「子どもの貧困」 読売のまっとうな提案
7日の読売が、子どもの貧困とその連鎖について特集をしていた。
子供の貧困…親から続く「負の連鎖」読売
今年、週刊東洋経済が「子ども格差」、週刊ダイヤモンドが「格差世襲」という特集を組むなど子どもの貧困にようやく注目が集まりだした。3日には日弁連が「貧困の連鎖を断つ」決議をあげている。.
そんな中、あの読売が、この問題をとりあげ、きちんと対策を提案したことは興味深い。
対策としてあげている3点は、私たちと主張が一致する。( )内は私のコメント
①政府は実態の解明を早急に(国は、貧困はなくなったと、60年代を最後に調査を放棄している)
②賃金アップなどで所得保障を (派遣など不安定雇用の増加、欧米に比して低い最低賃金)
③福祉と教育の連携で支援を強化(劣等処遇の福祉、異常な教育費負担、予算の少なさ)
なにせ日本は、所得再配分の結果、子どもの貧困率が増加するというとんでもない国なのだ(「OECD対日経済審査報告書」06年 23カ国平均 8.8%減少 米4.9%、加7.5%、独9.0%、英12.9%、仏20.4%減 日本1.4%増加)。生活保護の母子加算の廃止、児童扶養手当の最大5割削減、国保滞納による子どもまで含んだ保険証のとりあげ・・・逆行する施策を「構造改革」の中で進めてきた。(ちなみに、児童手当削減は民主党、保険証取り上げは民主と社民も賛成したことは記憶に留めておく必要がある)
学力世界一のフィンランドの教育相が「教育の無償化と徹底した平等」に取り組む意味を「フィンランドは小さな国だから、すべての子ども能力を伸ばすことをしなければ、国がやっていけなくなる」という国家戦略に位置づけている主旨のことを語っていたのが、印象深い。
「親の因果が子に報い・・・」というのは、何かの口上だけにしてもらいたい。
「子どもの貧困」の克服に正面から向き合うことは、日本の社会、政治、経済の今と未来にとって要となる課題だと思う。
【子供の貧困…親から続く「負の連鎖」 読売】
働く貧困層が社会問題となるなか、「子供の貧困」がクローズアップされている。経済協力開発機構(OECD)のデータによると、日本では、17歳以下の子供の7人に1人が貧困状態にある。貧しい家庭環境が健康や教育
に及ぼす影響はもちろん、親から子に伝わる「負の連鎖」を懸念する声も強い。スタートライン
家の中は散らかり、割れたガラスが床に落ちたまま。2人の弟のために、パンや菓子の万引きを繰り返す。母親は病弱。父親は定職に就かず、酒を飲んで家出ばかり。小学校高学年になって児童養護施設に入るまでは、ほとんど学校に通うこともできなかった――。
民間団体で働く関東地方の20歳代の女性は、「自分はみんなとは違うんだと思った。これは偽の人生だと思い込もうとしていた」と幼少時代を振り返る。
子供が貧困に陥るのは、親が働いていないか、働いていても収入が低いことなどが考えられる。
30年間、福祉事務所で働く自治体職員は、「非正規雇用が増え、不安定な親の生活の影響を受ける子供が増えてきた」と感じている。そうした子供たちは、衛生的な生活環境や、早寝早起きなどの生活習慣を得られず、頼れる親類もいないことが多い。
「そもそも、人生のスタートラインに立てていない」とこの職員は解説する。
戦後の貧しかった時代を経て、高度経済成長を成し遂げた日本では、「貧困」の明確な基準がなく、統計もない。だが、OECDの調査(2000年)によると、日本の子供の貧困率は14・3%と、平均より2・2ポイント高い。10年前と比べ、2・3ポイント増となっている。教育への影響大きく
学歴にも影響生活保護受給世帯の中学生らに勉強を教える徳沢さん。「かけ算や九九のできない子もいる」と話す(東京都江戸川区内で)
もちろん、家庭の成育環境が子供の人生のすべてを決めるわけではないが、様々な調査からは、その影響の強さがうかがえる。
その一つが、学歴との関係だ。大阪市が04年3月にまとめた「大阪市ひとり親家庭等実態調査報告書」によると、希望する子供の最終学歴を「大学」とした割合は、年収600万円以上の世帯では半数以上だったが、同200万円未満の場合は25%を切った。約20年前から有志で、生活保護家庭の子供に無料で勉強を教えている東京都江戸川区の職員、徳沢健さんは、「家の事情や親の学歴を考えて、自ら進学をあきらめる子も多い」と指摘する。
虐待との関連性を指摘する調査もある。厚生労働省が昨年6月にまとめたデータによると、05年に起きた児童虐待による死亡51例のうち、約4割が市町村民税非課税世帯など経済的に困難な家庭の子供だった。
犯罪との関連性を示唆するデータもある。北海道大学の岩田美香准教授(教育福祉)が国の調査結果をもとに、1980年から06年に全国の少年院に入所した子供の家庭状況を調べたところ、その2~3割が貧困家庭だった。
貧困の固定化
健康面への影響も懸念される。横浜市社会保障推進協議会が昨年2月末、市からデータを得たところ、国民健康保険料の滞納により、受診抑制が懸念される世帯の子供は約3700人に上った。「家庭環境で治療を受けられない子供がいる」と、同会では警鐘を鳴らす。
さらに気になるデータがある。06年4月に、大阪府堺市健康福祉局の道中隆理事が、市内の生活保護受給390世帯を無作為抽出して調べた結果、その25%は世帯主が育った家庭もやはり生活保護世帯で、その割合は母子世帯では40%に上った。「『貧困の固定化』がうかがえる。まずはこうした負の連鎖を断ち切り、親子が自立できる政策が必要」と道中理事は強調する。一元的に把握
では、どうしたらいいか。
「国はまず、貧困状態にある子供の実態をきちんと把握すべきだ」と、放送大学の宮本みち子教授(社会学)は訴える。そのためには、医療、福祉、教育、雇用など、関係機関が個別に所有する子供の情報を一元的に把握し、共有できるシステムを作ることが不可欠だと提唱する。
また、最低賃金を引き上げて働く親の所得水準を上げるほか、生活が厳しくなりがちな一人親家庭への支援を充実すること、さらに、子供の授業料の減免措置や奨学金の拡充なども提案する。
一方、国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩・国際関係部第2室長(社会政策)は、「日本では、低所得者向けの現金給付や税制上の控除が不十分な半面、税負担や社会保険料負担が重い。このため、生活保護や児童手当などを受けても、現実には貧困の救済になっていない」と指摘する。
こうした状況をなくすためには、配偶者控除の縮小などで財源を確保したうえで、低所得者に配慮した税制上の見直しや、児童向けの各種手当の拡充などにより、所得保障を強化することが必要だという。欧州 10年前から対策
欧州では、10年以上前から子供の貧困が注目され、対策に力を注いできた。家庭の問題として放置すれば、子供を社会から孤立させるだけでなく、将来の社会コスト増にもつながりかねないためだ。
欧州連合(EU)などの資料によると、英国では1999年、当時のブレア首相が、2020年までに子供の貧困を根絶すると宣言。当時約340万人だった貧困児童を現在では約280万人にまで減らした。最低賃金の引き上げや、低所得の働く親への税制控除を実施。親の所得が低い16~18歳の子供への教育手当も支給している。
ドイツでは、最大27歳まで児童手当を支給。低所得者向けの住宅手当もある。スウェーデンでも、20歳以下の子供に対し、個別に自立プログラムを策定。教育・職業訓練を行っている。
こうした給付には財源が必要だ。児童手当などの家族関係支出の規模を国内総生産(GDP)比(03年)でみると、スウェーデン3.54%、イギリス2.93%、ドイツ2.01%に対し、日本は0.75%にとどまっている。
子供の貧困率
全世帯を所得順に並べ、ちょうど真ん中にあたる世帯が得ている所得の50%未満の所得の世帯に属する17歳以下の子供の割合。[プラスα] 児童扶養手当を支給
子供の貧困は、一人親家庭で目立つといわれる。国は、こうした家庭に対し、「児童扶養手当」を支給している。
手当の対象は、離婚や死別などで父親のいない18歳までの子供を育てている母親や養育者。支給額は受給資格者の所得や子供の数などによって決まる。全額支給の場合、毎月4万1720円。子供が2人の場合は5000円、3人目以降は子供1人につき3000円が加算される。
子供1人で、年収が約130万円未満の家庭の場合、全額の4万1720円が支給される。年収が130万円以上365万円未満では、収入が増えるにつれて手当は少しずつ減り、365万円以上になると支給されない。
厚生労働省によると、児童扶養手当の受給者数は2008年2月現在で約99万9000人。このうち、全額が支給されている人は約59万人。手続きは市区町村の窓口で行っている。3つの提案
・政府は実態の解明を早急に
・賃金アップなどで所得保障を
・福祉と教育の連携で支援を強化
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[土佐のまつりごと]を読ませていただいております。
鋭い視点からの指摘があり、「あー、そうか!」と納得することがあります。
今の日本の社会は余りにも見えにくいところがあります。テレビを始め、マスコミの姿勢にも問題があります。
「金がない。金が足りん」がどこでも浸透しがちですが、この10年で、大企業への法人税が減り、また高額所得者への税率が低くなっていることも大きな問題でしょう。
またご教示ください。
Posted by: 由良 力 | October 17, 2008 12:29 PM