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雇用の安定が景気回復のカギ 産経「主張」

 トヨタの奥田碩・前会長は、「経営者よ、首切りするなら切腹せよ」(「文芸春秋」1999年10月号)と語り、その中で、雇用や老後に対する不安感が消費を冷え込ませる「不安の経済」に陥っていると発言していた。
いまこそ、その立場にもどるべきだ。各紙も主張を書いているが、「労働者は景気回復のカギを握る消費者でもあるという視点だ」と、経済対策としての雇用安定を主張する「産経」が今回は一番説得力がある。

【主張】内定取り消し 安易な雇用調整は逆効果 産経12/1派遣切り 労働者を使い捨てにするな 毎日11/29内定取り消し―若者の未来を裏切るな 朝日11/29
社説:内定取り消し 若者の夢を台無しにするな 毎日 12/1内定取り消し 悪質なら企業名公表を 中日新聞11/27

【内定取り消し 安易な雇用調整は逆効果 産経12/1】  景気悪化による企業のリストラで、来春卒業予定学生の採用内定取り消しが相次いでいる。懸命な就職活動の末に内定した企業から、突然、取り消しの通知が来た学生らの戸惑い、怒りは相当なものだろう。  雇用環境がいかに厳しいからといって、企業の都合で安易に学生の夢を奪うことは許されまい。  厚生労働省の緊急調査によると、内定取り消しは全国で331人に上る。内定取り消しを行った企業は計87社で、内訳は大学生が302人、高校生が29人だった。内定取り消しの理由は、倒産などの経営破綻(はたん)が116人、経営悪化が212人などである。  問題となるのは、経営悪化が内定取り消しの理由にされている点である。最高裁の判例によれば採用内定は、たとえ文書を取り交わさなくても労働契約が成立したと見なされ、契約解除には合理的な理由が必要とされる。  倒産なら取り消しもやむを得ないが、経営悪化は合理的な理由に該当するだろうか。舛添要一厚生労働相も労働基準法に違反する可能性が高いとの判断だ。  米国発金融危機の影響で景気が急減速し、企業の収益が減っている。それに伴って、企業はパートや派遣労働者を中心に従業員のリストラを強めているため、雇用情勢が急激に悪化している。  同じ厚労省の緊急調査だと、今年10月から来年3月までの期間に失業したり、今後失業すると見込まれる派遣などの非正規労働者は全国で3万人を上回る。  景気の悪化は、家計の足しにパート勤めをしようとする新たな主婦らの行動を促進する。しかし、求人が少ないため、求職者1人に対する求人数を示す10月の有効求人倍率は9カ月連続の悪化となった。一方、10月の完全失業率は前月比0・3ポイント改善して3・7%になった。求職をあきらめた人が増加した結果ともいえる。  それぞれの企業の雇用カットが収益改善の合理的な選択だとしても、社会全体で見れば購買力の低下を招き、内需を減らすという悪循環に陥りかねない。  忘れてならないのは労働者は景気回復のカギを握る消費者でもあるという視点だ。政府は緊急雇用対策本部を設置し、失業者らの早期再就職支援を始めた。企業も安易な雇用調整は結局、自らの首を絞めると思いを致すべきだ。そうなっては元も子もなかろう。
【社説:派遣切り 労働者を使い捨てにするな 毎日11/29】  「君は明日で終わりだから」。自動車部品メーカーの工場で派遣で働いていた埼玉県の男性(38)は派遣元の営業担当者から突然そう言われた。契約はまだ1カ月残り、その後も更新されると思っていた。休まず残業もこなしてきた。「減産」を理由にメーカーとの派遣契約が中途解約されたことを、派遣元が男性に伝えていなかった。  派遣元との交渉で残り1カ月分の金銭補償は得られそうだが、新たな働き先はまだ見つからない。男性は「派遣はいつ切っても平気な道具としか思われていない。年末年始をどうしのげばいいのか」と憤る。  米国発の金融危機のあおりを受け、こんな光景が製造業の現場で広がっている。自動車、電機を中心に工場などで働く派遣労働者や有期雇用の期間工との契約打ち切りが一斉に進む。その数は報道されている大手企業だけでも計1万7000人以上。年末に向けてさらに増えるのは確実だ。非正規社員の「大量首切り」で景気悪化に備えようとする企業の姿が浮かぶ。  突然切られる労働者はたまらない。派遣や期間工の多くは3カ月や6カ月の短期契約を更新しながら働いているが、更新なしの雇い止めだけでなく、一方的な中途解約も少なくない。工場近くの寮も同時に出なければならず、仕事と住居を一遍に失ってしまうケースが多い。インターネットカフェで寝泊まりしたり、そのまま路上生活に移行したりする人も出始めている。  まさしく使い捨てだ。非正規を正社員よりも安い賃金で働かせ、巨額の収益を上げてきた製造大手が先行きに不安を抱くや、千人単位でばっさり切ることが許されるのだろうか。増益を見込んだり、多額の内部留保があったりする企業も少なくないのに、である。  企業が正社員を経営上の理由で解雇するには、努力しても他に方法がないなど厳格な要件が必要だが、この考え方は非正規にも通じるはずだ。企業には再考を求めたい。派遣元も含め、再就職先のあっせんなどにも手を尽くすべきだ。雇用の不安定は消費低迷を招き、景気悪化に拍車をかけ、社会不安も引き起こす。企業には重い社会的責任があることを自覚してほしい。  政府も手をこまねいている場合ではない。全国の実態を早急に調べ、問題あるケースがないか監視を強めるべきだ。就職先紹介や住宅あっせん、失業給付金支給などにも万全を尽くしてもらいたい。  派遣では、相次ぐ規制緩和で派遣先の対象が広がり04年から製造業へも解禁されたことが今日の事態を招いたといえる。派遣は雇用の調整弁に使われるとの懸念がまさに現実になった。政府が今国会に提出した労働者派遣法改正案は、今起きている「派遣切り」問題には無力のままだ。派遣先を専門業務に限るなどの抜本改正がぜひとも必要だ。
【内定取り消し―若者の未来を裏切るな 朝日11/29】  「来春から働いてもらうから」  そういう学生たちとの約束を、企業がこれほどあっさりと、ほごにしてもいいものか。  卒業まで数カ月となったこの時期に、少なくとも331人の大学生や高校生らが、いったん決まった採用の内定を一方的に取り消されていた。景気の悪化は深刻で、内定取り消しはまだまだ増えそうな気配である。  いい学生を採りたいと企業が走り回っていた昨年までの売り手市場は、もはや見る影もない。このままいくと「就職氷河期」と呼ばれた10年ほど前の水準に戻りかねない状況だ。  採用を取り消すかわりに金を渡された。そんな話も聞こえてくる。内定式を終えたばかりなのに、「入社しても希望の部署にはいけない。就職活動を再開した方がいい」と、内定の辞退を迫られた学生もいる。社会人として歩み始める直前に、世の中から裏切られたようなものだ。  来春に向けた採用活動を、すでに終えた会社が多い。今さら「内定はなかったことに」と言われても、これから就職先を探すのは容易ではない。  まして日本は、卒業時の就職先によって、その後の職業人としての生涯が大きく左右されがちな社会なのだ。  会社の倒産で、やむなく内定が取り消された例もある。だが十分な説明もないまま、紙切れ一枚で通告された人もいるようだ。そういう企業は、ぎりぎりまで努力をしたのだろうか。  内定の一方的な取り消しは労働契約の解除にあたり、合理的な理由がなければ違法とされる可能性が高いのだ。  今はなにより、就職先をなくした学生たちを、できる限り支えなくてはならない。  内定を取り消された学生は黙って泣き寝入りをするのではなく、まず学校などに相談しよう。相談を受けた大学や高校、ハローワークは、内定の取り消しが妥当かどうか、しっかり見極めるべきだ。もし疑念があれば企業に問いただし、必要ならば厳しい申し入れや指導をしなければならない。  立場の弱い学生と企業の間に立って、取り消しをめぐる交渉や話し合いも進めてほしい。そのうえで互いに情報を交換しながら、学生たちの新たな就職先を探してもらいたい。  将来ある若者の人生を振り回す愚行は避けねばならない。それは学生たちのためだけではない。  不況に見舞われた90年代、企業は新卒者の採用を絞った。その結果、正社員になれないたくさんの若者が生まれ、その後も安定した仕事になかなかつけない世代ができた。  そんな事態を再び招かないよう、企業には責任ある態度を求めたい。世の中にこれ以上、不満や失望の種をまいてはいけない。
【内定取り消し 若者の夢を台無しにするな 毎日 12/1】  大学4年の男子学生(23)が採用内定の取り消しを電話で通告されたのは2週間前だ。「君たちを受け入れる財力がなくなった」。内定をもらった他の6社を断って選んだ会社だった。10月の内定式で社長は「不況だが、うちは大丈夫」と言っていたのに裏切られた思いが募る。再び就職活動を始めたが、「だめなら留年も」と心は焦る。  マンション分譲の日本綜合地所はこの学生も含め、いったん採用を決めた大学生53人全員の内定を取り消した。経済情勢の悪化を受け、業績予想を大幅に下方修正したばかり。「やむを得ない措置」と強調する。  来春卒業予定の大学生や高校生らの内定取り消しが急増している。厚生労働省の緊急調査では、その数は11月25日現在、87社で計331人。年度途中にもかかわらず、金融破綻(はたん)が相次いだ97年度の1077人、就職氷河期が続いていた01年度の380人に次ぐ多さだ。今春の大学卒業者の就職率が96.9%と最高水準の「売り手市場」だったのに、米国発の金融危機が風景を一変させてしまった。  内定通知を受けた学生は通常、他社への就職活動をやめ、その会社に入る準備をしながら社会人となる日を心待ちにする。人生の門出を目前に、希望を突然断ち切られる衝撃と心痛は計り知れない。企業のご都合主義で若者の夢を踏みにじることは許されない。  採用内定は企業と学生との労働契約に当たり、取り消しは合理的理由があると認められる場合に限られるとの最高裁判例がある。地裁レベルでは、企業が経営上の理由で内定を取り消すには、正社員の整理解雇と同様▽どうしても人員削減が必要▽努力しても他に方法がない--などの厳格な要件が必要だとの判断も示されている。要は、よほどのケースでない限り、取り消しは認められないことを企業は肝に銘じるべきだ。  経営破綻ならともかく、経営悪化を理由にした内定取り消しが331人中212人に上る。安易な取り消しはないか、厚労省は速やかに実態を調査し、適切な指導を行う必要がある。学生も泣き寝入りせずに、学校やハローワーク、労働組合などに相談し、企業に十分な補償などを求めてしかるべきだ。同時に企業はその学生の新たな就職先探しに最大限の努力を払う責務がある。ハローワークなどの支援も欠かせない。  来春までに契約が打ち切られる派遣や期間工ら非正規労働者は厚労省の調査で3万人を超える。10月の有効求人倍率は0.80倍と4年前の低い水準に落ち込んだ。雇用情勢は悪化の道をたどる。  90年代~00年代前半の就職氷河期は多くの年長フリーターらを生み出し、今なお正社員になれずに苦しむ人も多い。就職氷河期の再来を招かぬよう、政府は直ちに抜本的な雇用対策を打ち出さなければならない。
【内定取り消し 悪質なら企業名公表を 中日新聞11/27】  来春卒業予定の大学生や高校生の採用内定を取り消す企業が相次いでいる。人生の門出を傷つけるだけでなく、正当な理由なしには許されない行為だ。悪質な場合は企業名を公表すべきである。  今年前半まで売り手市場だった学生たちは最近の就職情勢の急変に困惑していることだろう。金融危機をきっかけに企業の二〇〇九年度以降の採用計画は一変した。なかには内定を取り消すところも出てきた。  厚生労働省が各地のハローワーク(公共職業安定所)を通じて調べたところ、すでに内定取り消しの報告が四社六十三人もあった。全国調査を踏まえて学生への相談体制と、企業に対する指導を強化する方針だ。また連合も学生たちの相談窓口を来月、開設する。  取り消しの理由は倒産や業績不振などさまざまという。社員の雇用も維持できない倒産の場合はやむを得ないケースとなろうが、景気後退に伴う業績悪化というだけでは正当な理由とは言えまい。  法的には内定取り消しは労働基準法に基づく労働契約の解約、つまり一種の解雇と見なされる。合理的な理由がなければ解約権の乱用とされ無効である。一九七九年七月、大日本印刷事件で最高裁が示した判例が有名だ。  同社は内定後に誓約書を提出した学生に対して「陰気」な印象を理由に内定を取り消した。最高裁は本人の印象は面接試験でわかっていたとし、取り消しをする合理的理由にはならないと指摘した。採用の内定は、労働契約が成立したことと同じ重みがある。  来春卒業予定の大学生は約六十六万四千人。高校生は百十万人に達する。就職は人生の重要な節目であり、採用内定はその第一歩と言える。フリーター百八十一万人や再出発を目指す転職者にとっても内定通知はうれしいものだ。  今春卒業の就職率は大学生が96・9%、高校生が98・4%といずれも最高水準だった。来春以降は“氷河期”再来となろうが困難にくじけず頑張ってもらいたい。  現在、雇用情勢は急速に悪化している。自動車や電機業界などで期間工や派遣社員、パート労働者の解雇が続いている。失業率の上昇と有効求人倍率の低下は避けられない。  政府は追加経済対策で年長フリーター対策や雇用保険料引き下げなどを取り上げたが本年度第二次補正予算案の提出は来年一月だ。政治空白を解消して一日も早く雇用対策に取り組んでもらいたい。

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