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日本の「教訓」 「公的資金投入で銀行復活」は本当か

 「日本の金融機関の損失額が少ないのは、政府が公的資金を投入して銀行を復活させたからだ」という話に、立場が違うが同じような問題の指摘をしている論評がある。

 「バブル処理に追われ、国際金融への展開が遅れていたためであり、いわば「怪我の功名」」(山崎・ダイヤモンドオンライン)「90年代の金融危機のために、欧米にくらべて米国型「金融モデル」の採用が遅れたことによるもの」(友寄・赤旗)。
株価下落で露呈した進歩のない日本の銀行経営 山崎元(ダイヤモンドオンライン10/29)
経済時評 米国発の金融危機(4) 金融再生と「日本の経験」赤旗10/28

 そのうえで、山崎氏は、銀行の体質はバブル期とまったく変わってないと言い「根本的な問題は、時価会計ではなく、銀行が株式を持っていることにある。」「銀行は、企業の株式を持つことによる支配力を手放そうとしなかった。それゆえに、現在痛い目にあっているのだが、制度の設計として、銀行業務と株式投資を切り離すことを真剣に考える必要がある」「銀行経営から株価の影響を切り離されなければならないという不良債権処理の教訓が、まったく生かされていない。」と指摘している。
 98年の参院選政策で日本共産党は「「金融ビッグバン」ではなく、金融に民主的ルールを確立する」の中で、「持ち株の含み益に依存した銀行経営をやめさせるため、株保有を禁止します。」と主張しているのと同一の主張である。
これだけにとどまらず、金融ビッグバンを「巨大銀行が証券や保険など、あらゆる金融分野に参入することを「フリー」にし、大もうけの場を提供するものです」と批判し、貸し渋りなどに対する厳しい行政指導、銀行業界の責任による不良債権処理など、一連の政策は、10年たった今でも基本は通用する。

友寄氏は、日本の銀行の経営改善は、「猛烈な人減らし「合理化」、低金利政策による法外な収益、税金の減免という異常な資本蓄積のやり方によるもの」と明らかにしたうえで、「各国の金融機関に求められる視点は、米国発の金融危機の教訓をふまえて金融秩序の再生をはかることです。そのために優先すべきことは、「投資銀行業務の強化」などではなく、深刻化する実体経済の回復のために、中小企業への「貸し渋り」などを即刻やめて、金融機関としての責任をはたすことではないでしょうか。」と銀行としての本来業務への立ち返りを指摘している。

しかし、反省してない政府と銀行の姿が、佐々木憲昭氏の国会質問からよくわかる。
それどころが貸し渋り対策、経営者責任の追及が大きく後退する。
金融機能強化法等の一部改正案に対する質問 10/28
大銀行には大盤振る舞い、中小業者には過酷な徴税 10/24 

【金融機能強化法等の一部改正案に対する質問 10/28】 私は、日本共産党を代表し、金融機能強化法等の一部改正案について質問します。  アメリカ発の金融危機は、世界経済に大きな混乱をもたらし、日本経済に深刻な影響を広げています。  今回の金融危機の背景に、アメリカにおける金融バブルの極端な膨張がありました。  この10年来、金融自由化のもとで、銀行の貸出し債権が売却され、証券化され、他の金融商品と組み合わせた金融派生商品が次々とつくられ、投機的な売買を通じて価格がつり上げられてきました。  グラススティーガル法の「銀行・証券分離の原則」を後退させたことを背景に、巨大複合金融機関が大規模な投機的取り引きに乗り出し、今日、巨額の損失を発生させたのであります。  10月23日に行われた米議会公聴会で、FRB前議長のグリーンスパン氏は、金融派生商品の規制に消極的だったと指摘され、「間違っていた」と認めました。アメリカの金融自由化を手本に「金融立国」を推進してきたのが、日本政府であります。麻生総理、これまでの自由化一辺倒の路線を反省し、根本的に見直すべきではありませんか。お答えいただきたい。  この間、政府は、「対米協調」の名のもとで、日銀とともに異常なゼロ金利政策をすすめてきました。こうしてつくられた日米間の金利差が、円キャリートレードによる大量の投機資金を生み出す土壌となり、投機をいっそう増幅させたのであります。麻生総理は、金融バブルを加速させてきた日本の責任について、どう感じているのでしょうか。  4月のG7では、国際展開する大手金融機関にたいする各国当局の協力による「共同監視」が強調されました。いったい、それはどこにいったのでしょうか。10月のG7では、その姿勢を180度転換し「公的資金の投入」に踏み出しました。バブルに踊った経営者の責任をまともに問わず、なぜ、カジノ経済のツケを国民に回すのでしょうか。

 法案の内容に即しておききします。
 第1は、金融機関への資本注入についてです。法案では、その資金は、預金保険機構が政府保証によって調達し、最終的な損失が出たときは国民が税金で負担するしくみになっています。しかし、金融機関の経営安定のために公的資金が必要というなら、それは最終的に、銀行業界全体の負担で返済すべきではありませんか。
 メガバンクはもちろん、農林中金・信金中金までもサブプライムや不動産関連など投機的な資金運用に傾斜し、多額の損失を出しています。公的資金による資本注入は、損失の穴埋めに使われるだけではありませんか。総理の答弁を求めます。
 第2に、今回の資本注入が貸し渋り対策だと言っていますが、その保証があるのかという問題です。
 従来の法律には、資本注入を申請するさいに提出する「経営強化計画」に「中小企業への貸出し目標」を盛り込むことが義務づけられ、それが「未達成」のばあい、経営責任・株主責任を明確にすることが要件となってきました。
 ところが今回の改正案では、これらの要件は「必要ない」と、外してしまったのはなぜでしょうか。責任も問われないなら、中小企業への貸し出しを、ますます“ないがしろ”にすることになるのではありませんか。
 いま、緊急に求められているのは、銀行の貸出し姿勢をただすことです。この12年間、公的資金による銀行への資本注入は、12兆4000億円も行われてきたにもかかわらず、中小企業への貸出しは、96年3月から今年8月までの間に、実に84兆円以上も減らされてきました。
 全銀協会長は、それを反省するどころか、「貸し渋りをしている意識はない。貸せないところには貸していない」と開き直っているのです。中川財務・金融大臣は、これを正す姿勢を示しておりません。これでは、貸し渋りを容認するようなものではありませんか。
 総理、金融機関は、信用保証協会の保証つきでなければ貸さないのです。この姿勢こそただすべきです。これを放置したまま、政府が信用保証制度に「部分保証」を導入したため、中小業者にとって「命綱」というべき「保証つき融資」すら受けられない事態をまねいています。ただちに「全額保証」に戻すべきではありませんか。
 これまでの政策を見直し、公的金融制度の改善・拡充を行うべきであります。総理の答弁をもとめ、質問を終わります。

【大銀行には大盤振る舞い、中小業者には過酷な徴税10/24】  衆院財務金融委員会が開かれ、私も質問しました。  私は、銀行から中小企業ヘの貸出金が、1996年3月から今年8月までの12年間に約84兆円も減っている事実を明らかにしました。  日本銀行などの発表をもとに、銀行から中小企業への貸し出しが、96年3月時点は約263兆円だったのに、今年8月には179兆円に減っています。  中川昭一財務・金融相もこの事実を認めました。  一方、この12年間に銀行への公的資本は計12兆4000億円も注入されています。国民の血税を投入しながら、中小企業への貸し出しは大幅に減っている実態が浮き彫りになりました。  私は「銀行がまともな役割を果たしていない証拠だ。是正を求めたい」と述べ、さらに大銀行の状況を追及しました。  公的資本注入の結果、銀行はぱく大な利益を上げています。三菱UFJ、みずほ、三井住友の大手銀行3グループの07年度の税引前純利益は約1兆7000億円にのぼっています。  それに対し、法人3税(法人税、住民税、事業税)は313億円にすぎません。税負担率はわずか1・8%です。  私は「大盤振る舞いもはなはだしい。中小企業の実効税率は30%、平均的なサラリーマンの税負担率は20%だ。あまりにも大銀行優遇だ」と告発しました。  私は、政府が銀行の税負担を大判振る舞いで優遇しているのに対し、中小零細企業には厳しい取り立てを行っている実態を暴露し、改善を迫りました。  銀行は、公的資金を注入されながら、中小企業への貸し出しを12年間で84兆円も減らしています。  にもかかわらず、全国銀行協会の杉山清次会長(みずほ銀行頭取)は21日の記者会見で、「貸し渋りをしているという意識はなく、貸せないところには貸していないということだ」などといいました。  私は「驚くべき発言だ。これでは『改善する必要はない』と開き直っているようなものだ。銀行が公的性格を忘れ、自己の利益のみを追求し、中小企業はつぶれても当たり前だという姿勢がみえる。この姿勢は改めさせるべきだ」と力を込めました。  中川昭一財務・金融相は「どういう主旨で言ったのか、後で金融庁にお聞きしたい」と述べるだけでした。 《大企業は優遇 中小企業には苛酷なとりたて》  政府と銀行業界が結託しやりたい放題の一方、中小零細企業は人権を無視した強権的な徴税を受けています。  私は、その実例を紹介し、告発しました。  埼玉県のAさんの場合、税務署員が突然押しかけて、帳簿などをコピーしていきました。その後昨年12月に税務署に呼び出され、税務署員に「1000万円になる税額」と「2000万円になる税額』との2種類の修正申告書を見せられ、「どちらをとるのか」と迫られました。  Aさんは署名を拒否しましたが、今年4月には税務署の別室で3人の税務署員に取り囲まれるという“軟禁状態”におかれ、「早く出たい」という一心で、修正申告にサインしてしまいました。  これは脅迫ではないでしょうか。  二つ目の事例は、山口県で左官業を営んでいたBさん。2004年に病気のため「廃業届」を出しましたが、その後の税務調査で過少申告として更正処分を受けました。納得がいかなかったBさんは06年5月に異議申し立てをし、「納税の猶予申請」を提出しました。  ところが1年後、税務署員が突然自宅を訪れ、病気で引きごもり状態だったBさんに代わり、妻と娘に滞納分を払うよう迫ったのです。結局娘さんが、将来のためにためていた預金を取り崩し、約250万円を振り込みました。  私は「親の滞納分を納税義務のない子どもに振り込ませる。これが税務署のやることか」と追及しました。  岡本国税庁次長は「税務署から滞納者の親族に納付を強要することはない」と述べるだでした。  私は、「これは税務署が、あなたが払うべきだと、法律を知らない娘さんに払わせたのだ。こういうやり方はやめるべきだ」と言いました。  私は、滞納者が財産を差し押さえられることに関連し、国税庁の「滞納整理における留意事項」を読み上げました。そこには、財産の差し押さえを実施する場合、「明確に予告する」と書かれています。  しかし、宮崎税務署作成の「納付計画書兼誓約書」には、「納付計画のとおり納付しなかった場合、又は新たな滞納を発生させた場合には、事前連絡なく差押処分等をされる」と明記されています。  私は「なぜ事前連絡なく強行できるのか。あなた方の方針とも違う。撤回すべきだ。これを書かせるのは脅迫だ。書かないという意思がある納税者は納付計画書を出すだけでいいのか」と聞きました。  岡本次長は「納付誓約書が提出されなくても納付意思や納付計画の確認ができれば分割納付を認めている」と答えました。  最後に「厳しい経営の中でも滞納分を払う意思を示していたにもかかわらず、税務署が売掛金の全額を差し押さえたため、展望をなくして自殺した長崎県のCさんの例を紹介しました。  私は、国税庁の税務運営方針に「納税者の主張に十分耳を傾け…」と書いてあることそ示し、「この立湯に立つべきだ」と求めました。  中川財務相は「納税者の意見に耳を傾けながら、ルールにのっとってきちんとやっていく」と、答えました。
【経済時評 米国発の金融危機(4) 金融再生と「日本の経験」赤旗10/28】  終わりの見えない金融危機のもとで、「日本の金融機関の損失額が少ないのは、政府が公的資金を投入して銀行を復活させたからだ」という“日本の経験”が流布しています。  麻生首相は、金融危機への対応を議論する国際会議では、「日本の公的資金投入の経験を堂々と主張する」などと繰り返しています。  しかし、日本の金融機関の損失額が相対的に少ないのは、九〇年代の金融危機のために、欧米にくらべて米国型「金融モデル」(別項)の採用が遅れたことによるものです。いわば周回遅れの走者だったのに、前を行く走者のトラブルで先頭に立ったようなものです。  いま「日本の経験」について世界に発信するとすれば、「破たんした米国型『金融モデル』の反省に立って、金融にたいする規制を強化し、世界の金融秩序を再生させよう」と、“堂々と主張する”ことでしょう。 日本の大銀行は、どうして「復活」したか  「公的資金の投入で銀行が復活した」という“経験”も、必ずしも正確ではありません。  日本では、九〇年代後半から総額四十六・六兆円(うち資本注入は十二・四兆円)の公的資金が投入されました(注1)。  公的資金の投入と引き換えに、銀行には徹底的な「経営健全化」が強制され、九〇年に十二行あった都市銀行は、今日までに、三菱UFJ、みずほ、三井住友の三大メガ・バンク体制に、ほぼ統合・再編されました。  この統合の過程で、徹底したリストラ・人減らしが強行されました。九〇年に十五万二千二百三十七人だった都市銀行の労働者は、〇六年までに八万五千五百三十一人へ、実に七万人近くが減らされています。その手法は、大銀行が自ら派遣会社を設立し、正規社員を派遣社員に切り替えるやり方でした。こうした銀行「合理化」の強行こそ、その後、派遣労働が製造業にどっと広がる突破口になったのです。  一方、国民にたいしては、銀行の利益を増やすため、異常な低金利政策が長期間継続されました。日銀の試算では、低金利による家計収入へのマイナスの影響は、九一年から〇五年までの累計で三百三十一兆円に達します(注2)。  手数料の負担も増えました。いま十万円(未満)の普通預金で、土曜日の早朝にATMを一回利用すると手数料が二百十円、一年分の利子(二百円)が吹っ飛んでしまいます。  税金も大幅に減免されました。たとえば、みずほ銀行の場合、〇三年度―〇七年度の五年累計で一兆八百七十億円の純利益を計上しています。実効税率を40%とすれば四千億円以上の税額になりますが、毎年わずかに五億円(五年で二十五億円)しか納めていません(注3)。「繰越欠損」という仕組みのため、過去の赤字が繰り越されて課税されないからです。  このように大銀行が「復活」した最大の要因は、「公的資金の投入」による一時的な資本増強というより、猛烈な人減らし「合理化」、低金利政策による法外な収益、税金の減免という異常な資本蓄積のやり方によるものです。 ※  ※  ※  ところで、国民の多大な犠牲によって「復活」した三大メガ・バンク体制は、はたして日本の産業・経済の発展、国民の望む金融システムの形成へむかっているといえるのか。  そうなっていない、と言わざるをえません。金融危機のもとで、いま中小企業への「貸し渋り」「貸しはがし」が急激に増大しつつあることは、それを端的に示しています。  日本の金融機関と金融制度の民主化は、今後、引き続き独自に追求していかなければならない重要な課題です。 世界的な金融再編にのぞむ日本の視点  世界的な金融危機のさなか、英国のフィナンシャル・タイムズ(FT)は、六ページにわたる日本金融の特集を組みました。同紙は、グローバルな金融世界から身を引いていた日本の金融機関が、最近、ふたたび世界へ乗り出しつつあると分析しています(注4)。  FT紙の特集を裏書きするように、証券最大手の野村ホールディングスは、破たんしたリーマン・ブラザーズのアジア太平洋部門、欧州・中東部門を買収しました。三菱UFJは米国モルガン・スタンレーに、みずほは米国メリルリンチに、三井住友は英国バークレイズに、それぞれ大型出資を決めました。  こうした日本の金融機関の動向にたいし、「朝日」(九月二十五日付)は、「世界金融再編―日本勢は好機を生かせ」と題する社説をかかげ、「人材や顧客を取り込めれば、弱みと言われた投資銀行業務で経営を強化できる」、いまがチャンスだと論じました。  世界的な金融再編のもとで、各国の金融機関に求められる視点は、米国発の金融危機の教訓をふまえて金融秩序の再生をはかることです。そのために優先すべきことは、「投資銀行業務の強化」などではなく、深刻化する実体経済の回復のために、中小企業への「貸し渋り」などを即刻やめて、金融機関としての責任をはたすことではないでしょうか。  マスメディアにも、“火事場泥棒”的な視点でなく、「金融秩序の再生」と「実体経済の回復」に寄与する視点を望みたいものです。(友寄英隆)  (「米国発の金融危機」(1)は八日付、(2)は十六日付、(3)は二十一日付)  米国型「金融モデル」 「新自由主義」の金融理論による金融の自由化、規制緩和を前提に、資本市場での投資銀行業務(証券業務)を中心とする金融業のモデル。最先端の金融技術=金融工学による「リスク管理」を駆使し、金利や為替のデリバティブ(金融派生商品)取引、不動産や金融債権の証券化、M&A(企業の買収・合併)などで投機的な利益を追求。預金を集めて企業に融資する商業銀行の金融モデルと対比される。 (注1)「日経」〇八年十月十五日付。 (注2)福井俊彦前日銀総裁の〇七年三月二十二日の参院財政金融委員会での証言。 (注3)みずほ銀行「有価証券報告書」より。 (注4)Japan: Banking, Finance & Investment ”Financial Times” September, 12, 2008.

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