公立病院への財政支援拡充を 総務省検討会
11月25日、総務省の「公立病院に関する財政措置のあり方等検討会」が報告書をまとめている。昨年、「構造改革」路線の流れの中で「公立病院改革ガイドライン」が出てきたが、医師不足、医療崩壊の実態が顕在化する中、公立病院の役割を改めて明記し、必要な財政支援を強化することを求めている。ここにも潮目の変化がある。
公立病院に関する財政措置のあり方等検討会報告のポイント
公立病院に関する財政措置のあり方等検討会報告書
産科・小児科への財政支援「拡充を」 総務省検討会 朝日11/25
公立病院に関する財政措置のあり方等検討会」報告に対する談話 自治労連12/12
同報告は、「公立病院改革の目的は、あくまでも、地域において必要な医療の提供体制の確保にあるのであり…適切な財政措置を講じることを通じ、各地域で住民に対し良質の医療を継続的に提供できる体制の再構築を図ることができるよう、念願してやまない。」「公立病院が担う不採算医療等に係る費用の評価について最大限の配慮が払われ、もって地方公共団体の財政負担の軽減に資することを求めたい。」として、特に産科、小児科、救急医療や、過疎地の病院への財政支援を打ち出している。
報告の中でもいわゆる「行革」と公立病院の役割のせめぎあいの結果がみられる。医療費の半分は人件費であり、医療を守ることは、地域経済、雇用効果も大きい。
財政支援を抜本的に拡充させ、住民の命と暮らしを守るとりくみをさらに強めたい。
【産科・小児科への財政支援「拡充を」 総務省検討会 朝日11/25】 総務省の「公立病院に関する財政措置のあり方等検討会」(座長・持田信樹東大大学院教授)は25日、医師不足が深刻な産科、小児科、救急医療や、過疎地の病院への財政支援の拡充を求める報告書をまとめた。豪華な建物を整備しにくくする措置も求め、限られた財源の重点配分を促す内容になっている。同省は09年度からの実施をめざす。 報告書は、公立病院への財政支援の総額を拡大するよう努力を促す一方、「厳しい財政状況を考えれば、既存の財政措置の範囲内で、必要性の高い分野に重点配分することが求められる」と指摘。(1)特別交付税が上乗せされる過疎地などの「不採算地区病院」の要件緩和(2)産科、小児科、救急医療を対象とした特別交付税拡充(3)公立と同等の機能を持つ病院に自治体が助成する場合も特別交付税を交付――などの措置を盛り込んだ。 豪華すぎる病棟の建設を防ぐため、建築単価が一定額を超えた場合、自治体が発行する病院事業債の対象外とすることによって普通交付税を減らすことも提言。病床利用率が低い病院への普通交付税減額も検討したが、「11年度以降の反映に向けて慎重に検討」と結論を先送りした。
【地域医療と自治体病院を守るため、政府は財政支援措置の抜本的強化へ踏み出せ ―「公立病院に関する財政措置のあり方等検討会」報告に対する談話】 日本自治体労働組合総連合 書記長 野村幸裕 総務省の「公立病院に関する財政措置のあり方等検討会」(以下「検討会」という)は、11月25日に報告書を発表し、平成21年度以降の地方財政措置についての提言を行いました。検討会は2008年7月から6回の会合を開き、自治体病院長など関係者からのヒアリングや自治体からの意見募集など行っています。この提言は、総務省が07年12月発表した「公立病院改革ガイドライン」に対する自治体病院関係者の厳しい批判と、地域医療の充実を求める全国各地の住民の運動と世論を背景として出されたもので、地域医療・自治体病院関係者等の要望を一定反映したものです。
自治労連は、「ガイドライン」発表以来、「いのちと地域を守る大運動」を全国でとりくみ、現場の実態や声をもとに総務省に対して、「ガイドラインに基づく病院改革」(病院の統合や縮小再編、病院の運営形態の見直しなど)への「政策誘導」としての財政措置ではなく、地域医療と自治体病院の再建・充実のため、医師確保対策やへき地・不採算医療等への支援など、「ガイドライン」を前提にしない財政支援措置の抜本的強化を求め、具体的な提案を含めて、繰り返し要求行動を行ってきました。
検討会報告書は、公立病院の置かれた厳しい状況について、自治労連がこの間、「自治体病院をめぐる三重苦」として主張してきた、「医師不足」「診療報酬のマイナス改定」「地方財政の悪化」にふれ、合わせて公立病院の担っている役割についても明確にしています。
そして、「経営主体の統合」や「再編・ネットワーク化」の評価をはじめいくつかの点で、私たちと見解を異にする部分はありますが、「提言」部分でのべられている、「不採算地区に係る特別交付税措置の適用要件の拡大」「産科・小児科・救急医療に関する特別交付税措置の充実」「公立病院に勤務する医師の人件費に関する財政措置」「有床診療所への特別交付税措置」「公的病院等に関する助成措置の拡大」などは、この間、自治労連が「ガイドラインを前提にしない財政支援措置」として要求してきた内容とも一致するものです。また提言では、「公立病院における医師不足や厳しい勤務実態、…産科・小児科や救急医療の逼迫した状況を憂慮しており、これらに関する財政措置の改正については可及的速やかに措置されることを特に求めたい」とした点も重要です。
「ガイドライン」では、「地方財政措置の重点化」として「病床利用率の交付税措置への反映」等で捻出した財源を、「過疎地等への地方財政措置の充実」などに振り向ける方向を示していましたが、提言では、「普通交付税措置への病床利用率の反映」については、「平成23年度以降の普通交付税算定にむけて検討を進める」としつつも、「その内容・程度、具体的な実施時期、移行措置等について慎重に検討し結論を得る」としています。これは同じパイの中での配分というガイドライン路線への厳しい批判の反映といえますが、「病床利用率の交付税措置への反映」はなくなったわけではなく、国の自治体病院に対する財政措置の総枠の抜本的な拡大が不可欠です。この間、自治体病院関係者からは、医師確保対策にかかわる抜本的な財政支援措置、政府が大幅に削減してきた自治体病院運営への交付税措置の復元や、長年据え置いてきた診療所への普通交付税措置の引き上げ、精神科医療への財政措置の拡充、不良債務解消等への緊急支援措置など、多くの要望が出されています。国会でも与野党を問わず、公立病院に対する財政措置を求める声が高まり、麻生首相は「公立病院に対します地方財政措置の充実を今後考えることが大事な点だと理解しております」と答え、鳩山総務大臣も「地方交付税を増加する方向で努力する」と答えており、12月8日には麻生首相を本部長とする「地域医療改革に関する推進本部」を設置することも厚生労働大臣が明らかにしており、一層の運動の強化が求められています。
一方、大阪府松原市民病院の09年3月休止提案はこの提言が出された直後のことでもあり、提言の速やかなる具体化と、社会保障費2,200億円削減路線の転換、地方交付税の抜本的増額など地方財政計画の大幅な改善など、政治のメッセージが緊急に求められています。
自治労連は、公立病院関係者からの要望を含めて、政府が、来年度地方財政対策等において、自治体病院への財政措置の総枠を抜本的に拡充し、直ちに具体的措置を実施するよう強く求めるものです。また運動の結果作り出した重要な変化を職場や自治体当局、病院関係者に伝え、協力して、政府に向けた運動を強めるとともに、医師・看護師をはじめ医療従事者の労働条件の改善と人員増など、職場の中から公立病院を崩壊させない手だてをすすめ、地域医療と自治体病院を守るため、引き続き、地域住民とともに、「いのちと地域を守る大運動」を強化するものです
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