所有権の死
15.16日と福岡で「景観と住環境を守る全国ネットワーク」の大会があった。
法政大学教授で、日本景観学会副会長の五十嵐敬喜先生の「都市計画法改正について」の話の中で、50年~100年を見越した発想でとりくむこと、日本のこれから直面する問題として「(土地)所有権の死」ということに触れた。
①山林 ②農地 ③限界集落 ④マンション
利益の生まないので放置される。しかし、相続で、権利関係者が広がっていく。すると個人も行政も誰も手がつけれない土地、空間が広がっていく・・・ これにどう対処するか?
これは、特に放置された民有林としてすでに大きな課題となっている。間伐もできない。山を重くし、土壌を荒廃させ、災害の危険を増大する。知人の中には、重加算税をとるべきだ、と主張する人もいる。(私も災害発生を防ぐ観点から管理責任義務を強化すれば、対応できるのではないかと思う)。温暖化対策で、整備された森林の二酸化炭素の吸収をカウントするのなら、この問題を解決できないとすすまないだろう。すでに高知県では、県や自治体の所有する森林の間伐は実施されており、間伐をやりたくても、「民」所有の壁(所有権を持つ人が全国にちらばっている)からすすまない状況になってきている。
京都だったか・・・街中の朽ちた住宅を取り壊すための助成制度が出来たと報道があったが、こうしたことが大きな問題となってくるだろう。
五十嵐先生は、開発王国・日本の今後の姿として、残骸が山ほどできる。開発はコンクリート。50~100年で劣化する。ダムをどうするのか、道路をどうするのか、と。これだけ借金をつくって推進した事業を、人口減の日本がどうするのか、と・・・
個人の財産権の自由だと行って、突如、低層住宅街に、マンションが立つという、紛争の裏には「開発王国・日本」の奥深い問題があることを改めて実感した。
50年後の社会を見据えた、本質的な提起でした。
先生は、憲法29条の財産権の自由が、土地に対してすべて認められているという点に触れられ、そもそも都市、まちづくりは「不自由」から出発し、規範にあうものだけを「自由」するという発想の逆転が必要だということを主張された。
29条の解釈をめぐるたたかいとなると思うが、私は、今でも市街地調整区域は、開発、建設が厳しく制限されている。それは13条の公共の福祉として、個人の権利の調整として、無補償で制限できているわけで、それこそ、先生が、最も大きい問題と指摘された民主主義の問題~国民合意の問題だと思う。
どう新しい価値観をつくるか・・・どれだけ未来の世代に良いものを残し、負債を残さないか・・・よくよく考える必要がある。
政府の補助制度は建設にはあるが、維持・補修にはない~ 開発に関するアセットマネジメント(資産運用を最適に配置し、その価値を最大化する。もともと金融用語)を本格的に考える必要がある。
2日間を通じ、法律的なたたかいの部分も含め、なかなか刺激的な学習の場でした。
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