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財政「健全化」法 狂想曲② 公営事業

 財政「健全化」法のうち、「連結実施赤字比率」に関係し、特に影響が大きい
・上下水道事業
・自治体病院事業
・国民健康保険事業 
 という公営事業(特別会計)について…備忘録

(2)上下水道事業への「健全化法」の影響
◆「3領域構成3連結指標」による財政統制
・普通会計領域    実質赤字比率  /単独指標 
  連結対象領域    連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率 /連結指標
  公営企業会計領域  資金不足比率 /単独指標
 ~ 赤字額と黒字額が相殺され、資金ペースの数字だけが現われる。

 各会計の特性による財政規律を無視し、当面の赤字を回避する帳尻あわせが優先
 → 最終的に問われるのは「普通会計の負担額」で全体の債務総額ではない/ 自治体会計からの切り離しの誘因

◆資金不足比率と解消可能資金不足額
・従来からの「不良債務比率」(流動負債-流動資産/営業収益)とほぼ同じ。 当面する支払能力/フローの資金繰り

①損益計算と資金収支
・健全化法~ 形式的な「資金不足額」から「解消可能分」を控除する
・法適用~企業会計方式の場合   
  赤字、黒字は損益計算(収益的収支) → 現金支出を伴わない「減価償却費」が入る
    → このままでは、現金主義の官庁会計方式による「普通会計」とは合算できないが…  
    資金ベースで、収支を計測して、連結指標としてつかう。
  資金ベースでは… 建設改良投資、元利償還を扱う「資本収支」において、補てん財源として「減価償却費」などの内部留保を見込み、収益的収支と資本的収支を合わせて総合的な資金収支を把握できる。 
             *収益的収支で損失があっても減価償却など内部留保で資金需要がカバーできれは、
              単年度の資金収支は黒字となる。
②「計画赤字」と独立採算制の関係
   計画赤字~ 現時点では無理でも一定期間内に解消できるもの。独立採算内における繰り延べ措置。
  ・地方公営企業の独立採算とは…
    利用者負担で完全にまかなう独立採算ではない。
      一般行政事務の代行(消火用水供給等)、不可避的に不採算になる経費(へき地医療等)は一般会計で対応
     → 「経費負担区分原則」(地方公営企業法第17条の2)
     ⇒ 計画赤字は、この原則とは異なり、きわめて限定的な取扱。 
  ・4つの算定方式で計算 (既述)
  ・下水道は、4つの算定方式すべてが適用に。/独立採算の限界領域に位置していることの証左
           → しかし、企業会計の適用、独立採算の枠内に押し込もうとする政策的意図がある。
    しかも、資金不足比率の分母が、営業収益なので、料金値上げの圧力となる。

③公営企業の経営努力と国・自治体の財政責任
・経営努力の前提 ~ 国、自治体の財政責任が適切に実行されているか?
    「経費負担区分原則」(地方公営企業法第17条の2)の「逐条解説」/関根則之
 「この規定はあくまでも、地方公営企業の経費のうち国において負担すべきものについては、他の法律等においてそのような制度が十分に確立しているということを前提に規定されている」   
   → 国庫補助・負担金の超過負担は?
 交付税措置は適切か? /地方公営企業繰出金基準(総務省自治財政局通知) 等が問われる
   ⇒ しかし、こうした点への配慮は、「健全化法」のスキームにはない。
・普通会計と公営企業会計の関係は適切か
     基準内の繰出しは実施されているか?
そもそも国の定める「繰出金基準」が実態にあってないという問題  
       → 施設整備が中心で、維持管理・施設更新といった事業の成熟度に対応したものになってない!
*制度と運用で、財政責任が果たされてない場合、本来の独立採算から除外されるべき経費までも
         が実質的資金不足額として、経営努力の範囲に含まれ、住民負担に転嫁されてはならない!

◆上下水道事業への影響と課題
①現状と課題
・地方公営企業法の適用状況と会計方式 
  上水道 強制適用/簡易水道は別  下水道 選択… 公共下水道で1割、全体で6.3%
   … 法非適用事業には、累積欠損金のような赤字を繰り越す概念はなく。単年度主義
       ⇒ 他会計繰入金で経営を支えている。単年度主義のため・・・
②事業の性格・条件と独立採算の成立可能性
 独立採算制では、企業会計の優位性は明らかだが、事業の性格から適用を判断する必要がある。
    一般行政の代行、不採算部門などの除外を規定する「経費負担区分」の観点からは、独立採算はなじまない。
       簡易水道~「福祉水道」の呼び名もある。へき地でそもそも独立採算は無理
       下水 「雨水公費・汚水私費」の原則はあるが… 
→ 公用水域の水質保全にもとづき、水質規制、高度処理、高料金対策なども公費対象
   * この区分は社会的状況などで変化してきていめる。
           原価回収率 大都市103.6%、30万以上 81.6% 3~5万 6割、1万人未満 38.2%
                   *独立採算をもとめるには無理がある。
           ~ 分流方式では、整備されても接続は徐々に高まる 
→ 供用開始直後は、一人当たりの処理費用が高くなる。
  また、周辺部になればなるほど人口密度が低い

◆財政健全化法の影響とその対応
 ・「健全化法」の狙い ~ 連結実質赤字比率、解消可能資金不足額から検証する
    普通会計の負担の軽減~ 公営企業の繰出し金の削減圧力、独立採算制の強制
      → すでに簡易水道では補助金の改悪で、上水道と統合へ
 ・国の責任 交付税の復活、補助金の超過負担の解消が前提
★ 地方公営企業として、その存在が決せられる最終場面とは、独立採算を原則としつつも経営が立ち行かなくなったとき、税金を投入してまでも支える価値がある事業かどうか、という住民の評価。

(3)公立病院改革  地域医療の崩壊もたらす健全化法とガイドライン
◆病院事業からみた健全化法 ~ 
・一般会計と連結する合理性? ・観光開発事業などと同列に扱う妥当性? ・地域性を考慮しない一律評価
     → 数字のみが一人歩きする危険性
①連結実施赤字比率では…
  不採算性の高い医療を提供せざるをえない病院(過疎地域、救急・小児)を一般病院と同様の扱いで連結
②実質公債費比率  投資(起債)に対する償還のみを一面的にとらえており、回収の評価がない。
③「定点情報」 ~ 実質公債費比率以外の指標に共通
  年度末の定点情報であり、数値の推移が反映されない~ 同じ数字でも改善の中か、悪化の中かで評価が違う

◆病院事業に与える影響
①経営形態の見直し  ~ 病院経営の自治体からの切り離し
②独自再建の可能性の縮小 ~ 経営健全化措置の廃止
 これまでは 1.病院事業の経営努力、2.繰入への交付税措置の拡充、3.経営健全化措置
→ 特に3.経営健全化措置は、08年まで第5次(特例債発行、繰出しへの特別交付税措置)、216団体1千億円。
  ⇒ これが廃止される。/ 資金不足比率が20%以上なら、健全化計画。  
   
◆公立病院改革ガイドライン ~ その内容・問題点と与える影響
① ガイドラインの主な内容   骨太07・歳出歳入一体改革の柱としての「社会保障改革」が発端
・自治体 20年度内に、公立病院改革プランの策定(効率化は3年、再編・経営形態見直しは5年)
・改革の3つの視点 
   数値指標/医業収益率、不良債権比率など収益性。病床利用率など規模。人件費率など労務指標
  ・再編・ネットワーク化  二次医療圏での役割の検証、連携強化や医療計画との整合性(民間も含めて)
  ・経営形態の見直し 独立行政法人、民間譲渡も含めて
・プランの公表と評価(年一回以上)
・財政支援措置
   公立病院特例債  改革を実行する病院に、不良債務の長期債への借換(20年度のみ)
              短期の資金繰りのショートにしている病院への手当て。長期債務への借換
   病床削減時の既存交付金措置の5年間継続 
   病院から診療所へ  過疎地の要件には、病院に準じて、特別交付税措置を適用     
     地方財政措置の重点化 建設単価の基準を上回る分を除外。病床の利用率を交付税に反映を検討
                過疎地の病院、診療所には交付税の充実を検討
②ガイドラインの問題
・「地域づくり・自治体の医療政策」に国が介入・統制
 地域と歴史の特性を持ち。地域住民の共有の財産、地域の発展に寄与、医療・保健・福祉政策の一体的推進の柱
・医療費削減政策を前提に改革を迫る
 現在の困難の要因 ~ 医療費削減政策にもとづく制度改悪、医師不足による経営悪化 /本末転倒
・地域の医療実態を無視し、地域格差を助長
 主に、過疎地の自治体病院に深刻な影響。地域格差を助長/ 地方自治法「福祉の増進」、憲法25条違反
③ガイドラインの与える影響
  ・経済性の偏重  ~ 自治体病院は、公共性と経済性の調和(地方公営企業法3条)が求められる
    ガイドラインは、公共性を阻害し、自治体病院の存在を否定する。→ 不採算医療の切り捨てを推進
・財政誘導による医療機能の縮小
   財政措置の多くは、医療機能縮小に対する特例措置
・アメとムチの財政支援措置(勝ち組と負け組みの2極化)
   交付税の病床利用率の反映 → 経営のきびしいところをさらに追い詰める内容
★ 医療は、自ら守り育て上げるものに ~ 地域で考え、ビジョンを作れ、地域で声をあげ、地域で行動する

(4)国保財政   財政悪化スパイラルを助長する財政健全化法
◆市町村国保の現状
・市町村国保1834、国保組合166団体。一般3873万人、退職者865万人。組合393万人 計5131万人(06年3月)
・無職の割合 5割強 / 05年 農林水産4.4%、自営業14.9% 無職53.8% 
60歳以上49.4%、70歳以上28.1%。所得100万円未満5割、200万円未満75.4%
  ⇒ 高齢者、低所得者など負担能力の低い人へのセーフティネット機能を持つものに構造的変化

◆国保の保険料と滞納率
・国庫負担の削減 84年 医療費の45% から 38.5%へ。 
88年  低所得者の保険料軽減額の国庫負担半減(保険基盤安定制度)
・都道府県調整  05年  → 広域調整の強化、水平補完
  国保給付費の50%(定率負担40%+調整交付金10%)→43%(34+9)へ。7%は県の調整交付金に。
      → 交付税の総枠抑制で、結局は国の負担の削減へ
  高額医療費の影響緩和 市町村の共同事業として県単位で運営 (高額医療費共同事業) 06~09年
  保険料の平準化、財政安定化  一件30万円以上の医療費を共同で支える(保険財政共同安定化事業)06年 
・国庫支出金が半減  1980年 59% → 05年 31% / 普通会計からの繰入は3% → 10%へ
・保険料 一世帯あたり14万898円   軽減措置は、平等割の7、5、2割軽減
・強化されるペナルティ 資格証明書発行の義務化 98年 日本共産党以外の賛成で可決
  「保険給付を受ける権利は」「差し押さえることができない」(国保法67条)との整合性で問題あり
     → 資格証明書発行世帯の受診率は、正規の保険証世帯の1.9%(06年 保団連の調査)
     ⇒ 医療保障のセーフティネットの底割れ状態

◆国保の財政状況
・80年代 黒字基調 ~ 90年代、2000年以降は赤字基調に
  医療の高度化、高齢化に伴う医療給付費の増加、不安定雇用の増加、所得の減少による保険料収入の減少
   そして国庫負担の削減
     ~ 03以降は黒字基調 老人保健制度の給付費に占める拠出金が70%から50%へ低下 02-06年
          各保険の高齢者の人数でなく、各保険加入者の頭割り負担に変更 02-07
・後期高齢者医療制度の成立  ~ 支援金は、02よりの頭割り負担を引き継いでいる

◆財政健全化法の適用と国保会計への影響
①国保会計への影響
・連結実施赤字比率の対象 ~ しかも、資金不足額に対する「計画赤字」が認められてない。
    ( 後期高齢者医療制度は、広域連合。実質公債費比率、将来負担比率の対象となる )
・歳入増 → 保険料引き上げ、徴収の強化 / 一般会計からの繰出しの削減 
・負のスパイラルの危険性
  保険料値上げ → 収納率の低下 → 国保財政の悪化 → 保険料の引き上げ
②国保財政と後期高齢者医療制度への二重作用
 後期高齢者医療制度も、実質公債費比率、将来負担比率の対象となり、資格証明書発行など徴収強化が懸念

★財政効率化の「持続可能性」が、生活の「持続可能性」を損なう
・国民生活を豊かにする手段である「財政」が、目的である生活・福祉の向上を「効率化」のために犠牲にされる
・生活の「持続可能性」こそ求められるべき。財政健全化法は、その「持続性」を損なう本末転倒したもの 

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