行政で蔓延する「偽装請負」 下水管理、運転業務、学童
派遣労働の解禁によって「請負」との区別が明確になり、見過ごされていた行政の民間委託に広範に「偽装請負」が存在する問題点が浮上してきている。
県で下水道公社が維持管理していた汚泥終末処理場を「包括民間委託」する議案が継続審査となった。
運転管理や小規模修理・点検の業務をするのだが、県の説明文書には「下水道管理業務は他業務と違い公共性、公益性が高い」「従来と同様の業務監視や指導監督が重要」として「委託契約にもとづく指導管理ができる包括的民間委託を選定」と説明している。請負なのに堂々と指導監督することを説明している。
これについて「偽装請負」を指摘したが、「他もやってるから」と県の担当者はまったく何が問題が理解していなかった。「労働局に聞いたのか」と問うたが、それもしてなかった。
その結果、尾﨑知事のもとで、初の継続審査となるという事態となった。
同公社の廃止は、国土交通省の通知をうけて対応だが、その国土交通省も…
9日の朝日には「きしむ学童保育」という特集で「指導員1.5倍 でも町負担は倍増」「『偽装請負』で労働局指導」という特集記事がのっていた。
ここでも偽装請負とその是正の結果、「町教委は現場から遠ざかり、指導員と学校の先生の間にも壁ができた。町教委の職員は現場からの電話にも出なくなった」とのこで、 母親の「たまにしか来ない社員が、町の子どものことを把握できるはずがない。責任の所在があいまいで、とても不安」の声を紹介している。
日本の公務員数は極度にすくない。05年、野村総合研究所が調査結果を発表している。
偽装請負:国土交通省の公用車「職員が運転手に指示」 毎日
国土交通省発注の公用車運転業務について、一部の出先機関の職員が受注業者の運転手に直接仕事の指示をしていることが毎日新聞の調べで分かった。大手業者の運転手は「仕事内容から勤務時間まで、職員からすべての指示を受けている。業務委託を装った偽装請負だ」と証言。専門家も労働者派遣法で禁じる偽装請負の疑いが強いと指摘する。国交省OBが天下りした業者間の談合疑惑に加え、公用車運転業務を巡る新たな疑惑が浮上した。国道事務所など国交省の出先機関は、業務委託という形で車両運行管理請負会社と契約を結んでいる。こうした業務委託や業務請負では、従業員への管理責任の所在を明確化させるため、委託業者は発注先から独立して業務を行わなければならない。運転手に直接指示を出して管理する場合は、派遣契約を結んで運転手を受け入れるよう労働者派遣法で定められている。
毎日新聞が入手した委託契約書によると、送迎先や拘束時間など仕事の指示は、業者の車両管理責任者を通じて出すよう決められている。職員は運転手に直接指示できない。
しかし、業界大手の「日本総合サービス」(東京都品川区)社員で、西日本の出先機関で10年以上の勤務経験がある運転手は「車両管理責任者から一度も指示を受けたことがない」と証言する。
この運転手によると、公用車利用の日程表が幹部席の近くに張られていて、運転手は幹部職員から直接指示、命令を受けている。事実上、派遣契約すべき社員と同じ扱いだ。用地交渉などで仕事が長引き残業する際にも、車両管理責任者からの残業命令はない。このため運転手は後日、時間外勤務命令書を自分で作成し、責任者から命令があったように装っているのが実態だ。
関東地方で車両管理責任者の経験がある「日本道路興運」(新宿区)の元社員も「出先機関から仕事の指示を受けて運転手に指示を伝えたことは一度もなかった」と証言する。
労派法に詳しい井上耕史弁護士は「業務委託契約で、国交省が業務の内容や時間外勤務などの指示を運転手に直接出すのは、偽装請負で違法だ」と問題視する。
国交省会計課は「車両管理責任者から適切に指示が伝えられていないのであれば、問題であり是正すべきだ」と話している。
◇解説 背景に天下り問題
国土交通省の公用車運転業務は、公正取引委員会が談合疑惑で立ち入り検査に入る事態に発展し、特定の大手業者だけが優遇される天下りの弊害が浮き彫りになった。だがこの問題は、偽装請負とも密接な関係にある。
国交省の出先機関が請負を偽装すれば、直接指示できる運転手を長期間確保できるメリットがある。職員の指示で運転手が働く場合は本来、労働者派遣法に基づき、出先機関は業者と派遣契約を結んで運転手を受け入れる必要があるが、派遣契約では期限が最長で3年間と定められており、慣れた運転手を抱え続けられない。天下り先の大手業者にとっても、偽装請負なら、多数の運転手にその都度、細かな指示を出す手間が省ける。
「日本総合サービス」など車両運行管理請負大手3社は06年度、全国の総発注額約167億円のうち、8割を超える139億円分を受注し、計55人(同年度)の天下りを受け入れていた。指名競争入札で競争性が阻害され、天下り先に利益が流れてきた経緯と併せ、背景には国交省と天下り先の利害関係が透けて見える。
7日の衆院予算委員会で麻生太郎首相は、民間企業の偽装請負について「確認された場合、労働者の雇用が失われることがないよう、派遣先と派遣元の双方に必要な措置をとることは当然」と発言しており、今後の対応が注目される。
【「民」委託の兵庫・猪名川町 きしむ学童保育 朝日10/9】 ◇指導員1.5倍 でも町負担は倍増 ◇「偽装請負」で労働局指導 請負会社の神戸市内にある事務所の営業社員が指導員たちの「上司」になった。しかし、現場には月に一度顔を出すかどうか。携帯電話にかけてもつながらないことが多い。連絡がついても、神戸市からだと1時間以上かかる。「子どもに何かあった時、どこに頼ればいいのか」。指導員たちは不安を募らせた。 一方、町教委は当初、請負契約の法的知識が不十分だったこともあり、直接の雇用関係がとぎれても、事務手続きから防犯対策など様々な面で現場に指示をしてきた。 「これって最近問題の偽装帯負?」一部の指導員たちが、法律的な問題点を追及し、現状の改善を目指すこととった。町外の労組の勉強会に参加し、インターネットで法律を調べた。今年3月には労働組合を結成。現在、26人が加入している。 組合が問題点を指摘すると町教委は現場から遠ざかり、指導員と学校の先生の間にも「壁」ができたという。「町教委の職員は現場からの電話にも出なくなった」というほどだ。 その間、利用者の増加や受け入れ時間延長もあり指導員の負担は増えていった。「学校の長期休暇には朝7時から12時間勤務。休憩時間も休みも思うようにとれない」と指導員は憤った。委託の理由だった要員確保業務も不十分で、指導員自らが探さざるを得ないこともあった。 組合は専門家の助言も受けて8月、「違法な偽装請負になっている」と、兵庫労働局に申告した。「偽装請負」を認めた同労働局からの是正指導を受け、同数委は今月8日、学校と指導員が連絡を取れるように契約内容を改めることなどを盛り込んだ「是正報告」を提出。同労働局が現在、内容を確認している。しかし、ある指導員は「子どもの健全育成のためには、連絡程度ではなく、町教委や学校との綿密な連携が不可欠。根本的な解決には外部委託をやめるしかない」と話している。 保護者たちも今月3、4日、組合から一連の事情の説明を受けた。それまで町教委が詳しく説明してこなかったこともあり、その場で不満の声が相次いだ。ある母親は「たまにしか来ない社員が、町の子どものことを把握できるはずがない。責任の所在があいまいで、とても不安」と指導員たちを支持。保護者たちは町教委に話し合いを申し入れている。 ■ 口 ■ この会社は、主に車の運行や管理を自治体や企業から受託している。近年、保育サービスの請負にも力を入れているが、広島県北部や栃木県南部の公立保育所でも、同じように「偽装請負」が指摘され、ともに自治体から契約を解除された。猪名川町の学童保育運営について同社は、歴代担当者に保育のノウハウが乏しかったことを認め、「町教委と協議 しながら改善すべき点を検討中」としている。 全国学童保育連絡協議会によると、全国にある約1万7500カ所の学童保育のうち、市町村の直営が4割以上で、社会福祉協議会や保護者会への委託、私立保育園による運営などが続く。民間委託は極めてまれだ。しかし、今後の増加も予想され、同協議会の真田祐事務局次長は「ノウハウの乏しい企業に任せないよう、委託先は慎重に選ぶべきで、保育の質が保てなければ委託はやめるべきだ」と替告。猪名川町の事例について、「指導員の時給が下がったうえ、人員増など業務拡大の割合以上にコストが増えるのは理解しがたい。町民からすればお金の無駄遣いだ」と疑問視している。
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