学力調査の結果公表 混乱に拍車
秋田県知事が市町村別の結果を発表したことで学力調査をめぐる混乱に拍車がかかっている。
各紙の主張・社説を見ても、「学力」「教育」をめぐっての社会的合意が形勢されてないことがよくわかる。
社説:学テ結果公開 順位を独り歩きさせるな 毎日12/26学力調査―勇気ある撤退を求める 朝日12/27
テスト結果公表 学力向上に正面から取り組め(12月22日付・読売社説)
学力テスト 結果隠さず上位を見習え 産経12/27学力テスト もうやめてはどうか 中日12/20
国際学力調査であきらかになっている学力の二極分化、低学力層の増加、そして低学力と貧困の関係、自由記述式問題の無答の多さ、「好き、役に立つ」とかの学ぶことへの動機付けの低さ ~ こうした課題にどうとりくんでいっているのか全然見えない。
そうした問題意識をこれまでも書いてきたが・・・
的はずれな学力テスト 大阪大総長
国際学力調査 「楽しい、好きを増やそう」と各紙社説
学力対策と就学援助 子どもの貧困
経済格差が学力に「影響」約9割 小中教員アンケート
全国学力調査は無用だと思っているが、少なくとも立ち止まって「身につけるべき学力とは何か」とか、貧困な教育予算の問題など徹底して議論を行うべきではないか。
課題分析には、二度の調査でデータはあるはすだ。
混乱に終止符をうつべきではないか。
順位の発表については・・情報公開をめぐる裁判から予想できたこと。「情報公開が当然」というなら、個人が特定されなければよいということでクラス毎の結果発表までいきつかないとおかしい。
秋田では来年度の参加をみあわせることを検討する市町村が半数にのぼるようだ。
ところで産経が「上位見習え」と主張でかいてあるが、少し前に、
【学力テスト1位「秋田に学べ」は大丈夫? 大学進学率は低迷 産経10/27】
と報道していたのだが・・
社説:学テ結果公開 順位を独り歩きさせるな 毎日12/26
全国学力テストの結果公開問題で新たな動きが出た。秋田県の寺田典城知事は、07、08年の市町村別の平均正答率など結果公表に踏み切った。全自治体名を明記した公表は全国初で、「県内地域別ランキング」ができた格好だ。1校の自治体では事実上学校個別の結果が出たことにもなる。
市町村教育委員会は反発しているが、これは全国各地の動きにも影響し、文部科学省は従来の一方的通知ではすまない対応が必要にもなろう。改めてテストの意義を明確にすべきだ。
巨額の税金を投じて行われる公の事業の結果について、情報公開がされるのは当然の原理原則だ。ただ、序列化を排し、学力向上につなぐ学力テスト本来の趣旨に照らせば、慎重な配慮と共通認識が欠かせない。
現行テストは「学力低下」対策で昨年始まった。文科省は都道府県別結果は公表するものの、県教委などに対し、市町村別、学校別結果は開示しないよう実施要領でクギを刺した。
過熱して混乱した60年代の旧学力テストの再現を避けるためだが、「教委の責任回避になる」などと各地で反発の声が上がり、橋下徹大阪府知事らは文科省を厳しく批判。鳥取県では来年度から市町村別、学校別に開示する条例改正が成立し、埼玉県情報公開審査会も開示を答申した。公表は流れになりつつある。
今回の秋田県の措置で知事は「公教育はプライバシーを除いて公表が基本だ。有益な情報が県民に提供されないままになっている」と言う。同県では情報公開請求に対し市町村教委は反対し、県教委が市町村名を塗りつぶした結果を開示した経緯がある。教委に任せないで知事が判断するという構図も、今回の各地と文科省の「対立」に見える特徴といえる。
だが、一般に「順位」への関心の高さの割に、このテストがどのようなものか十分に理解されているとはいい難い。対象は小学6年、中学3年のほぼ全員で、毎年、国語と算数(数学)を基礎と活用に分け基本知識や記述する力を見る。一部の学年であり、国・数以外の分野の学力や適性を見ているわけでもない。
子供たちには採点結果が渡されているが、保護者や地域住民がさらに相対的に正答率の高低や傾向を知りたいと考えるのは、自然なことともいえよう。秋田の判断の支えもそこにある。
しかし、その前提として、これがどんなテストで、部分的ながらもどのような力を探り、その不足をどのように指導し、学力や適性を伸ばしていくか--を学校や教委も周知に努め、校区や地域にある程度共通の理解を広めておかなければならない。
でなければ、数字や順位がかつてのように独り歩きし、現場に再び混乱や萎縮(いしゅく)、偏見を生む恐れを懸念せざるを得ない。
学力調査―勇気ある撤退を求める 朝日12/27 秋田県の寺田知事が、文部科学省の意向に反して全市町村別の平均正答率を公表した。 全国学力調査の結果公開をめぐる混乱がいっそう広がっている。 都道府県が市町村別の結果を一覧できる形で公開するのは、序列化や過度の競争を招く恐れがあるので控える。公表するかどうかは市町村が判断し、公表する際は結果だけではなく対策も合わせて明らかにする。これが文科省が決めたルールである。 これに対し、寺田知事は「公教育はプライバシーを除いて公開が基本」「有益な情報がごく一部の教育関係者に独占されている」などとして公開に踏み切った。 寺田知事は、以前から記者会見などで公表の意向を明らかにしていた。とはいえ、突然の発表は各市町村の教育委員会どころか県の教育委員長らにも寝耳に水だったようだ。 しかも、大阪府の橋下知事の場合とは違い、どの市町村も自らは公表しない意向だったにもかかわらず頭越しに強行した。 このやり方は乱暴にすぎる。朝日新聞の調査に秋田県内の市町村の約半数が、来年度からの参加について見合わせを含め検討する意向を示したのも当然だろう。 ただ、知事が公表に踏み切った理由そのものについては、同意できないわけではない。情報公開の観点からみても当然だ。追随する自治体が出てくるかも知れない。 何よりあきれるのは、この流れに右往左往している文科省の姿である。 文科省は、全国学力調査を40年ぶりに復活するにあたって、かつての教訓から過度の競争や序列化を再燃させないように配慮したという。都道府県による市町村別結果の公表をひかえさせたことも、そのためだった。 確かに知事が発表するという秋田の例は想定外だったかもしれない。しかし、情報公開請求があれば公開せざるを得ない事態に陥ることは十分に予想されたことだ。文科省が県別の成績は自ら公表しておきながら、都道府県には市町村別の公開を禁じるというのは何とも筋が通らない。 そもそも制度設計に無理があったのだ。今頃になって文科相に「悩ましい」と嘆かれても困る。 ここで考えるべきは、こんな混乱を招きながら調査を続ける必要があるのか、ということだ。 文科省は、学力の状況を全国的に把握し、指導に生かすためとして調査を始めた。全員参加としたため、毎年50億円以上にのぼる予算と膨大な手間がかかる。しかし、そこで得られる結果は抽出調査でも十分可能だ。 この費用があれば、どれだけ教員や学校施設の充実に回せるだろうか。
テスト結果公表 学力向上に正面から取り組め(12月22日付・読売社説) 全国学力テストの結果公表については、来年以降も過去2年間と同じ方針で臨むべきだ――。そう結論づけた文部科学省の専門家会議の見解には疑問をぬぐえない。 大阪府と秋田県は今年、情報公開請求に市町村別の結果を部分公開し、鳥取県南部町は学校別の結果を開示した。こうした事態を受け、文科省が専門家会議に公表方法の再検討を求めていた。 この結論に沿う形で、文科省は近く実施要領をまとめる。 テストは昨年、43年ぶりに復活し、全国の小学6年生と中学3年生を対象に、算数・数学と国語で実施されている。 これまでの実施要領では、結果については、市町村教育委員会は自らの市町村分を、学校は自校分を公表できるが、都道府県教委は市町村・学校別を、市町村教委は学校別を公表できない。 過度の競争や市町村・学校の序列化を防ぐため、という。 これに対し、独自公表が相次ぐ背景には教育現場に競争意識と緊張感を持たせ、学力向上に取り組ませようとする狙いがある。 それだけ教育の現状に危機感があるのだろう。指導力不足の教員などに対する不信感もあろう。教育現場と家庭、地域が信頼関係を築く必要がある。それには、テスト結果の共有が不可欠だ。 ところが、専門家会議は、都道府県教委が情報公開請求を受けても開示せずに済むよう、文科省から市町村・学校別結果を受け取らないこともできることとした。知事部局などに情報を提供する場合も、実施要領の徹底を求めた。 児童生徒数の少ない小規模校や市町村内に小中学校が1、2校しかない市町村には、配慮が必要だろう。だが、近隣市町村とも比較できなくては、全国テストの意義が薄れる。児童生徒の向上心も生まれにくいのではないか。 鳥取県は、小規模校を除き、過度の競争などに配慮する義務を課した上で学校別結果も開示できるよう情報公開条例を改正した。 だが、情報公開請求と学力テストは本来、なじまない問題だ。 平均正答率などは学力の現状を映し出す貴重なデータだ。都道府県教委が責任を持って対策とともに公表してこそ、意味を持つ。 結果の芳しくない市町村や学校の原因を分析し、保護者や地域住民に理解と協力を求める。同時に、予算や教員の手当てなど教育施策の改善につなげていく。 そうした学力向上に正面から取り組む姿勢が欠かせまい。
学力テスト 結果隠さず上位を見習え 産経12/27 秋田県の寺田典城知事が、全国学力テストの市町村別の結果を公表した。市町村教育委員会は反発しているが、本来、教委や学校は自らの成績を積極的に公表するのが筋であり、知事の判断は当然である。 秋田県は10月に情報公開請求に伴い、市町村別成績について市町村名を塗りつぶした形で開示した。知事は市町村名を含め成績を積極的に公表するよう促していたが、各教委は反対し知事の判断で公表に踏み切った。 都道府県別で成績トップクラスの秋田は、ほとんどの市町村が全国平均を上回っている。 山間部の町村の成績も良い。理数教科の少人数学習などが効果をあげているようだ。授業が上手なベテラン教師の配置を工夫し、各地で若手教師の指導にも努めているという。 こうした成績上位の取り組みを学べるのは、全国規模の学力テストの大きな効用だ。 隣の自治体、学校と比べ成績が悪ければ授業を見直さねばならない。親も結果を知り学校との連携が欠かせない。「公教育はプライバシーを除いて公開が基本」などとした寺田知事の見解に賛成する人は多いだろう。結果を隠しては反省も改善策も生まれない。 学力テストでは、大阪府の橋下徹知事が一部反対する自治体を除いて市町村別成績を開示した。大阪の成績が2年連続で低迷したことに危機感を持ち、学力向上策を打ち出している。 鳥取県では市町村、学校別結果開示に向け情報公開条例改正案が可決された。埼玉県では情報公開審査会が開示すべきだとの答申を出した。両県知事は積極的な成績公表の必要性を訴えている。 昭和30年代の学力テストは競争や序列化を招くなどとして日教組が反対闘争を展開し中止となった。教育界は運動会の徒競走順位をつけないような横並び、悪平等の体質が根強く残る。 秋田県横手市の教育長は「勝った負けたの話になり、子供への影響が心配」などと反対しているというが、教育で競い合うことは悪いことではない。競争から目をそらしては改善など望めない。 成績公表の流れに対し、文部科学省は30年代の反省などをいまも理由にあげ、市町村、学校別の結果公表を禁じる通知を改めて出した。時代遅れの教育観を改め、原則公表とすべきだ。
学力テスト もうやめてはどうか 中日12/20 全国学力テストは子供の学力向上に役立っているのか疑わしい。詳細な成績を公表すれば自治体や学校を序列化する懸念も消えない。文部科学省は来年度も続けるというが、もうやめてはどうか。 小学六年と中学三年を対象にした全国一斉学力テストは来年度で復活してから三回目となる。文科省は成績の扱いについて、市町村別や学校別での公表を禁じた現行の実施要領を維持するという。 これには橋下徹大阪府知事が怒っている。橋下知事は十月、市町村別データの一部を実名で公表した。住民の目に触れさせて自治体を奮起させ、学力向上につなげたいとの狙いからだ。 学力テストは全国規模で学力状況を調べ、学校現場や教育委員会の課題を明らかにすることが目的という。しかし、肝心の子供の学力向上に役立っているのか。 昨年と今年で得られた傾向に大きな変化はなかった。データが膨大で分析に時間がかかり、テストを受けた子供に利用しにくいという問題も浮上した。昨年は「授業の中で活用した」学校は小中学校とも半数に至らなかった。 テストを学力向上に結びつけるとしたら、結果を詳細に分析して対策を講じ、そしてあらためて検証していくのが手順だろう。 公立小中学校の設置者は市町村だが、都道府県教委が予算と人事権を握っており、市町村のできることは限られる。都道府県は結果を分析し、成績不振だった市町村に対策をとったのだろうか。 具体的には財政的支援だろう。少人数教育や習熟度別指導を行うには人員がいる。それなのに、市町村別で公表すれば、序列だけが独り歩きする。都道府県別の平均点でさえ“ランキング”化し、都道府県を一喜一憂させている。 かつての全国テストが中止になった要因に、先生が誤答を指さして子供に気づかせ、成績を上げようとした行為があった。東京都足立区の独自テストでも同じような不正が発覚した。そんな愚行が繰り返されるおそれがある。 子供それぞれの学力を測るだけなら、学校ごとに行う試験や自治体独自のテストで十分だ。 日本全体の傾向を把握したいのなら、学習到達度調査(PISA)や国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)といった国際調査の活用で足りるだろう。 教育は自治体が主体となって行うものだ。「全国一斉」にとらわれず、市町村は地域の実情を踏まえて子供と向き合ってほしい。
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