人間の目で見た戦争、そして経済 品川正治氏講演
臣民としての22年、主権者としての62年。「一身二生」と自らの生涯を紹介した品川さん。
9条は、人間の目で見た戦争を成文憲法とした唯一のもの。天与の宝。人類の未来を開くために生すべきと語り、経済も「人間の目でみた経済」の必要性を、金融危機、「構造改革」と絡めて語った。
戦争をする国としない国、利益は資本家のものという国と果実は国民でわけてきた国・・・日米の共通の価値観などまやかしであり、拒否するところから、日本、アジア、世界が変わると語られた。
84歳、90分を超える講演には、体験に裏付けられた凄み、迫力、そして溢れる熱意を感じた。
以下は、その後半部分の私のメモ。前半の戦争体験は… 要約は失礼に当たるので割愛しています。
ちなみに神戸生まれ、三高出身って、それに正治ってうちの祖父と同じ、どうでもいいけど、ちょっと身近に感じました。
【品川正治さん講演「戦争、人間、そして憲法九条」08、11/1】
・・・私たちの部隊は11月中頃に武装解除うけ収容所に入れられた。一週間もたたないうちに日本軍内部で激闘、内乱がはじまった。陸軍士官学校出の若い将校らが日本政府を弾劾する文章をつくり署名にまわってきた。その理由は、“戦後政府は、明らかに敗戦を終戦と呼んでいる。我々は国力を回復したあかつきにはこの恥をそそぐ。それが大和民族の生き方だ。こんな国には帰らない”。それに対し私たちの部隊はまっこうから反対した。“300万人の日本人が犠牲となり、中国など2000万人を越えるアジアの人を殺し、広島、長崎で一瞬にして20万人が殺された。これが戦争だ。終戦で結構。二度と戦争をしない国にするというのが終戦だ。それ以外に生きていようがない”“どの面をさけて中国の人と向き合えるのか。二度と戦争をしない国になるしかない。終戦で結構”と猛然と署名に反対した。
翌年のメーデーの時に山陰の港に復員した。その戦場で3月8日付の新聞を一部わたされた。憲法草案が一面に載っている。隊長に大声で読めといわれ読んだ。九条のところでみんな泣いた。憲法の成文で戦争をしないこと、軍隊をもたないこと、交戦権を放棄することを書いている。よくぞここまで書いてくれた。隊長も泣いていた。これで戦死した仲間、アジアの人々にも顔を向けることができる。これが憲法との出会い。忘れることができない一生の座標軸。
しかし、この国の政治をあずかる人が戦争をしない決意をしたことがない。私たちにも責任がある。逆に政治をやっている人は憲法が変えれないので解釈改憲できた。自衛隊をつくり、有事立法をつくり、特措法をつくり、イラクにまで派兵した。国民が泣いて迎えた九条がボロボロになっている。しかし、いくらボロボロになっても旗竿は離してない。これが憲法をめぐる情勢。
私の問題意識(高等学校で、召集令状の来る2年間の間にどうしてもカントの純粋理性批判を原書で読みたいと努力し、読んだこと)は、国家が戦争している時に国民としての正しい生き方を追及した。なんのために哲学を勉強したのか。戦争は抽象でも天災でもない。起こす人がいるから戦争になる。止めるのも人間だ。オレはどちらの側に立つのか、それが本当の問いではなかったか、と激しい思いにかられた。はっきりした座標軸をもっておいてほしい。
いざ戦争が始まれば、みな相手で悪いという議論になる。そうではない。戦争は起こす人がいる。止めるのも人間。私はそうしたいと決意した。
経済界に身を置いてきた。経済にも通じる問題。教育、医療、福祉、環境、農業。みんな人間の努力。市場という抽象にまかせればいいというものではない。痛感している。「市場にまかせればすべて上手くいく」ことはありえない。人間の努力が大事。その努力の先頭にたつのが政治じゃないか。
講演のテーマの「戦争、人間、そして憲法九条」。人間とはそういう意味。
九条は特異なもの。戦争を人間の目で見て、二度と戦争はできるものじゃないと謳っている憲法は日本の憲法しかない。常備軍を持たない国はあるが、それは国益上の判断から。成文憲法には書けない。国家の目で見ているのが世界の憲法。日本は犠牲の上にたって、戦争を人間の目で見て、戦争はやめるべきだ、やれっこないことを実感した。戦争になする必ず罪のない母親、子どもが犠牲となる。それを経験した日本。戦争はできない。
人間の目で戦争を見た憲法は日本にしかない。これは偶然の産物。憲法論議の時に軍隊はなかった。2,3年遅れたら朝鮮戦争、中国革命があって出来なかっただろう。天与の宝と言える。それを今、なんのために捨てるのか。世界で戦争反対、平和を願う理念を否定するものはいないが、成文憲法はつくれてない。それを日本は持っている。これをどう生かすか考えないで捨てようとする。絶対に許すことはできない。
派兵恒久法。国連決議があれば自衛隊を海外に出すという論理。小沢さんが強く議論している。小沢さんの「日本改造計画」が出たとき、私は経済同友会の幹部としてまっこうから論戦した。国連決議というが国家の条約。国家の目で見ている。だから最後には軍、戦争の規定がある。国連が承認したから人を殺してよいというのか。それは憲法を汚す議論だ。人間の目で戦争を見ている憲法を捨てれば、世界の未来は、その方向にしか向かない。どう生かすかが我々の問題だ。
難しい問題だが、戦争を人間の目で見るなら、経済も人間の目で見るそれでこそ日本の未来が開ける。経済人としての私の使命。
今の経済は、人間の目でも、国家の目ですら見てない。金融資本の目で見ている。国家でさえ撹乱されている。サブプライムローンの問題。金融資本のほしいまま動いてきたことが、こういう結果を生んだ。
日本の場合、小泉以来どっちを向いてきたかといわざるを得ない。日本とアメリカは価値観が共有していると政財界、マスコミ、思想界、すべてが言っている。価値観を共有しているのか。原爆を落とした唯一の国と原爆を落とされた唯一の国。戦争に関してまで価値観が共有していると広島、長崎、沖縄の人に言えるのか。この考え方には憎悪を感じる。
価値観を共有していると考えるから混乱が極に達する。小泉さんは、靖国問題でわかるように自分の主張を押し通すが哲学は持ってない。政治的な勘のよさは抜群だが政策は1つもない。郵政改革は政策でなく政治。イエスかノーか。庶民の金融はどういうものがいいのかの話はしてない。政策は竹中などアメリカと価値観を共有する、一歩でも二歩でもアメリカに近づくのが正しいと考える人にまかせた。特に雇用がメチャクチャになった。かっての日本の姿が消えようとしている。
規制緩和とよく言われる。戦争の総動員法のきびしい規制があったので、規制緩和がポジティブに受けとめられやすい。当たり前のように感じてしまう。「改革なくして成長なし」と言われ出した。大企業のための規制緩和。地方の企業はやっていけない。規制緩和は、大企業が権力を強化するもの。雇用が最も激烈な形でこわされた。もとにもどせるかどうか。
大きな政府から小さな政府へ、官から民へ。これは詐欺です。日本の政府は人口あたりの役人の数は近代国家の中で最低クラス。国際的に大きな政府と誰も呼んでない。教育、福祉のGNPに対する割合は、日米で最低を争っている。今も小さな政府。
1つだけ大きな政府がある。政府の借金は大きい。予算を組むとき財政の制約として重くのしかかってくる。この政府の借金。誰から借りたのか、誰のために借りたのか。国民の家計部門から借りている。みなさんの預金で国債を買っている。誰のためにと言えば、金融機関と大企業を助けるため借りた。大企業はここ数年史上最高の利益をあげている。借金を返すなら、大企業、金融機関が返すべきだ。それを、さらに法人税を下げろと言う政権がすりかえた。財政の問題を、個人の負担で処理するものに。消費税、年金、健康保険の問題もみなそうです。詐欺なんです。国民がその中身をわかったら協力しなくなるので、もっともらしい理屈をつくっている。だまされてはならない。詐欺です。返すべき人が返さないで、これを個人から返さそうとしている。それが目の前に迫っている。
政財界もマスコミも思想界も日米が価値を共有しているというワナのようなものにひっかかっている。日米では資本主義の形が違う。焼け野原から世界第二の経済になったのは、日本の資本主義がまちがってなかったから。アメリカは、利益は資本家のもの。これが正当な資本主義。日本は成長の果実は国民でわける。それが資本主義としておかしいというのが竹中理論。
日本は経済大国でありながら、国民が不満、将来の不安をもっている。ドルを支えようとしてゼロ金利にしてる。年金問題が大変なのは、退職金の金利と年金で生活しようと設計していたから。日本経済は人間の目で見る経済から程遠い状態。
どうすればよいか。解決策はあるのか。日本は、アメリカと価値観が違うとはっきり言えば、選択枝が出来る。誰が言うか。国民、みなさんが言うしかない。権力の主体は国民です。
国民投票で、九条を変えない、戦争しないと言う。アメリカは世界戦略を変えざるを得ない。
経済界はヒエラルキーがはっきりしている。経済力ではトヨタの社長と国民1人は何万倍も違うが、国民投票なら同じ一票。それが国民主権。
九条をもっている戦争を市内国、人間の目で見て戦争しない国。経済も人間の目で見ていく。アメリカは戦争している国。選挙や国民投票で示す。みなさん以外にできっこない。
日本が変われば世界史が変わっていく。日本がアメリカと価値観が違うといえば、日本が変わり、アジアが変わり、世界が変わる。子どもの未来が変わる。ぜひそのことをお願いしたい。
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