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生きさせろ!~無条件の生存の肯定

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 九条の会事務局の小森陽一さんと雨宮処凛さんが「生きさせる思想」という本を出してます。現場体験から出発し、政治の流れの中に個人的体験を翻訳しながら、互いが触発されながら核心に議論が深まっていくようすが、とても刺激的な一冊でした。
 新自由主義、資本主義は、商品の交換が原則~ 商品経済の交換のルールに乗れない者は、生きてはいけないのか、という根元的な問いを行っている。

 家族関係など人間の基本の関係は赤ちゃんをケアするように「贈与」であり、「交換できるもの」を求めるところから、しかも過度の競争によって、「負ければ自己責任」という枠組みの中で「生きづらさ」が生まれていることを明らかにしている。
 「成績のいい良い子」「会社の役に立つスキルを持つ」~そういう「条件」があって生存が認められた。脱落すると「ダメなやつ」、「競争に勝てなかった自己責任」と追いつめられた。
 雇用・労働という社会構造にその原因が根ざしていることが見えなくすることで、自分を追い込む回路に墜ちていく。
  そこから、どんな形で『抜け出るか』・・・いじめ、オウム事件、アダルトチルドレン、家庭内殺人、メンへラー、ネット心中 がそういう社会意識状況のもとにつむぎなおされていく。
 
なぜバッシングが生まれたか・・
 敵対したときに、相手が強ければ、恐怖と逃走、弱ければ、怒りと攻撃~ そういう弱肉強食という動物的な反応のもと・・・ 「得たいの知れない、話し合いの相手とならない」と感じた「恐怖」が、圧倒的な軍事力を背景(その欲望)をもとに、攻撃性に転嫁する。相手をけなし、侮蔑するという暴力につながる笑いかそこにある~ 学校でいじめ時の笑いと共通する。
 恐怖、不安定は、1つの「仮想敵」をつくり、攻撃することで安定する~ いじめ、北朝鮮・イラク問題、郵政選挙 も同じ構造と言える。
 それだけ、日本社会は、「いい学校、いい会社、いい人生」という幻想が崩れ、その無意味な競争にまきこまれるフラストレーション、そして未来への不安がたまっていた。  
 
 そのバッシングは、する側の罪障感を解放したとの指摘。アジア侵略の罪、専守防衛のルールを破ってイラクに派兵したことに抗議できなかった罪意識、一生懸命に競争をしてきた結果、子ども達に「生きづらい社会」をつくってしまった思い ~ それらを「得たいのしれない国」「普通でない人の自己責任」「豊かで平和な日本で何が不満だ」とバッシングすることで、「共同免責体制」を築いたのではないか。
「自己責任だから」と言えば、何をしない自分を免罪できる・・・ 「便利な言葉」だと。

 構造改革のもとでの「景気回復」も実感できず、郵政選挙で勝利しても悪化の一途、04年に製造業に解禁された派遣労働のひどさ、貧困のひろがりとそのたたかい、・・・そうした中で「規制緩和」「構造改革」がとんでもないものとの意識の転換 ~ 「生きづらさ」の原因の発見へ

 生きさせろ・・・無条件の生存の肯定は、市場原理主義のもと「自己責任」をともなった「条件つき」の生存に対する根本的な問題提起。

 「新自由主義」にもとづく「自己責任」論に対抗するには、力強い『言葉』が必要だった。
 
 憲法25条、そして「自立」というが、本当は1人では生きていけない人の基本的な::原理にもとづく運動である。「生きづらさ」を生み出す社会構造を知り、原因を知って、「自己責任」に押し込められた「自己否定」の回路から離脱し、自己肯定が出来てこそ、不当な扱いへの怒りが湧いてくる(湯浅誠氏の言う「溜め」と通ずる)。
 生きさせろ・・という運動はそういう運動だと・・・
 そして、「生きづらさ」を感じている人はみな同志だと、雨宮さん
  資本主義社会の商品交換にもとづく、「交換の道具」をもっているかという『条件つき』の生存に対するのは、人間本来の『贈与』の原理・・・赤ちゃんか泣けば、まわりの大人がケアする・・・家族関係の基本は『贈与』
 こまっている人がいれば、分け与える、力を貸す・・・ これを社会的に実践するには、非正規雇用などを使い大もうけしたところが、貧困に対しケアするのが当然である。
 
  そのためには、そのことを伝える『言葉』を持たないといけない。「無条件の生存の肯定」・・・生存権に対する新しい提起に対して、社会学、経済学、行財政の在り方、労働運動、所得再分配など税体系などを組み立てなおす必要があるとの提起、そして現在の法のもとでも奪われた生存権をとりもどす司法でのたたかい ・・この運動とたたかいの連帯の言葉で対談は終わる。

 尊敬する先輩が言っていた。自分の狭さを克服するのは人との対話であると・・・ この本は、自分の中に内面化した「あるべき像」を基準とした「条件つき」の生存の目や「自己責任」論の目を気付かしてくれる。
 
 09年は選挙の年~  新しい「生きさせる思想」をもった政治をつくる年に。

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Comments

青年論の話しは、輪切り?というか、その時の情勢との関係で、面としてとらえられがちです。
しかし、世代や個人の成長過程とともにとらえなければ、いけないとのが、労働者教研集会での私の発言。
この著書は、見事に、縦と横を合わせたトークでした。

四月の雨宮さんの来高がたのしみです

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