ついに資金ショート 高知医療PFI
1日の病院議会、20年度の決算見通しが報告された。ついに資金ショート…年度末の資金不足7億6千万円の見込み。収入が計画より4億6千万円減、支出は計画比で、ドクターの増員などで給与関係9000万円。焦点の材料費は2億7千万増で、医業収入に占める割合は前年とほぼ同水準で削減できなかった。
くるところまで来た。契約解除がマネジメント料放棄などのSPCの大幅譲歩か、根本的な対応が必要である。
同時期にPFIを実施した滋賀県の近江八幡の医療センターは、具体的に動き出している。
PFI契約解除に向け起債申請を提案 近江八幡市の医療センター 京都新聞11/25
民活病院 青息 コスト減のはずが…赤字 東京新聞11/12
問題なのは、この赤字が構造的なこと。
収入は、DPCの採用によって一定の増収が期待できるのだが、地域連携の強化も実施しており、どのくらいの病人やオペがあるかは、そもそも予想しがたい。
そうなると問題は経費。「よいサービスを低価格で」がPFIのうたい文句だ。医者や看護師の削減や待遇改悪は、そく医療サービス、そして医療収入に響き、削れるわけにいかない。
そうなるとSPC関係である。300億円のVFM(バリーフォーマネー)を出すとして、5億円のマネジメント料、給与相当分の支出を出し、さらにSPCがとりしきる委託関係費が30億円ある。
目玉の材料費率23.4%は遠く及んでいない(30.2%、契約内容である入院外来収入に対する割合。報道されている数字は医業収入全体にたいする割合。目標に対し8億2000万円がオーバー)。
また、8月には、契約時の業務提案のうち26.6%が未実施または一部実施にとどまっていることが報告された。そのなかには滅菌器材の保管・配置、物品の一元管理、地域医療ニーズの把握など重要度の高いものもある。
診療報酬の請求漏れなど、06年度には監査に「レベルが低い」と指摘された医事業務も改善されていない。
委託料も同規模同種の病院と比べて高いという指摘もある。
つまりVFMが生まれておらず、実質的に「契約不履行」の事態である。
8億円近い資金ショートは、県と高知市が負担するしかない。でないと倒産である。しかし、こんな状況で県議会、市議会がオッケーを出すか?
SPC関連で、材料費の削減、委託料の削減、マネジメント料の放棄などで、少なくとも10億円規模の改善することが明確にならないと無理だろう。
その前に、17年度に繰り延べしたマネジメント料1.7億円の支払いの補正予算がある。それも認められるかどうか。
オリックスから借りている建設資金も、より長期低金利の政府の企業債に借り換えることが必要だ。
後は、契約解除の裁判か、協議離婚か ・・・ そこに突き進むしかないたろう。
契約解除となれば「違約金」の発生が懸念されるが、SPCにそれを言う資格があるのか、オリックスという企業の社会的責任、姿勢が問われることとなる。
提案内容を守れなくてもマネジメント料が入り、委託料で中間マージンをとることも可能だ。おまけに建設資金を貸して利息をとる・・・ノーリスクでまるもうけではないか。
これが政府・財界のすすめる「民間活力」の姿である。行政も議会も、きちんと教訓にしなくてはならない。
【PFI契約解除に向け起債申請を提案 近江八幡市の医療センター 京都新聞11/25】 近江八幡市は25日、近江八幡市立総合医療センターのPFI(民間資金活用による社会資本整備)契約解除に向け、病院事業債118億円の起債を総務省に申請する議案を、12月定例市議会に追加提案する方針を明らかにした。センターを運営する特別目的会社(SPC)「PFI近江八幡」から病院施設を買い取り、直営に戻す方針。 同センターは、市直営だった近江八幡市民病院の老朽化に伴い、2006年に開院した。ゼネコン大手、大林組の完全子会社であるSPCが建設、管理運営し、30年後に市に無償譲渡する契約だった。 しかし、医業収益が計画を下回り、経営が悪化。起債によって建設費の残額を一括償還し、30年間で99億円に上る金利負担を軽減するなど経費圧縮を目指すとしている。 市は契約解除を求めてSPCと交渉中だが、本年度の病院事業債の募集期限が来年1月に迫っていることから、先だって起債を申請するという。 冨士谷英正市長は記者会見で「違約金の額をめぐって双方にまだ開きがあり、SPCとの交渉がまとまるかは5分5分」とした上で、「(事業債の内示が出るとみられる)来年2月から3月までには合意しなければならない」と述べた。
【民活病院 青息 コスト減のはずが…赤字 東京新聞11/12】 民間資本を活用して公共施設を建設、運営する「PFI方式」を導入した公共病院が、経営難や赤字に陥っている。滋賀県の近江八幡市立総合医療センターでは、市と運営主体の特別目的会社(SPC)との間で、契約の見直しなどを協議中だが、平行線をたどったまま。「このままでは市が財政再建団体に転落する」との指摘もあり、市民が民活導入による高いツケを払わされる可能性も出ている。 (名古屋社会部・島崎諭生)医療センターは、黒字だった旧市民病院を移転新築する形で、大手ゼネコン・大林組が全額出資するSPCが建設し、二〇〇六年十月にオープンした。三十年分の金利九十九億円などを含めた総整備費は二百四十四億円。
市が医療業務を担い、SPCが保守管理や清掃、警備、病院給食などを受託している。三十年後に市が施設の無償譲渡を受ける契約で、市は直接経営と比べ六十八億円の節約になると試算していた。
だが、「新築となって上がる」と見込んでいた病床利用率が横ばいにとどまったため、増えた減価償却費を収入で補えず、〇七年度に二十七億円の赤字を計上。一方、SPCに委託し、市が税金から支払う保守管理や清掃などの年間費用は、旧病院時代の六億六千万円から、十五億四千万円に膨らんだ。
有識者らを招いて設けられた検討委員会は今年一月、「経営計画がずさんで、このままでは市が財政再建団体に転落する。SPCに委託業務の見直しを求め、できない場合は契約を解除すべきだ」と提言。市は同二月、金利を削減するため施設を一括で買い取ることや、委託業務の一部見直しを申し入れた。
これに対し、SPCは「経営悪化は、契約変更や解約を認める理由に該当しない。三十年契約を結んでおり、巨額の違約金が発生する」と反発している。
◆運営の3病院不振
内閣府によると、全国で運営しているPFI方式の公立病院は近江八幡市立総合医療センターを含めて四カ所。うち三カ所が赤字となっている。
公立病院で初めてPFI方式を導入した高知医療センター(高知市)では、初年度の二〇〇五年度から病院収支の赤字が続き、三年目の〇七年度も当初見込みを約二億円上回る約十八億九千万円の赤字となった。
大阪府の八尾市立病院も、医師不足などから医業収入が低迷し赤字が続くが「導入で一定の経費削減効果はあった」という。島根県立こころの医療センター(出雲市)は今年二月に開院したばかりで収支状況が出ていない。
近江八幡市立総合医療センターの検討委員を務めた城西大経営学部の伊関友伸准教授(行政学)は「PFI方式がすべてうまくいくと考えると間違える。病院ではすべてを委託できず中途半端になりがちで、契約が長すぎるのも問題だ」と警鐘を鳴らす。
<PFI> プライベート(民間)ファイナンス(資金)イニシアチブ(主導)の略。民間の資金や経営ノウハウを活用して公共施設などの社会資本を整備する手法。事業コストの削減や、質の高いサービス提供ができるとされる。英国で誕生し、日本では1999年にPFI法が施行され、小泉政権下で積極的に導入されてきた。内閣府によると、同方式を導入したり、導入を計画している事業は、刑務所や図書館など318件ある。
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