干潟埋立に断 「開発」の抜本見直しを
沖縄・泡瀬干潟埋め立て開発についての裁判で、県と沖縄市に対し、今後の公金投入を差し止める判決がだされた。計画が不透明で、経済的合理牲がないと判断したものだ。隣につくった工業団地もあいているのに、ある意味、当然の判断であるが、行政論上は画期的なものだ。
「実質 全面勝訴」/「泡瀬」差し止め判決/原告、歓声驚き/沖縄タイムス
沖縄タイムスに、先日お会いしたばかりの、五十嵐敬喜法政大教授のコメントが載っている。「公共性」という行政側の口実をしりぞけ、費用対効果を検証した画期的な判決で、同種の訴訟だけでなく行政のあり方に影響をあたえるだろう、とその意義を語っている。
いまやこれだけ作ってきた構造物の維持、修復、解体の費用がどれだけかかるのか、人の力では回復が極めて困難な自然を破壊する重みとはなにか。今の目だけでなく、50年、100年先の目で見て「合理性」を判断すべき時代に来ていると思う。
そういえば「強欲資本主義 ウォール街の自爆」の中で著者の神谷氏が「成長とはなにか」と根元的な問いをしている。「お金以外の価値あるものがないがしろしされ、社会全体としては格差が拡大し、決して幸福とは言えない状況をうみだしのではないだろうか」と。
そもそも経済は、自然と人の間の、他の生物同様の物質代謝であり、人が他人とどういう関係をむすんでその代謝を行うかということである。激動の時代・・いよいよ根元的なことが問われていると感じる。
この判決は、そうした流れの中で1つの画期をなすものであろう。
「実質 全面勝訴」/「泡瀬」差し止め判決/原告、歓声驚き/沖縄タイムス 「画期的」「沖縄の将来へ英断」 「画期的判決だ」「実質的な全面勝訴」―。泡瀬干潟埋め立て開発に反対する住民らが、県と沖縄市に事業への公金支出差し止めを求めた訴訟で十九日、那覇地裁(田中健治裁判長)は原告の請求を一部認め、今後の公金支出に待ったをかける判決を言い渡した。傍聴席に詰めかけた原告や、裁判所の外で待機していた支援者から大きな拍手が起こり、「泡瀬干潟の埋め立て中止に向け大きな弾みになる」と力強く語った。被告の県や市関係者は冷静な表情で判決を受け止めた。 「(将来分の)公金支出をしてはならない」。午前十一時すぎ、裁判長が判決を読み上げると、原告、被告側ともに息をのんだ。すぐに「一部勝訴」の垂れ幕を掲げた関係者が外に飛び出した。傍聴者から詳しい内容が伝えられると、原告や支援者らは歓声を上げ、手を取り合って喜んだ。 原告代表の漆谷克秀泡瀬干潟を守る連絡会共同代表は、「びっくりしている。非常に評価できる判決だ。沖縄の将来に向けての英断」と声を弾ませ、「埋め立て中止を求める運動への大きな力になる」と喜んだ。 原告や支援者約八十人は閉廷後、地裁近くの公園で〝勝利集会〟。法廷から出てくる原告や弁護団を拍手で出迎え、熱気に包まれた。 泡瀬干潟を守る連絡会の前川盛治事務局長は「市や県の事業に合理性がないと司法がはっきり認めた。埋め立て工事中止に向け、大きな展望が開けた。完全勝利に近い判決だ」と評価。 原田彰好原告弁護団長は、判決が確定しない限り、公金支出の差し止めができないことに触れつつ、「現時点で、司法が(工事に)合理的理由がないと認めた。行政側は計画を再検討するべきだ」。御子柴慎弁護士は「運動の高まりがこの結果を生み出した。事業にこれ以上支出することが違法だと証明された。埋め立て事業を中止に追い込もう」と声を張り上げた。 「皆さんやりましたね」。同訴訟を支援する会の亀山統一代表は興奮気味。「全面敗訴の不安もあったが、裁判の中で積み上げられた事実を財産にすれば、今後につながると思っていた。われわれの主張が一部でも認められたことの意義は大きい。行政は司法の判断をしっかり受け止めるべきだ」と述べ、埋め立て事業中止に向け、さらなる運動強化を呼び掛けた。決定的な影響
五十嵐敬喜法政大教授(公共事業論)の話 費用対効果の問題を正面から取り上げて、経済的合理性が認められないと判断した非常に画期的な判決だ。極めて異例の司法判断で、初めてではないか。
これまで公共事業をめぐる訴訟では、事業の公共性と住民の被害を比較して、公共性が上回るとするのがほとんどだった。道路特定財源の問題など、行政は費用対効果の検証にやっと取り掛かったところで、それを先取りしている。同種の訴訟だけでなく、行政にも決定的な影響を与えるだろう。推進派「残念」
泡瀬沖合の埋め立て事業を推進する「沖縄市東部地域を発展させる会」会長の當真嗣蒲さん(68)は、「非常に残念。良い方向の判決が出るものと思っていたが、合点がいかない。環境への配慮などもあるからこそ、私たち地元も計画を支持してきた。埋め立て計画は、長い歴史があるもので上物の計画は当然見直しが必要だろうが、こんな中途半端に埋め立てが終わったら、逆に環境に悪いのではないか。県が控訴することに期待したい」と話した。「対応考える」
推進議員連盟
沖縄市議会議員二十八人中、二十四人で組織する東部海浜開発事業推進議員連盟の新里八十秀会長は「これから議員に集まってもらい対応を考える」と話した。
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