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「子どもの貧困~日本の不公平を考える」 阿部彩 備忘録

 以前、紹介した国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩さんの「子どもの貧困 日本の不公平を考える」の備忘録。
 教育の無償化だけでは貧困の不利は克服できないことの解明。誕生会、高校進学、学校行事への参加など「子どもに必要な最低限の生活は何か」からとらえる「相対的剥奪」論の展開、保育制度の「見直し」が言われている中で「最初の貧困防波堤」である保育の福祉的役割の強調、「少子化対策から子ども対策へ」など、雇用、社会保障、教育を考える上で、常に「子どもの貧困」の視点を持ち、「貧相な貧困観の改善」を意識する大事さを確認できる書である。
  
  「備忘録」「kodomomo_hinkon_abeaya.doc」をダウンロード

【子どもの貧困 日本の不公平を考える 阿部彩著】 備忘録
1章 貧困世帯に育つということ
◆なぜ貧困であることが問題か
◇貧困と学力
・PISA調査 ~ 日本の順位の低落
・父母の学歴と子どもの学力との関係 「その差は歴然としている」
   03年と06年で、格差は拡大傾向。特に母親の学歴が「初等・前期中等」で低下
・親の職業別と学力格差(より経済状態が反映)
国際標準職業分類の4段階区分。格差は歴然。特に「中の上、下」は差が少ないが、上は突出、下の階層の格差が大きい。上が私学のエリート校としても、公立で格差がある

◇貧困と子育て環境
 休日に子どもと遊ぶ、子どもの相談相手が家にいる ~ 年収で差(松本伊知朗・調査)
→ 低所得者に子育ての困難を持つ確率が高い

◇貧困と健康
・子どもの無保険の存在 /国保料滞納19%  資格証明書35万世帯
・カナダの研究。明らかに格差があり、特に10歳頃から拡大。低所得層の子どもの健康が10歳を過ぎると急速に悪化。
 (カナダは、すべての子どもの無料の医療制度があるにもかかわらず・・・栄養、住居、家庭環境が影響)

◇貧困と虐待
・02年子ども家庭総合研究所調査 保護したケース 生活保護19.4%、非課税世帯26%。低所得者層の偏在
                        ひとり親36.3%。ネグレクトの傾向が多い
   → 家計の担い手であることと育児の両立が困難であることが予想される。
・全国児童相談所研究会 「相談の背景に・・・養護問題、広い意味での貧困問題」がある。「児童虐待対策そのものの充実とあわせ、貧困対策・労働対策など広く国民生活全般を支援する」必要がある。/03年

◇貧困と疎外感
・PISA調査 03年、学校生活をどう感じているか。
  気後れして居心地が悪い・・・どの階層でも他国とくらべ圧倒的に高いが、その中でも格差がある。

◆貧困の連鎖
◆貧困世代で育つということ
◇貧困と成長を繋ぐ「経路」
・教育費だけなら、無償制度で解決できるが(欧州での貧困の実例)、家庭環境の影響であれば総合的な対策が必要
   → この「経路」(パス)の決定的なしくみは解明できてないが、いくつかの事実がわかっている
①経路は複合的 「投資」価値観が引きつがれるとする「モデル論」、経済的な困難からくる家庭環境の悪化など親の「ストレス論」、親からの文化の継承に着目する「文化的再生産論」、地域の文化、環境という媒体、「遺伝論」
→ 遺伝論、文化論、モデル論も、まちがえれば貧困者への偏見につながる危険性
  現在の貧困研究は「貧困者ががんばってもしかたがない」と思わせた社会の仕組みの問題と捉えている。
②やはり所得は「鍵」
  親の収入が、多かれ少なかれ、子どもの成長に影響する  アメリカでの社会実験(現金給付の差異) 

◆政策課題としての子どもの貧困
◇求めるのは格差を縮小しようとする姿勢
 完全な「機会の平等」は不可能(親の状況など)、資質の差もあるが、問題は
①医療、基本的衣食住、義務教育そして高校教育へのアクセスをすべての子どもが享受する
   → 「機会の平等」という比較の問題でなく、「子どもの権利」の理念にもとづくもの。
②「完全な平等」は不可能でも、少しでもなくそうとする社会の姿勢の必要性
   → 日本社会は、子どもの貧困に無頓着。「一億総中流化」という幻想
②´どこまで財政投入するか ~ 子どもの貧困への対処は、社会全体の便益となる
  ・「機会の平等」が達成されないことは社会的損失  1等になるべき人が2等になる、レベルの低下
  ・何割かの子どもが希望を失う ~ 社会全体の活力の低下 

2章子どもの貧困を測る
◆子どもの貧困の定義
・日本には基準がない。公式な統計による貧困は計算されてない(貧困への無頓着のあらわれ)
・イメージは多様。アフリカの難民は貧困と捉えても、フリーターはどうか、ホームレスは、年収200万円以下は・・・

◇「相対的貧困」という概念 OECDの貧困基準、生活保護の基準とは・・・
  「人々がある社会の中で生活するため、通常のレベルから一定距離以内の生活レベルが必要」という考え方
     → 絶対的貧困/社会レベルに関わりなく生活に必要なレベル 
・2つの概念はそれほど離れてない!
  ある社会での「絶対的貧困」は、社会の生活レベルが反映する。靴が買えない~日本とアフリカでは?

◇相対的貧困の定義
・OECD 手取り・世帯・所得を世帯人数で調整し、ちょう中央値の50%以下のライン(EUは60%)
  年収200万円以下でも、夫の収入を補完する主婦のパート、子どもの小遣い稼ぎもあるから世帯で判断
・ある人が「貧困」がどうかの客観的に完璧に判断できるものではないが、測定方法があることで、社会の状況を知り、政策課題とできる。重要なのは測定しようとする姿勢

◇貧困率と格差
・相対的貧困率線は、おどろくほど生活保護基準に近い数字。
   生活保護基準… 一般世帯の中のほぼ中央に位置する世帯の消費水準の約60%で設定
             相対的貧困基準    生活保護基準    2006年
  一人世帯・68歳    127万円     84~111万円
  母子(32歳、5歳)  180万円    140~181万円
  父母、子(10歳、8歳)254万円    204~265万円
・格差と貧困は違う ~ 格差が拡大しても、貧困が減る場合と、貧困が増加するのかでは、違う。
   また、子どもの貧困率も2%のフィンランドから24.5%の米国まである。政策による違いである。

◆日本の子どもの貧困率は高いのか
◇社会全体からみた貧困率          
・国民生活基礎調査をもとに試算(90-04年)
高齢層20-21%、中年層11―13%、20歳未満12..9―15.2% 最新の04年で14.7% 急増している!

◇子どもの年齢とともに貧困率が上昇
・社会全体から見た、子どもの貧困率は、01-04は低下し、0―2歳だけが2.5ポイント増(約18%)だが…
育児費用は、年齢とともに上昇するので・・・ 同年齢の子どもの世帯の比較が重要となる。
・年齢層の子どもの貧困線(その年齢層の子どもの世帯所得の中央値の50%)で算定(国民生活基礎調査より試算) 
明らかに年齢とともに上昇。12―14歳、15―17歳の貧困率が一番高い 約15%
 → 親の年齢もあがり、所得格差が広がるから、相対的貧困が増える。
   子どもの観点からは、同級生との間に「格差」があることが、思春期であり、深刻な問題。  
・0―2歳は、10→12%と急増。つまり社会全体から見ても、同年齢と比較しても増加

◇若い親の増加が子どもの貧困率を高めている、は正しいか?
・親の年齢は、高齢化(晩産化)している。 80-06年
母親 10代0.9→1.5%  20代後半 51.4%→30.7%。30歳以上 28.8%→ 55.8%
父親 24歳以下6.9→8.4% 25-29歳36.09→24.7% 30-34歳42.9→36.9% 35-39 11.8→21.2%
・子どもの貧困と父親の年齢との関係 U字型 20代前半で一番高く、40-54歳で最低、55歳を越えると増加
98-04年比較では、若い父親、年配の父親の子どもの貧困率が上昇  20-24歳 35.8%→48%へ
    子ともの持つ父親の二極化~ 若い父親の微増。非正規雇用の増加とともに貧困率が増加
  → 問題なのは! 以前は、年齢とともに給与があがる構造があったが、今はない! 

◇親の就業状況 
・1年未満の契約、自営 29%、30人未満の中小企業・常雇19%、大企業・常雇6%  
・2人就業でも減らない日本の貧困率
世界各国は、世帯での就業者が1人から2人になれば大きく貧困率が改善する
  OECD平均 13.7→4.3% と大幅に低下 日本12.3→10.6% わずか1.7%の低下
よって、各国では、女性の就労支援が脱貧困の重要な手立てとなる。日本は女性の低賃金、ジェンダー問題がある。

◆日本の子どもの貧困の状況
国際的に低いレベルと言えず、母子世帯、0―2歳児、若い父親の子どもの貧困率が非常に高い。
特に0-2歳の18%。米などの研究では、この時期の貧困は、健康、IQなどの成長への影響が一番大きく、成人後の学歴達成度にも、ほかの子ども期の貧困よりも大きく影響。

3章 だれのための政策か
◆国際的にお粗末な日本の政策の現状
・子どもの状況は、児童手当、保育所など「家族政策」だけでなく、雇用、公的医療、公的扶助など社会保障、教育政策に影響される部分が大きい。「一億総中流」のもと、子どもの貧困は政策課題にすらなってこなかった。
◇家族関連の社会的支出 最低レベル 
・GDP比 日本0.75 スウェーデン3.54、フランス3.02、イギリス2.93 
(この数字には、英米など給付をともない優遇税制措置を含んでない。)
・日本は少子化なので低いのか
14才以下の人口割合 日本13.6、イギリス18.2、フランス18.6、スウェーデン17.7/説明できるほどの差はない。

◇教育支出も最低レベル  GDPの3.4%、 北欧は5―7% アメリカでも4.5%
・OECD 初等・中等教育 最低の2.6% 高等教育は最低レベルの0.5%
・日本の特徴 教育機関への支出が82%、学生への補助は18% GDP比0.12
  しかも、そのほとんどがローン。欧米諸国の多くは保育所から大学まで基本的に無償、在学中の生活費、教科書代も奨学金、貸付で補助。

◆子ども対策のメニュー
◇「薄く広い」児童手当
 3才未満1万円、3~12才・第二子までは5千円。平均子ども数1.7人なのでほとんど5千円枠。
 義務教育の年齢の子育て費用は必要経費だけで年200万(子ども未来財団06年)のごく1部。
   → 年間6万円。貧困率に与える影響は微小。少子化対策として「ジェスチャーにすぎない」

◇縮小される児童扶養手当
・父親と生計を同一にしていない18歳未満の児童に対する給付で、母子世帯の中心的政策 
・約7割、百万世帯が受給(07年「白書」)、10年間で1.5倍化
・縮小傾向 満額受け取れる収入が205万から130万円に減額。受給後5年たつと最大5割削減
  ~5割削減は、反対運動で、現在は事実上凍結
 → 就労支援が強調されるが、すでに8-9割は就労。あとは病気なので働けない。

◇保育所
・仕事、疾病で「保育に欠ける」状態にある就学前の子どもを預かる施設。公立保育と許可により設置される民間保育
  幼稚園との比較では、市町村が利用者を選定、保育料を決定、乳児を預かる、預かる時間が長いのが特徴
・200万人の子どもが通う。母子家庭など貧困家庭にとってはなくてはならない施設
  幼稚園と認可保育所を利用している父親の所得には200万円の開き(保育所も実は二極分化している)
・三位一体改革で、保育費用が一般財源化され、自治体で民営化が進んでいるが、「安易な民営化に対する懸念の声も大きい」

◇教育に対する支援
・日本学生支援機構の奨学金       無利子または低利子、成績基準が適用される場合あり。36万人利用
・母子寡婦福祉資金貸付金、生活福祉資金貸付金  低所得、障害、失業など。 無利子 4.3万人利用
・就学援助制度 生活保護基準のおよそ1.1倍の所得制限(1.0~1.3と自治体で違う)
  全国平均で12.8%の児童が受給。子どもの相対的貧困率が14%であり、利用は歓迎すべき事実。
  むしろ生活保護の受給率が1%程度しかなく、子どもの貧困をよく補足していると言える。

◇生活保護制度
 運用が厳しく、貯蓄・財産は一月の生活費の半分、頼れる親族がいない、稼動能力もない、との判断がいる。
 ~ 稼動能力の判断から、子どもをかかえる勤労世帯には厳しいもの→ 長い間、失業率が低く、働く気されあれば、生活できるだけの収入が得られるという判断があった。だから子どもの保護率が極端に低い。
 一般1%、母子世帯でも7% → 子どもの貧困に対し、生活保護は限定的な役割しかはたしてない。

◆子どもの貧困率の逆転現象
・社会保障~ 職場の医療保険は定率、国民年金は定額、国保は定額の均等割が半分~全体としてゆるい逆進性
・税 ~ 基本は累進的。
  ⇒所得格差が拡大した今、国民全体の負担のレベルと、その負担をどう分配するかは、別々に検討が必要。

◇子どもの貧困率の逆転
税と社会保障による所得再配分で、日本は子どもの貧困率が高くなる唯一の国!
~どの国でも現役世代が。高齢層を支える仕組みは同じ。子どもの貧困層を減らす仕組みをとっている

◇負担と給付のバランス
・高齢者を除く現役世代~ 所得に応じた3つのグループ  フランス、ドイツ、イギリス、スウェーデン比較
  低位 所得シェア 6.7% 直接税・社会保険料シェア 7.9  日本だけ負担のシェアが高まる
  高位      37.5%             39.3  
… 所得シェアは3割後半と同じだが、他国は、負担は収入より7~19ポイント高い。日本は微増
   低所得者に重い負担、高所得者に軽い負担が、貧困率の「逆転」を引き起こしている。

◆「逆機能」の解消にむけて
・児童手当、保育所といった「子どもメニュー」だけでなく、税、社会保障制度の全体を問う姿勢が必要。
   → 政府の「防貧機能」は、まったく発揮できてないどころか、貧困を悪化 → 「逆機能」となってる
   ⇒ 「少子化対策」でなく「子ども対策」が必要

4章 追い詰められる母子世帯の状況
◆(実態などの節は略)

◆「母子世帯対策」でなく「子ども対策」を 
・子どもの健全な育成をその第一の目的とするべき
  母子世帯の子どもは、親と過ごす時間が少なく、他の子どもが享受している便益もがまんが強いられる状況。
  義務教育終了後の就学率が低い、その結果、低所得の労働者となり、子育てにも影響 ~ 「貧困の連鎖」
・日本の母子世帯は、就業率が高く、長時間働いても貧困から抜け出れない。恒久的なもの。
   → 就労対策中心、児童扶養手当の5年制限 はまったく実情無視
・子ども対策の中心は…
 充分な所得、教育の無料化など機会の平等、仕事と育児の両立 → 現施策は子どものケアや両立支援の観点がない。
 母子世帯という目でなく、子どもの状況を見ることで、モラルバッシングも回避できる、父子家庭にも対応できる。

5章 学歴社会と子どもの貧困
◆学歴社会のなかで
・高校進学率97.8%、大学進学率52.8%(高卒者に対し)

◆中卒・高校中退という「学歴」
24-34歳の女性 固定貧困層、一時貧困層 中卒36%、32%、高卒8.6、32.5 大卒5.3、14.5
フリーター、ニート比率が高い 中卒 フリーター 男性21.7% 女性50.2%

◆意識の格差
◇努力の格差
・刈谷剛彦「階層化日本と教育危機」 学校外の学習時間  79-97年
 父親の職別 農業以外すべての階層の子どもの時間減。学習時間は社会階層が高いほど長い。格差は拡大
 母親が学歴 大学17分減の100分台、高校39分減の60分台、中卒59分減の約30分
◇意欲の格差  苅谷 79-97
 さらに詳しいことを知りたい 上位63.1-58.4 中位58.5-47.6 下位53.9-40.6  低位で低く、格差も拡大
   「各人を取りまく成長環境やその変化によって影響を受ける」(苅谷)

◇希望格差
・「業績主義」の前提が崩れている 業績主義~能力と努力によって。
その前提は・・・公正な競争、本人の責任のない「属性」(家庭の所得、環境など)によって作用されない。
・高度成長は誰もが希望を持てた。しかし、現代は簡単にもてなくなった(希望格差社会、02、山田)

◆義務教育再考 ~ 教育の未達成には、経済的要因がある、という根本問題の直視を
  2つのハードル 低い教育予算・私費部分が大きい、奨学金がとれる成績にするためには私的投資が必要
   → 日本の教育システムは、「子どもの貧困」に対処できない。

◇給食費、保育料の滞納問題
就学援助があるのに給食費の滞納、減免制度があるのに保育料の滞納 
  保育料 滞納者が4.3%なのに、滞納額が1.7% → 低所得層が多い 
就学援助も義務教育の費用すべてには対応してない。 修学旅行、グラブから排除される義務教育とは!

◇基礎学力を買う時代(07、湯浅)
・子ども全体の学力が高い国 学力が一番低い層の学力が高い
  06年PISA 読解力 下位5%の得点 日本 上位グループと80点差。上位5% 20-30点差   

◇教育をうけさせてやれない親  
・経済的理由で高等教育を受けさせられない例(03 社会生活調査 12歳以下の子どもがある世帯)
  高校で2.5%、短大・専門専修20.5%、大学教育26.9%

◇教育の「最低ライン」 アンケート 高校 絶対与えるべき61.5%

◆「最低限保障されるべき教育」の実現のために
・中二段階で学力や努力・意欲の格差が生まれている(PISA調査)~高校以上の教育の無償化では対応できない。
・積極的に貧困緩和策を教育政策に取り入れる必要がある
   教職費、修学旅行費など学校生活にかかわる費用の無償化、または支援が不可欠

◇就学前の貧困対策 ヘッドスタート
 アメリカのヘッドスタート ~ 教育を中心といる包括的な福祉プログラム /義務教育開始時の不利の克服
   教育プログラム、医療のケア、栄養サービス、両親向けの育児教育プログラムなど
   0―5歳の貧困が、他の年齢期よりも最も影響がある(アメリカの研究)
     プログラムの参加で、IQ、学力、学歴、20歳時点の収入が高い、犯罪率が低い

◇日本型ヘッドスタートの模索 
 保育所~ ①0歳からみており、公的な介入度が高い。福祉的性格を持つ ②母子世帯など貧困率の高い世帯とともに高所得の共働きの世帯も利用し、偏見が発生しにくい、③専門家、栄養士、看護師など人的資源がそろっている。
 ~ 早くから、貧困の子どもの成長に早くから介入する格好の制度である。
 ~ 子ども達の最初の「貧困の防波堤」である / こういう角度からの政策論議は皆無!
*保育所の「日本型ヘッドスタート」的な機能を認識し、サービス業務として理解するのではなく、公的に行う福祉行政の一貫として認識しなおすべき 

第6章 子どもにとっての必需品を考える
◆すべての子どもに与えられるべきもの~ 「相対的剥奪」による生活水準の測定
・それは「貧困基準」そのもの~ 単に生物的に生存するだけでなく、社会の一員として人と交流したり、人生を楽しんだりできないことは「相対的剥奪」の状況/イギリスの貧困研究者 タウンゼント。
→ イギリスの「貧困の再発見」、相対的貧困の始まり
・相対的剥奪~ 所得や消費から推測される「水準」ではなく、直接生活の質を駈る方法。直感に訴える手法
・「合意基準アプローチ」  無作為に抽出された市民が「社会的に絶対に必要なもの」と回答してもの。
   それを所得の高低、性別、住む地域など様々なグループで検証し、大きな差がない場合だけ採用される

◇子どもの必需品に対する社会的支援の弱さ(08年 12歳の子どもの生活 阿部調査)
・絶対に与えるべき 
朝ごはん91.8%、医者に行く86.8、学校行事への参加81.1、給食75.3 手作りの夕食72.8、高校までの教育61.5、子供用の本51.2 ~ この8項目だけ
・おもちゃ、誕生日のお祝い、お古でない洋服は、経済事情で与えられなくもしかたない、与えなくてよい。
  → イギリス、オーストラリアと比べ、低い。

◇なぜ低いのか
・戦後の苦労の経験ある70代も20代も同じ傾向 ・子育て中であってもそうでなくても、同じ傾向
・数々の神話の影響(阿部) 総中流化、機会の平等神話、貧しくても幸せな家族神話
   → 子どもの貧困に対し「鈍感」なのではないか。国の対応が迫られていない理由

◆子どもの剥奪状態  剥奪~強制された欠如
 03年調査・阿部
高校までいかせてやれない2.5%、学校行事に参加できない2.5%など
 絶対必要とはされなかった誕生会、クリスマスのプレゼントは、94.7%、90.9%が享受。欠けている子どもの目から見れば大きな剥奪(この子どもの視点が大事!)
・世帯タイプ 三世代、ふたり親、母子と剥奪率は高くなっていく           
・親の年齢 30歳後半から40代後半が低く。20代、50代で高い
・所得~  閾値(いきち)の存在 
  タウンゼントの研究 ある一定の所得以下になると剥奪の度合いが急激に増加。
 低所得→ 無理な労働、健康破壊 → 失業、借金 など次から次へと不利が重なる
*日本の閾値は、世帯所得が400~500万円 /社会生活調査 03年阿部 

◇子どものいる世帯の剥奪 ~  低所得と剥奪との関連と区別 
・全体の必要なもの16項目から作った剥奪指標  
有子世帯、乳幼児、小学生、中学生、高齢者などで比較 
・高齢者世帯と子どものいる世帯の「平均剥奪指標」が同じレベル
 驚くべき結果! 通常の所得ベースの貧困率では、高齢者が圧倒的に高い。しかし剥奪指標では、そうではない。
 → 当然の結果/剥奪指数は、現在だけでなく過去の資産、人間関係含めたトータルな資源の結果
   子育て世帯~育児費用、家を建てたりの私財の整備、老後の貯蓄などで、生活水準が低くなる
・特に、乳幼児のいる世帯 突出して高い。所得での貧困率が高い層
・母子世帯の剥奪率  子どものいる世帯平均の3倍。しかし、子どもの剥奪状態は、平均と比べ、それぼとたかくない(標準偏差 世帯で1.1倍、子どもで0.5倍)
→ 親ががまんしても「子どもには惨めな思いをさせたくない」、その結果。

◆貧相な貧困観       
・子どもの貧困とはなにか ~ 社会的合意を得ることは不可欠
  所得ベースとして相対的貧困概念は、理解しずらい。相対的剥奪は「子どもに必要な最低限の生活は何か」という接近が有効~ しかし、その合意水準は低い/ 大学へ行けること42.8%、高校へ行ける61.5%
・自ら属する社会の「最低限の生活」を低く設定し、向上させないことは、「下方に向けたスパイラル」を生む
  → この貧相に貧困観の改善から始めなければならない。

第7章 「子ども対策」にむけて
◆子どもの幸福を政策課題に
・ウェル・ビーニング(07年 ユニセフ 報告書) ~ 21カ国 最下位イギリス /日本不参加  
 ①物品的充足 ②健康と安全 ③教育 ④家族と友達 ⑤行動とリスク ⑥子ども自身の生活満足度  
  → 1つの分野でよい状況の国は、他の分野でもよい状況が多い   

◇貧困撲滅を公約したイギリス ~ 示唆に富む方向
・99年 ブレア首相が2020年までに撲滅を宣言、04年に1/4、10年に1/2の削減
・児童税額控除、勤労税額控除の設置。社会保険料の減免措置
  児童税額控除~ 子ども1人に年50万円の給付(減税または、税収が少ない場合は差額を支給)
   日本 税額控除の仕組みがない。扶養控除は最大年11万円で所得が大きいほど減税される。
・99年、340万人の貧困が04年270万に

◇日本政府の認識
 99年 子どもの貧困率 OECD調査 イギリス13.6% 日本12.9%
・06年OECD「対日経済審査報告」での子どもの貧困率増加の指摘も、「信頼性が低い」と無視
  → その一方、公的な貧困基準をもたず、貧困の測定自体を拒んでいる。
・社会保障の中で非常に小さな「児童関連支出」の増減だけでは全体像はつかめない
  → 親の雇用状況、税・社会保障の負担の増減、保育所の整備や公的教育の充実度の関連性が大きい

◇「子どもと家族を応援する日本」重点政策(07年12月)
・目標は「持続的な経済発展」のための労働力人口の増加、出生率の増加。
・それはそれで大事だが、勤労世帯の格差の拡大、子どもの貧困の増加は一言も触れてない。つまり政府は政策課題と思ってない。

◆子どもの貧困ゼロ社会への11のステップ
イギリス「子どもの貧困アクションプラングループ」の提言をもとに著者の提言
①すべての政党が子どもの貧困撲滅を政策目標として掲げる
・家族関連に関する社会保障支出が少なくても、親の質の高い就労の確保、質の高い廉価な保育、教育など提供され、アクセスが保障されていれば、それ自体の「少なさ」は問題ではないが、現実は、貧困率が増加。
・党派を超えた子どもの貧困作業部会が必要。 
②すべての対策に貧困の観点を盛り込むこと ~ 「逆機能」の是正
現役世代か高齢者世代か、ではなく、そのぞれの世代で「誰が」負担をし、給付を受けるかの問題
③児童手当、児童税額控除の額の見直し
子どものある貧困世帯に、負担を上回る額の給付を。方法は別途検討するとしてます月5千円の見直しを
④大人に対する所得保障
子どもの貧困は、世帯全体の所得に左右される。またこれから子どもを持つ世帯の貧困も関係してくるから 
⑤税額控除や各種手当ての改革
 イギリスのように「給付つき税額控除」を
⑥教育への必需品への完全なアクセスがあること
 学費だけでなく、給食費、部活動費なども「教育の必需品」である~子どもの権利として認識すべき
  → そのコストをどうするかは別の問題。
⑦すべての子どもが平等に支援を受けられる
・子どもが属する世帯のタイプに関係のない「子ども対策」が必要。
 →それにより「少子化対策」「母子世帯対策」「ワーク・ライフ・バランス」「女性の労働参加」など、すべて育児にかかわるものの、その目的が同方向を向いてない政策を一本の線でまとめることができる。
⑧「より多くの就労」ではなく「よりよい就労」を
・就労者が1人もいない子どもの世帯 日本2㌫(02年 阿部推計)、英17%、仏10%、独11%
・日本の子どもの貧困は、欧米の「失業問題」ではなくワーキングプア問題
・まっとうな仕事(ディーセントジョブ)を増やす。
→ 特に女性の労働の改善(日本は、2人就労でも貧困率があまり低下してない)
⑨無料かつ良質の普遍的な保育を提供する
・親の支払い能力や支払わない親へ制裁のために、子どものウェルビーニングが侵されてならない。
・諸外国は基本的に無料。/入所が殺到する…? 「保育に欠ける」場合の市町村の決定している。
・貧困の最初の防波堤の役割。財政論は、社会全体で、経済力にマッチした累進的な徴収を
⑩不当に重い税率、保険料を軽減する
他国に比べて重い低所得者の負担、軽い高所得層の負担。改革が必要。特に給付付き税額控除の創設
⑪財源は社会全体に担う
 日本、税、とくに事業主負担の少なさ。
→ 財界/将来の労働力確保のため国に少子化対策を求めながら、非正規労働者つくり貧困化をすすめ、子どもの将来と未来の芽をつむのは大きな矛盾

◆いつくかの処方箋(略)

◆少子化対策でなく子ども対策を
「子どもの数を増やすだけでなく、幸せな子どもの数を増やす対策を」
「すべての子どもが享受すべき最低限の生活と教育を社会が保障すべきである」

 ~貧困はある。見えてないのでなく、見ようとしないだけである。生活の最低限の水準に無頓着な、そんな社会が幸せだろうか。あらためて感じる(感想)
   

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