国保無保険と子ども、小さな自治体、財政健全化法
子どもの無保険で主要紙が社説を書いている。子どもに責任がない、医療を奪うな、で一致している。配慮でなく抜本対策に踏み出すべきだ。
さらに今日の赤旗に全国の自治体の3割、551市町村で「資格証明書」の発行がされてないことが報じられている。
内訳は、市104、町311、村135。自治体総数1782(*)のうち市は783 、特別区23、町806、村193だから、
市の13.3%に対し、町の38.6%、村の69.9%で発行してない。財政が厳しいはずなのに、小さな自治体の健闘が光る。
保険証のない子 全国一律に救済する仕組みを 毎日11/2
無保険の子ども きめ細かな対応が必要だ 読売11/4
国保滞納 子供には責任がない 中日新聞11/4保険証取り上げ―払えぬ人に適切な減免を 朝日
だいたい国保法67条には、「保険給付を受ける権利は」「差し押さえることができない」と規定している。
97年の国保法改悪で資格証明書の発行を義務づけたことが、同法のもともとの主旨に違反している。
実態があきらかになり、無保険をなくす声が広がっているが、一方で財政健全化法の実質連結赤字比率の中に、国保会計の赤字が含められることとなり、一般財源の繰入の減少、保険料高騰、滞納増加・資格証明書発行、収納率低下による財政悪化、値上げという負のスパイラルの圧力が強まることが危惧される。
84年に医療費ベースで45%から38.5%へと減らされた国庫負担の復元が急務である。
*厚労省の調査時点の自治体数は1798。1782は08年11月1日現在
【保険証のない子 全国一律に救済する仕組みを 毎日11/2】 親などが国民健康保険(国保)の保険料を滞納し、保険証を返還させられ「無保険」状態となっている中学生以下の子どもが全国1万8240世帯、3万2903人もいた。厚生労働省が初めて全国調査して分かったもので、子どもの被保険者のほぼ100人に1人が「無保険」だった。 世帯主が保険料を1年以上滞納すると、保険給付が差し止められ保険証の代わりに資格証明書が発行される。この結果、医療機関の窓口では全額自己負担となるので病院にいかなくなるとの懸念が出ている。 保険料は親など世帯主に支払い義務があり、滞納を減らす狙いで保険証を返還させている。しかし、これは事実上、滞納者へのペナルティーとなっており、何の責任もない子どもに影響が及ぶのはおかしい。 厚労省は都道府県に対し、医療が必要な子どもがいる世帯には有効期間を1~数カ月に限定した短期保険証を発行するよう通知した。ただ、国が通知を出しても、国保を運営する市町村が動かないと打開はできない。保険証のない子どもが受診できず病状を悪化させることがないよう、自治体は早急に対応すべきだ。保険料を払えない人の相談に乗り、悪質な滞納者には厳正に対応することは言うまでもないことだ。 「無保険」の子どもへの対策は自治体によってばらつきが大きい。前橋市では1年前から世帯単位の保険証を個人カード化し、今春から滞納世帯でも中学生以下の子どもにも保険証を交付して医療費を無料にした。東京23区でも足立など10区で義務教育以下の保険給付を差し止めない独自対応をしている。しかし、こうした独自策を取っていない自治体も多い。 「無保険」の背景に市町村の国保が抱える構造的な問題がある。国保加入世帯主の職業は従来、自営業者や農林水産業の従事者が中心だったが、最近では失業者や高齢者など無職の人が半数以上を占め、滞納者が増えてきた。一方で医療費が膨らみ、市町村は保険料を引き上げざるを得なくなり、それが滞納者を増やす要因となっている。 現在では滞納者は国保世帯の2割弱にまで増え、市町村国保の半数以上が赤字運営だ。自治体は滞納者対策と赤字財政対策の問題に直面している。「無保険」の子どもへの対応策がばらつくのはそのためだ。 「無保険」対策には多くの課題がある。対象年齢は中学生以下か、18歳未満か。子どもの医療費を無料にするのかどうか。国保法を改正して実施するのか、市町村に任せるのか。これを医療制度の見直しの中で議論し、速やかに決着を図る必要がある。少なくとも自治体によって対応が大きく異なるというのは急いで是正し、全国一律に救済する仕組みが必要だ。
【無保険の子ども きめ細かな対応が必要だ 読売11/4】 親の保険料滞納で、子どもまで医療を受けにくくなる状況は、なくすべきだろう。 世帯主が国民健康保険の保険料を長期間滞納しているために、保険証を返還させられることがある。 こうした保険証のない“無保険”状態で、中学生以下の子どもがいる家庭が全国に1万8200世帯あり、無保険の子どもの数は3万2900人に上ることが、厚生労働省の調査で分かった。 国保を運営する市町村は保険料の徴収に頭を悩ませている。全国で385万世帯が滞納しており、これは加入世帯の2割に近い。 災害や失業など特別な事情がないのに滞納を続けた場合、まず有効期間の短い「短期保険証」に切り替わる。1年以上滞納が続くと保険証は返還させられ、「被保険者資格証明書」が交付される。 資格証明書で病院にかかると、いったん全額自己負担となり、国保が払う分は申請しなければ戻ってこない。 保険料を払わない人を短期保険証に切り替える理由は、単に支払いを促すだけではない。 保険証の更新で担当者が面談する機会が増え、多重債務などの事情が分かることも多い。滞納者は行政との接触を拒絶して、子育てや介護の問題を抱え込んでいる場合もある。様々な行政支援のきっかけとして活用すべきだろう。 しかし、懲罰的な要素が強い資格証明書への切り替えは、滞納の事情をよく調査した上で、確信的な支払い拒否と判断した世帯に限るべきだ。また、悪質な滞納世帯であっても子どもにまで責任は負わせられまい。 厚労省は今回の調査結果を受けて、市町村に対し、機械的に資格証明書へ切り替えることはしないように求め、資格証明書の世帯に子どもがいる場合は、柔軟に短期保険証を出すよう通知した。妥当な措置である。 給食費や保育料などでも無責任な親の滞納や不払いが問題となっているが、医療は命や健康にかかわるもので次元が異なる。 悪質な滞納に対しては毅然として徴収すると同時に、責任のない子どもについては、どの世帯も同じ条件で保険診療を受けられるようにすべきだ。 子どもには別に、通常の保険証を出す仕組みを検討することも一案であろう。 滞納者がどのような事情で滞納を続けているのか、より詳しい調査と分析も必要だ。福祉にはきめ細かな対応が欠かせない。
【国保滞納 子供には責任がない 中日新聞11/4】 親が国民健康保険(国保)の保険料を滞納しているため、子供が必要な医療を受けられない事態が全国で起きている。子供が受診抑制を強いられないように、国は全国統一の支援策を考えるべきだ。 国保は市町村単位で運営され、各世帯は収入に応じた保険料を納める。保険証があれば医療機関の窓口負担は医療費の三割で済む。 保険料滞納が一年以上続くと保険証を返還しなくてはならない。 代わりに交付されるのが「資格証明書」で、医療機関で医療費の全額を支払い、あとで市町村に直接出かけて七割分を受け取る。その際、過去の滞納の理由を問いただされ、支払いを促される。それを嫌って必要な受診を控える滞納世帯は少なくない。 先週末公表された厚生労働省の調査によると、資格証明書を交付されている世帯は全国で約三十三万世帯(国保世帯の1・6%)あり、このうち約一万八千世帯には中学生以下の子供が計三万三千人いることがわかった。 懸念されるのは、こうした子供たちまで、親の滞納のあおりを受け、必要な医療を受ける機会が制約されることだ。 世帯の支え手が病気や失業など「特別な事情」がある場合には滞納しても保険証が交付される。 これを踏まえ厚労省は、子供のことを考慮して資格証明書の交付を慎重に行うこと、有効期限が一-六カ月の「短期保険証」の活用などを全国に通知した。子供にとって朗報だが、まだ不十分だ。 資格証明書などの交付は市町村の裁量に任されており、現在でも交付世帯に子供がいる場合の取り組みは自治体で異なる。 親子を含め資格証明書以外認めなかったり、親には資格証明書、子供には通常の保険証か短期保険証を交付するなど、居住している市町村で子供の医療アクセスに大きな差が生じているのが実情だ。 子供に責任がない以上、市町村任せにするのではなく、全国一律の基準を設けて子供の医療を確保すべきだ。必要な財源として税の投入も検討する必要がある。 国保全体で資格証明書交付世帯を含め滞納世帯は18・5%にのぼる。低所得の加入者が多く、高い保険料を払い続けられないからだ。交付世帯の子供の医療危機は国保の構造的問題から生じたといってもいい。 国保を市町村から都道府県単位に広域化して保険料格差を少なくし、保険料を払いやすくすることも考えなければならない
【保険証取り上げ―払えぬ人に適切な減免を 朝日】 保険証1枚で誰もが安心して医療を受けられる「国民皆保険の国」はどこへ行ったのか、と言いたくなる。 市町村の国民健康保険で、世帯主が保険料を1年を超えて滞納しているために保険証を取り上げられた世帯が全国で33万あり、その世帯には子ども(中学生以下)が3万3千人いる、と厚生労働省が公表した。 保険証がないと、かかった医療費の全額をいったん病院の窓口で払わなければならない。原則7割の保険給付分はあとで戻ってくるが、滞納が1年半を超えていると、保険料にあてられて戻ってこない場合もある。 なかには年収が1千万円以上もあるのに滞納している人もいる。「病気にならないから払いたくない」といったわがままを許せば、国民皆保険は成り立たない。「払えるのに払わない人」には厳しい措置が必要だ。 問題は「払いたくても払えない人」がいることだ。 本来は、病気やけがで仕事ができない、収入が激減した、といった特別の事情があれば、保険証は取り上げないことになっている。だが自治体によって、事情についての相談をていねいにしている所としていない所がある。 今回の調査でも、滞納世帯のうち保険証を取り上げられた世帯が2割を超す自治体があれば、1%未満の所もあり、ばらつきが目立つ。滞納者と接触しようと電話連絡や訪問をしている自治体は約7割にとどまり、休日もそれをしている所は2割台しかない。 調査を受けて厚労省は、子どもが病気で、かつ医療費の支払いが難しいと申し出があった場合は、短期間の保険証を出すよう都道府県に通知した。一方、民主党は、18歳未満の子どもからは保険証を取り上げないようにする法律改正を準備している。 だが、保険証がなくて困るのは、お年寄りや他の家族も同じだ。保険料を払えない世帯には支払いを減免する制度をきちんと機能させることが、本質的な解決策ではなかろうか。 そのため、市町村は滞納者と必ず面談し、払えない特別な事情があるか、保険料を減免すべきかを確認しなければならない。これには人手がいる。公共料金の徴収部門や福祉担当の部署と相談・判定を一本化するなど、作業の効率化に努める必要がある。 また、本当に払えないのかどうか判定に迷うケースが実際は多いだろう。合理的で説得力のある判定方法を工夫していくことも大切だ。 国民健康保険には、保険料を負担しにくい非正規労働者や失業者が増えた。それによって、払える人の保険料が上昇してサラリーマンの健保より国保の方が負担感が重くなり、「払わない人」を増やす要因にもなっている。この点の改善も今後の検討課題だ。
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