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政財界の保育改革は「保育崩壊」 

 政府は、年内に「公的保育の解体」をめざし、社会保障審議会の少子化対策特別部会で、関係団体の圧倒的な反対の声、国会決議・議論も無視し強引にすすめている。そんな中、規制改革会議が10月24日「第3次答申に向けた規制改革会議の重点分野と課題」を発表し、保育について直接契約と選択制、基準の緩和で公的制度を解体し、営利企業のもうけの対象する内容を改めて主張した。ただしこの重点分野から「労働」がなくなったのはたたかいの成果。
 保育制度改変のモデルは介護保険だが、利用料の負担で満足なサービスが受けられない、特養の膨大な待機者がいる、劣悪な労働環境で人手不足、虐待問題の発生・・・「介護崩壊」という状況を見れば、どうなるかは十分予想できる。介護事業では、グッドウィルのような粗悪な業者も生まれた。

 政府、財界の「理由」は、「多様化する保育ニーズに認可保育所が応じきれていない面もあるのではないか」(10/21 厚生労働省・保育事業者検討会 座長)という「多様化するニーズ」に応えるというものだが、それは経済力と家庭環境のある子どものことで、人権保障の観点ではない。
また、多くは、先進国で最低の子育て支援予算を充実すれば解決する問題だ。

以下、この間の各団体の声明、国会審議など備忘録としてまとめておきたい。

◆9月 厚労省・少子化対策委 意見陳述
この中で、すべての関係団体が「国の責任で築いてきた公的な保育制度の基盤を崩し、後退させる」「保育の質を確保するために最低基準は崩してはならない」「保育は単なる託児ではなく、子どもの育成は公的性格のもの」と断固反対を表明している。

全国学童保育連絡協議会の意見陳述全国保育協議会の意見陳述
全国市立保育園連盟の意見陳述

◆ 08.06.24 現行保育制度堅持・拡充求める請願署名 衆参両院で採択!

現行保育制度の堅持・拡充と保育・学童保育・子育て支援予算の大幅増額を求める請願書
<請願項目>
1.児童福祉法24条に基づき国と自治体の責任による保育制度を堅持・拡充してください。
①保育の公的責任を後退させる保育所への直接入所方式の導入はやめてください。
②保育所の「最低基準」は廃止・切り下げをするのではなく、抜本的に改善してください。
③保育に要する費用は国と自治体が責任をもって負担し、いっそうの拡充をはかってください。
2.子どものための予算を増やしてください。
①保育所、幼稚園、学童保育の保育条件を改善するための予算を大幅に増やしてください。
②保育所、幼稚園、認定こども園において子育て支援の機能が果たせるよう、専用室や専用職員の配置の ための予算措置をしてください。
③保育所の待機児童解消のために特別な予算措置をしてください。
3.仕事と子育ての両立ができるよう、労働時間短縮など働き方の見直しをしてください。次世代育成支援・少子化対策は、必要な予算措置をし、子育てにかかる経済的負担の軽減をはかってください。

◆08年6月 全国保育協議会(全国の認可保育所の93%が加盟)緊急提言を発表

「地方分権改革推進委員会「第1次勧告」に対する緊急提言」
http://www.zenhokyo.gr.jp/pdf/080530teigen.pdf
地方分権改革推進委員会は五月二十八日の第1次勧告で「地域ごとの実情や個性の違いを考慮せず、国が全国画一的に定める基準を一律に当てはめることは、地域活性化の障害となる危険性がある」とし、国の児童福祉施設最低基準等の地方自治体への移譲を求めた。
これについて、全国二万千か所会員を有する全国保育協議会は、全国二百万人以上の子どもと子育て家庭に対応している保育現場を崩し、格差を広げ、後退させるとの危機をもって、第1次勧告に対し緊急に提言する。

一、子どもの育ちの保障は、「未来への投資」である
子どもはわが国の財産であり、発達の保障は「未来への投資」である。「子どもと家族を応援する日本」重点戦略による「次世代育成の新たな制度体系の設計」の実現は、長期的にはわが国の社会経済を発展させるものである。これを最優先とし、国は財政投入の意思決定を行うべきである。

ニ、地域の保育所インフラを活かし、子どもを豊かに育てる
子どもはおとなや社会のなかで育つ、その育ちの権利の保障は国の責任である。保育サービスの第一義的な利用者は子どもである。地域に密着する保育所インフラを活かし、適切に保育サービスを利用させるためには、市町村が役割を果たしていく仕組を引き続き堅持されたい。

三、児童福祉施設最低基準は、国の責任として定めるべきである
保育所は子どもの最善の利益を保障する児童福祉施設である。その最低基準は、国がその理念を実現するために、全国の保育所が一定の保育水準を確保するよう定め、もって地方の職員配置等の基準の下支えとなっている。児童福祉施設最低基準を地方自治体に移譲することは反対である。

四、「地域ごとの実情や個性の違い」は国の最低基準に積み上げるものである
勧告にある「地域ごとの実情や個性の違い」は、国の最低基準の基盤の上に積み上げるものでなければならない。とくに昭和二十三年の最低基準は、子どもの発達過程と保育の機能面から科学的・実証的に調査・検証し、保育の質の向上に資する基準のあり方を確立させるべきである。また勧告が副題とする「生活者の視点に立つ『地方政府』の確立」には「安かろう悪かろう」とせず、国の責任のもとに保育の「質」を向上するための制度的仕組みが不可欠である。さらに、保育サービスの量と質の整備には、地方自治体の財政状況等に配慮する政策が不可欠である。

五、福祉施設の認可等に関する事務の市への権限移譲は不適当である
市の財政規模や体制等、実態に照らし、慎重に議論すべきである。

六、認定こども園は子どもの最善の利益を保障する視点で判断すべきである
認定こども園の課題は、利用する子どもの発達と最善の利益のもとに実践内容の検証がなされていないことである。児童福祉施設の保育所の特性は、家庭と連携し生活をとおして養護と教育を一体的に提供することにあり、幼稚園とは基本的に機能の違いがある。子どもを主体として検証をするべきである。

七、市場原理による「直接契約方式」導入には反対する
保育ニーズは増えており、需給バランスがとれていない現状では、セーフティネットとして第一義に「保育に欠ける」子どもを排除してはならない。今後の「保育に欠ける」要件の見直しや「直接契約方式」の導入の是非の検討については、「市場原理の導入ありき」との議論ではなく、客観的に問題を明らかにし、総合的に検討すべきである。

社会福祉法人全国社会福祉協議会  平成20年6月11日 全国保育協議会 会長小川益丸

◆08年3月28日 全国私立保育園連盟(約六千八百の私立認可園が加盟)アピール発表
「最低基準を廃止し、自治体ごとの条例による独自基準に切り換えることに反対」とのアピールを発表しました

◆また、国会の質疑でも・・・
「市場原理がそのままあてはまる世界ではない」「公的性格、政府が責任をもつべき」厚生労働大臣

日本共産党 高橋ちづ子質問 衆議院・厚生労働委員会 08年5月23日
○高橋委員 
 ・・・ハンディキャップのある家庭だけを残して、あとは直接契約でいいじゃないかというような声も聞かれます。しかし、それは本当の一部ではなくて多くの方たちである、困難を抱えた家庭がたくさんある。その防波堤となっている公的保育の役割は非常に大きいし、守るべきだと思いますが、大臣の考えを伺います。

○舛添国務大臣 保育についても多様なニーズが出てきています。そういう多様なニーズにもこたえないといけませんが、相手は子供であって、市場経済原則がそのまま当てはまるような世界ではないと思います。こういう保育に関するサービスというものは、やはりセーフティーネットの一環でございますので、きちんと公的性格、中央、地方を問わず政府が責任を持ってやるべきだ、こういうふうに考えております。

・保育ママについては・・・
○高橋委員 私は、むしろ、過疎地などに保育ママを見つけることの方が難しいと思います。離島や山村の話ではなくて、都市の中で保育所の統廃合が進んでいます。〇五年から〇六年で保育所は、公立保育所が二百四十二カ所減少し、その分、民間保育所が三百七十一カ所ふえております。
 今、三兆円の保育市場という言葉がございます。この民間企業の保育所と保育ママが一体となって、つまり連携保育所である、スーパーバイザーである、そういうことをやっていけば、二つ保育所をつくるよりは安上がりだ、定員オーバーは保育ママで補う、そういうことも理論上可能になりますね。

○大谷政府参考人 ・・・最初に申しましたように、保育ママという制度は、いわゆる保育所を基本として、補完として位置づける。それを前提に、今後その普及を見きわめていくということになろうかと思います。

○高橋委員 否定をしなかったと思います。
 ・・・・問題は、やはり今回の理由はそれとはなじまないのではないか、同一に並べるべきではないと思うんです。市町村が行う保育所整備の努力が家庭的保育に置きかえられるということはあるべきではないと思いますが、いかがですか。

○大谷政府参考人 置きかえられるべきというふうに私どもも考えておらないわけでありまして、まずは現在の保育所のやり方というものを基本にしますけれども、いろいろなニーズの多様化とかあるいは弾力化ということで、こういったものも補完として推移していくものというふうに考えております。
 現行の保育制度を堅持していくことについては、私ども、そういう信念でおります。

… 現行の保育制度がやはり所得に応じて定めているわけでありますから、保育ママと契約あるいは委託をする際においても、そういったことに準拠してするのが通常の形になるだろうというふうに思われます。
 また、その責任、事故等の関係でありますけれども… 保育ママと市の契約の形によりますけれども、その形によって損害賠償等の補償体制についても、あわせてこれは各市で準備した上で取り組んでいただくことになるというふうに考えております。

○高橋委員 あくまでも市町村が責任を持つという立場での今のお答えだったと思います。
 私は、保育ママイコール否定をしているわけではありませんので、むしろ頑張ってきた人たちをしっかり評価をして、安易に、無資格でもいいとか、そういう導入をすべきではないというふうに考えています。


 
【規制改革会議 保育分野・具体的項目】
○直接契約・直接補助方式の導入
・地方公共団体独自の制度を参考に、利用者自らが保育所に直接申し込み、契約を結ぶ直接契約方式を導入。
・施設へ機関補助されている公的補助を、保育の必要度に応じて、バウチャー等で子育て世帯に配分する直接補助方式に転換。
○保育所の入所基準に係る見直し
・「保育に欠ける」要件の見直し
○地域の実情に応じた施設の設置の促進
・保育所の最低基準の見直し
・東京都の認証保育所等、一定の質が保たれている地方公共団体独自の取組を国の制度として位置づけ、直接契約方式の下、柔軟な設置基準により運営するとともに、一定の補助・支援を実施。
○「認定こども園」制度の見直し
・補助金の一本化により、地域子育て支援への適切な補助や、新たな追加機能に対する一定の補助を行うなど早期に運用を改善。
・運用改善による普及促進を図りつつ、真の幼保一元化に向け、制度を見直し。
4
○ 競争条件のイコールフッティングによる株式会社等の参入促進
2001 年の児童福祉法改正で株式会社等の参入が可能となったが、現状では、以下の制約要因あり。
・施設整備費補助の対象とならないため、初期投資費用が手当てされない。
・社会福祉法人会計基準による財務諸表の作成が求められる(介護等では求めていない)。
・運営費の使途範囲に制約(配当への充当が認められていない。原則、当該保育所の運営費用に充当することが求められ、複数展開する株式会社等がその経験を生かした新規の保育所開設を行うことが難しい等)。
○家庭的保育(保育ママ)の拡充
・地方公共団体の取組を参考に保育ママ要件を緩和するとともに、「保育に欠ける」要件の撤廃により対象児童を拡大。

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