高知市は無視? 下水計画の転換迫る2つの政府文書
高知の下水道料金の値上げがいかに理不尽が触れてきたが、そのおおもとは延々と下水道(汚水処理)を周辺部にひろげ続けるための投資が前提とされているからである。
政府(国交省)も下水道拡大一本槍の失敗に直面し、軌道修正している。
昨年6月 下水道政策研究委員会計画小委員会報告書 下水道中期ビジョン
今年9月 都市・地域整備局下水道部「効率的な汚水処理施設整備のための都道府県構想策定マニュアル(案)」 しかし、それを無視し、住民にそうした経過も説明せず、暴走している。
2つの報告から気になるところを拾ってみた。
「下水道政策研究委員会計画小委員会報告書 下水道中期ビジョン」より
★「2.下水道を取り巻く状況」では・・
「下水道計画は、人口及び市街地が増加、拡大すること、生活様式の高度化に伴い水利用が増大することを前提としてきたが、人口減少・少子高齢化社会の進展は、その前提条件の変化や財政基盤を支える使用料収入の減少など、下水道事業のあり方に大きな影響を及ぼすことが予想される。」との認識をしめしている。★「中期の下水道政策のあり方」
・「1.基本的な考え方」では
「限られた予算の中で優先度を明確にし、地域の特性に応じた効率的かつ効果的な整備へと手法を転換していく必要がある。」と手法の転換を求めている。
・「地方公共団体による地域の最適解の実現」では・・・
「既存の枠組みにとらわれず、地域に適した手段を組み合わせ、最適解を考えることが重要」と指摘している。★「施策展開の進め方」
・「住民参画への転換」
「下水道の果たすべき役割と提供すべきサービス水準について、住民等に積極的に説明し、対話がなされてきたとは言えない状況にある。厳しい財政状況の下、下水道が地域の目標実現に向けて、必要な整備を行い、継続的にその機能を維持していくためには、計画段階で住民等と情報を共有し、事業の各段階においても住民参画が可能となる場を設け、住民等の意見を事業に反映する仕組みを構築する必要がある。」
・「選択と集中」・・・「優先度を明確にした上で、効率的かつ重点的に進めるべき」
・「整備手法等の転換」① 総合的な計画手法への転換
「現状では下水道によるハード整備だけですべての課題を解決することは困難であり、他事業と連携を強化するとともに、ハード整備を中心とした計画から、ソフト対策や自助による取り組みを加味するなど、総合的な計画手法へと転換する必要がある。」→ 下水道事業だけで汚水処理100%を目指すべきではないとの指摘。②多様で柔軟な設計・施工手法への転換
「下水道を取り巻く社会状況等が大きく変化する中、中小市町村や郊外部における整備にあたっては、自然条件、都市形態、人口動態その他の前提とする地域特性が異なることから、これまでの基準にとらわれず、地域の創意工夫を活かしたローカルスタンダードの導入を図るべきである。」「これまでの手法にとらわれず、地域のニーズに適した効率的、効果的な施設を整備できるよう、設計・施工手法等を転換すべきである。」と計画の抜本見直しを求めている。★「ストックマネジメントへの転換」
「下水道はつくれば終わりではなく、適正な管理により機能を発揮する」「多くのストックが蓄積してきたことを踏まえれば、下水道はつくる時代から、より良く使う時代、より高機能な施設に再構築していく時代に移行してきたといえる。」「業績指標(PI)等により、運転状況及び提供しているサービスの評価を行うとともに、これらの情報を住民等に公開して、住民等との合意形成を踏まえたマネジメントの改善を継続的に実施していく必要がある。」→ これを高知市はどう実践したのか、説明がいる。
★「Ⅲ 中期の整備目標と具体施策 2.暮らし」
・公衆衛生の向上・生活環境の改善
①現状と課題
「汚水処理については、ナショナルミニマムとして100%の普及をめざし下水道、農業集落排水施設、浄化槽等により整備を推進し、汚水処理人口普及率は約8割となっている。」「も地域の実情に応じた創意工夫による効率的な整備を積極的に推進する必要がある。」「計画段階から、下水道の利用者である住民等と対話しながら事業を進める必要がある。」
② 略
③目標達成のための具体施策
(重点地域における施策)→重点化とは、下水道計画区域の見直し。水源地や人口密集地に重点化すること。
(一般地域における施策)
・「地域全体の汚水及び汚泥処理の最適化・効率化を図る観点から、集落排水事業・浄化槽事業・し尿処理事業等との連携の一層強化、各事業の処理区域等の再編、下水道処理区の分散化、老朽化施設の統廃合、汚泥処理等の共同化等を反映させた、地域にとって最も効率的な汚水処理計画を策定する。(都道府県構想の見直し)」
・ 国は、関係省庁が連携し、上記の汚水処理計画を総合的に支援する。
(共通の施策)
・ 計画から維持管理に至るまで…住民等と共に考え、住民等の理解を得ながら事業を進めていくことが不可欠」★「Ⅳ 今後の施策展開に向けて」
・「1.地域における中期構想、行動計画の策定」
「地方公共団体においては、「下水道ビジョン2100」や本提言を踏まえ、地域の将来像の実現に向け、施策展開の方針を検討・提示し、関係者と合意形成を図ることが重要であるため、中期の構想として「下水道中期ビジョン」を策定することとする。」
「整備途上である中小都市においては、将来的な管理経営を見通した上で汚水処理の普及概成に向けた取り組み方針を定めるなど、それぞれの地方公共団体の下水道整備の段階に応じた検討を行うことが重要である。」
・「(1)下水道中期ビジョン」
「地方公共団体は、住民等との対話のもと、下水道の効率的な整備と管理、安定的な経営を図るため、次期社会資本整備重点計画の初年度である平成20 年度から概ね10 年間を計画期間として、地域の将来像実現に向けて取り組むべき下水道政策を明示した、「下水道中期ビジョン」、例えば、「○○市下水道中期ビジョン」を策定することとする。」
◆「効率的な汚水処理施設整備のための都道府県構想策定マニュアル(案)」
★「まえがき」
「近年、人口減少や高齢化の本格化、地域社会構造の変化など、汚水処理施設の整備を取り巻く諸情勢が大きく変化していること、また、市町村合併による行政区域の再編や地方財政が依然として厳しい状況にあることに伴い、汚水処理施設の整備の一層の効率化が急務」とし「都道府県構想のもととなる市町村の汚水処理施設整備の構想についても見直すように3省連名で平成19年9月に通知を発出しております。」と、見直しの指示を明らかにし、そのためマニュアル(案)の改訂をを行ったことを述べている。★「第1章 総 論」
・「1-1 都道府県構想の目的」
この項の【解 説】で「各種汚水処理施設の有する特性等を踏まえ、経済比較を基本としつつ、水質保全効果、汚泥処理方法等の地域特性や地域住民の意向を考慮し効率的かつ適正な整備手法の選定を行うことが必要不可欠である。」とし、「計画段階から人口減少を適切に考慮した整備・管理を進めていくことが不可欠となっている。」としている・
・「1-7 将来フレーム想定年次の設定」では・・
その【解 説】で「人口減少下においては、将来フレームが過大とならないよう、フレームの想定年次についても従来の考え方にとらわれることなく柔軟に設定することが望ましい。」とし、人口推計、0 年後の都市の姿を展望した都市計画、下水道施設の耐用年数( 管渠、躯体等土木施設は50 年、 機械・電気設備は概ね10~30 年)を考慮することを求めている。★「第4章 処理区域の設定」
・「4-4 経済性を基にした集合処理・個別処理の判定」では
「経済性を基に、集合処理が有利か、個別処理が有利かの判定を行う。」と明言。★゛第6章 段階的整備の方針」
「6-1 市町村の整備スケジュール 解説」では
「人口減少下における汚水処理施設整備にあたっては、下水道管きょ等の施設の耐用年数が長期にわたる一方で、将来フレーム想定年次以降の長期的な人口動向は定量的には予測ができないこと等の理由から、整備に当たっては、長期的には施設がフルに活用されなくなるリスクを軽減するための柔軟性を持たせる必要がある。」とし、リスク軽減として「1」長期的にも下水道整備の効率性が担保されることが想定される地域と2」従来通り整備した場合に、長期的には施設の稼働率が低下することにより下水道整備の効率性が十分担保されないおそれのある地域を分けて、段階的整備の方針を定める必要がある。また、後者のような地域については、極小規模のユニット型処理施設や露出配管等の早期かつ機動的な施設による対応を検討し、整備スケジュールを整理する。」と指示している。★「第7章 住民の意向の把握」
「7-1 住民の意向の把握」の【解 説】の項では・…
「施設によって住民負担、住民の義務等も異なることに留意し、本構想の案、または市町村の汚水処理施設整備構想の案について、地域ごとに予定している汚水処理施設の整備手法や整備スケジュール等の情報を提示し、十分、住民の意見を把握して、適切に構想に反映される必要がある。」「構想や計画等事業の早い段階から、適宜適切な情報提供を行い、住民と認識を共有することが重要である。」としている → しかし、高知市では、基準繰出しがとうなっているかなど、基礎的資料も、個別処理との比較の資料もなにもない。
ながなが引用したが、高知市の値上げ案は、これらの方針をまったく無視しているとしか思えない。下水は作り続け、まちづくり計画の投資も見直さず、そのツケは、各種の値上げ住民負担で・・・一連の値上げの理由はそれに尽きる。
少なくとも、国の示した2つの文書にもとづき、どう検討したのか、明らかにできないようでは、行政運営を担う資格はない。
それにしても誰の利益を守りたいのか、と思う。こんな無謀をしてまで「守らなければならない利益」とはなにか。そちらに興味が移る・・・
« 党首討論 雑感 | Main | 高知市住環境を守る連絡会 交流と現地視察 »
「高知市政」カテゴリの記事
- 「よいところは継続」 桑名新市長の当初予算に賛成 日本共産党高知市議団‣声明(2024.03.23)
- キャンセルカルチャー 「大衆的検閲」の行く先(2024.03.13)
- 高知市長選 なせ岡崎市長の支援を決めたか(2023.10.04)
- 2023年3月 高知市議会メモ(2023.05.15)
- 生活保護 冬季加算「特別基準」(通常額の1.3倍) 高知市「抜かっていた」「速やかに実施」 (2022.12.28)
Comments