高裁判決
雇止めに関して、潮目が少し変化
・中野区の裁判 初めて期待権侵害による賠償を認めた。しかも賠償額が1年分
   国家公務員では  大阪大・図書館事務補佐員事件 最高裁94/7/14 
    「任用という行政処分なので地位確認を求める余地はないが、任命権者が雇用の継続を期待させた特別の事情のある場合は例外的に損害賠償を命じる余地がある」/裁判で「余地」認めず
  ~ それが、反貧困のたたかい、官製ワーキングプアに対する社会的批判の中、変化をつくりつつある
    中野区の裁判は、この流れを押し広げ、定着させた意義を持つ
*与えショックは大きい 経営法曹は「期待を与える言質をしないよう」と小手先の対応を指導

・自治体の臨時非常勤職員の均等待遇 ~雇止めがネックになり、たたかいの例は少ない
 民間では 丸子警報機事件・長野地裁上田支部 96/3/15 /差は8割まで
 格調高い「判決文」
「およそ人はその労働に対し等しく報われなければならないという均等待遇の理念が存在していると解される。それはいわば、人格の価値を平等と見る市民法の普遍的な原理と考えられるべきものである」
   ~ 同じ仕事の正規と臨時で、一時金・退職金も含め8割の賃金を下回れば、その差額を損害賠償と命ず
  
 ⇒ 労働省の「解釈」を否定するもの
 労働省 正職員とパートとかの「雇用管理区分」が違ったら全く別の処遇をしてもいい
  ~労基法3条「社会的身分による差別は禁ずる」だが「雇用管理区分」は「社会的身分」に当たらない
   との見解
 → 丸子裁判では、控訴したが東京高裁で、地裁の内容を超える和解/歴史的成果

・改正パート法(08/4)
正社員と同じ仕事、期間の定めがない、配置転換等でも正社員と同じ ~一切の差別を禁止
 ~「雇用管理区分」が異なれば「差別」も許容される考えを、根本的に否定するもの/非常な大きな意義
 → ただし、条件のハードルが高く、救済される職員は20万人ほど。
   公務員は、模範的であるべき職場として「適用除外」に。当然、差別待遇は許されないと解すべき

◆地方自治法の壁
・203条 非常勤の職員は「報酬」「費用弁償」 204条 常勤の職員は「給料」「手当」を支給できる
 → 非常勤には、報酬しかはらえない。期末手当、退職手当ははらえない、との「解釈」
・一時金を払っている自治体もある ~ 公務員バッシングの1つとして地自法違反との住民訴訟も
 枚方市 実質常勤と変わらない仕事、労働時間も正規の3/4以上~ 実質、常勤で204条を適用すべき
   大阪地裁08/10/31
 常勤の職員と「当該職員及びその家族の生計を支えるいわゆる生活の糧を得るための主要な手段と評価しうるような職務に従事する職員」をいい、常に正規の3/4以上を超える職員は「常勤の職員」と推測されると、弁護団の主張が認められた
 → ただし、「具体的な金額を条例が規則に委任したのは違法」として敗訴(控訴中)
(感想 ~ 条例で規定していたら、「常勤の職員」として認められたということ!)

・地方法と実態の乖離  もともと大量の臨時職員が恒常的に公務を担うことを想定してない法体系
  処遇改善が進まない理由 闘いを阻害する不安定な身分、女性が家計補助のためにする仕事との固定観念
・都合のよい使い分け~ 法の谷間
 一時金は「公務員」でないからと支給せず、一方で、マイナス人勧の適用、パートの育児休業は公務員適用除外は、「公務員」として処遇される。
 ~ 市町村の「公平委員会」も非常勤は対象外、労働局も「公務」だからと救済しない~ 法の谷間
・同一価値労働、同一賃金」へ
ヨーロッパは協定賃金、アメリカは職務給決定の職務評価の社会的制度。日本には制度がない
 ⇒「雇用期間の差の雇用形態、技術・熟練による賃金差は避けられないが、短時間労働でも長期定着で獲得される職能向上を踏まえ、正規職員と同様の法適用を」~ 運動は始まったばかり

◆法の谷間をどうこえるのか
・貧困のひろがり、均等待遇の議論、中野区の判例、それと「公務員制度改革」、自治体リストラのせめぎあい
  ~ 非正規の処遇。総務省でも放置できず検討へ ~ 人勧も民間が基準なのに非正規は適用外
・社会全体で非正規の処遇改善の合意づくりを
  使用者側 仕事の内容、時間を少し違えて「職務の違い」を言って格差を合理化 
   ~ 保育 連絡帳を書くのは正規だけ、15だけ勤務が短いなど…
  → その差別克服の論理として「同一労働同一賃金」があるが、職務評価が必要で運動として使われてない
    →政府の態度 ILO100号条約(男女の同一労働同一賃金)
 日本は40年前に批准して、何度も改善の勧告受けているが本気で解決しようとしてない
   50~60万という公務の非正規のうち8割が女性、その間接差別も手付かず

◎08人勧の「指針」はすごく大きい
・非常勤 3つの分類
①対応する正職員がいる場合 保育士、看護師 ②正職員がいない 学童保育、肢体不自由児介助員など
③ さらに補助的な、「格差」がつけられやすい職種
  ~ 枚方の場合でも、賃金は4~5割。退職金は10数㌫、もっとひどい職場が大多数
 →「同一労働同一賃金」も大きな合意になってないし、なにを基準にするか、はっきりしない状況
 ⇒ 08人勧「非常勤職員の給与に関する指針」/「非常勤の賃金も正規の賃金表をベースにして考えること」
   ~ 水準は別にして、最賃ギリギリで一年目も20年目も一緒は人勧すら無視したもの

◆公務の専門性を発揮するには身分の保障と適切な処遇が不可欠
・例 公権力行使で裁量の幅があるときの裁量権の発揮~ 専門性がないとできない
  社会権を具体化する対人ケア~ 個別具体的な配慮が求められる.素人には無理
  ~ こうした公務の専門性は自治体の内部にあるはず
    → これは身分が保障され、長く働らけ、研修やOJTの機会が保障され発揮されるもの
    → 官製ワーキングプアとは、働くものの処遇の問題だけでなく、住民に対する責任の放棄
        ~「民間のノウハウ」は、公務が求める専門性ではない/例 医療PFI
・民間委託~ そこかに先の仕事の内容が見えなくなる、
    声が届かなくなるとは、質の向上がないこと 例 介護のコムスンの事件⇔膨大な点検、評価業務へ
    また、会議、研修に同等に参加してこそ、質、モチベーションも高まる

◆大阪自治労連の実態調査から見えてきたこと
 非正規・臨時で長時間働いた人々が現に公務を担ってる現状をどうとらえ、運動するか、が課題
・非正規が3割超える自治体が6割以上 ~ 「補助的業務」と言えない実態

・恒常的業務につく臨時職のヒアリングから見えてきた4つの問題
①業務に必要な研修もなく住民と接することから、仕事の「マニュアル」化が進む
②窓口など住民サービスの先端が非正規となり、住民のための仕事という喜びを感じているのは非正規
③非正規は業務の一部に関わる契約だが、実態はそれを超えた対応。しかも起こった問題など、その意見が全体の業務運営に反映されない。
④雇用形態の違いが、職場の団結の支障となっている。
  ⇔ 非正規の人は地域住民であり、そうした処遇の中で、公務員バッシングに加担する構図があることも事実 
 ~ 非正規の人を一緒に公務公共業務を守り、生活できる賃金を目指す運動に引き寄せる取組みの重要性

◆団結し、集団の力で社会的に意味のある声を発信すること
・労働運動、市民運動の高揚が必要~
 解雇法理 昔は自由に解雇できた。それが全国各地の闘いが起こり、裁判所も呼応し、解雇権濫用法理を作り出した。今は、労働契約法16条に定められた。期間を定めた雇用の反復も類推適用としてきた。
  ~ 国民のたたかいが広がれば、裁判所の判決も変わってくる
    そのためには「非正規職員を無法な雇止めから保護しないのは正義に反する」の声を上げること

◎仕事を通じて主張できる職場をつくり住民に打ってでること
・永山 住民の中に。バッシングがあるが、反対に、ここに展望がある。
    住民の要求に沿う行政の在り方を求める課題と一体になっている関係性がある。
・城塚 非正規、外郭団体の組織化を。新公益法人改革で大規模なリストラの危険
・川西 いい仕事をし、業務を守るために非正規の問題は避けてとおれない。打てば響く状況がある。

【補論】
 同誌の「著者に『肝を』聞く」の中で「反貧困」の湯浅誠氏 ~最後に、自治体労働者へのメッセージをお願いされて・・・
 「とにかく打って出てほしい。公務員バッシングの中で、打って出るのは難しいという雰囲気があると思いますが、こういうときだからこそ出ないと。
 生活保護の現場でも首を引っ込めてては、職場環境はよくならないし、労働条件は過酷になる。「こんな労働条件でいい仕事が出来るわけがない」と積極的に外に打って出れば、一緒にやれることもある。「福祉事務所員の充実を求める交渉があるから一緒に来てくれ」と呼びかけたら、いろんな団体の人がいく。そういう呼びかけをどんどん出していかないと。首を引っ込めていても嵐はいつまでたっても通りすぎない。
 官製ワーキングプアの問題でも、どんどん社会的な運動に打って出てもらいたい。」

【事務総長通知の内容】
 給実甲第1064号 平成20年8月26日 人事院事務総長

一般職の職員の給与に関する法律第22条第2項の非常勤職員に対する給与について(通知)

 一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)第22条第2項の非常勤職員に対する給与の支給について、下記のとおり指針を定めたので、これを踏まえて給与の適正な支給に努めてください。
 なお、これに伴い、給実甲第83(非常勤職員に対する6月及び12月における給与の取扱いについて)は廃止します。
       記
1、基本となる給与を、当該非常勤職員の職務と類似する職務に従事する常勤職員の属する職務の級(当該職務の級が2以上ある場合にあっては、それらのうち最下位の職務の級)の初号俸の俸給月額を基礎として、職務内容、在勤する地域及び職務経験等の要素を考慮して決定し、支給すること。
2、通勤手当に相当する給与を支給すること。
3、相当長期にわたって勤務する非常勤職員に対しては、期末手当に相当する給与を、勤務期間等を考慮の上支給するよう努めること。
4、各庁の長は、非常勤職員の給与に関し、前3項の規定の趣旨に沿った規程を整備すること。

 以 上

(公務労組連絡会補足)
  3項の「相当長期」とは、6か月以上勤務している場合を意味する。

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