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「夢見たいな商売」と金融恐慌の悪夢

 日経bisplusの対談がおもしろい。くだけた議論だけに証券投資、金融資本主義の本質がよくわかる。
焼鳥屋で語る金融恐慌 アングロサクソンのモデルに賞味期限は来たか?

・・・プロのディーラーの業績は、リターンでしか比較されない。しかも、投資するのは自分の金じゃない。だったら、0.001%の差だって、それはもうリスクを取りに行くよね。との話があり、つづけて

倉都「自分の金じゃないし、元手を貸してと言ったら、実績さえあればすぐ貸してくれるし、それでうまくいけば自分にもどーんとお金が入ってくるし、これはもうやめられないエンドレスのゲームです。」
Y 「やめられないでしょうね。」
倉都「麻薬みたいなものです。」
Y 「人の金でばくちをするんだったら、すごくリスクのあるところに賭けますよね。」
倉都「それで失敗して会社が倒産しても、今まで儲けた金を返せ、とは言われないしね。」
Y 「夢みたいな商売ですね、考えてみると。」

対談では、そのあと・・・ アングロサクソンモデルはだめだ、と倉都氏

倉都 こっちも別に素人じゃないですから、20年、30年やってきているわけですから、その感覚でやっぱりおかしいというものが本当におかしかったんだなと。
 その感覚で無責任に言っちゃうと、一番初めにおっしゃいましたけれども、アングロサクソンのモデルはもうだめなのかどうか。特に金融においてですけれども、たぶん、だめですね。
Y おおっ、爆弾発言ですね(笑)。
倉都 しばらくだめですね。しばらくという言い方がいいか分からないですけれども、僕はシティーとニューヨークの地盤はかなり低下すると思います。
 これは収益力が落ちるという意味でもあるし、金融のアクティビティーが落ちるという意味でもあるし、金融史的にいうと、この2大国際金融都市の地位は、大きく変わるという直感がしますね。変化して、元には戻らない。無責任でいいということで申し上げますが、元に戻ることを期待してモルガン・スタンレーに出資した人たちは、ちょっと厳しい時代を迎えるんじゃないですか。
 
倉都康行(くらつ・やすゆき)氏
東京銀行入行。国際資本市場業務に携わった後、97年よりチュースマンハッタンのマネージングディレクターを務める。現在、RPテック代表取締役、フィスコ取締役などを兼務。日本金融学会会員。最新刊は『投資銀行バブルの終焉 サブプライム問題のメカニズム』(日経BP社)が話題の著となっている。

 しかし、公的資金投入も株価は安定せず、むしろ今後の危機の拡大を指摘する声が多い。
米国の住宅価格は06年のピーク時から2割程度しか下がっておらず、00年の水準には、あと3割ほど下がる必要があり、金融危機は途上にあること。金融危機と実態経済の悪化にともない、取引残高が62兆ドルに達してるCDS損失が今後拡大していく問題。金融恐慌の悪夢である。

息潜める「危機の黒幕」 米深刻…CDS損失リスク10/17 フジサンケイ
リーマンのCDS清算、地域金融機関に数千億円の損失発生も10/16 ロイター
金融危機】欧米の公的資金注入も世界同時不況の恐怖 10/16 産経世界金融危機の沈静化=耳順 10/17 毎日
株暴落とまらないには理由がある どこまで膨らむ「CDS」の損失規模 J-CASTニュース

「人の金で、リスクの高い博打をし、どーんと儲け、失敗して会社が倒産しても、今まで儲けた金を返せと言われない、夢のような商売」を「金融立国だ」「金融ビッグバンだ」と推進してきた責任は大きい。

たとえば
 98年 金融システム改革法(証券業、取引所の規制緩和など金融ビッグバン推進の中核法)
 99年 商法の一部改定(株式交換の解禁。企業買収の手段)
 を 自民、公明、民主、社民の賛成で成立している。

【息潜める「危機の黒幕」 米深刻…CDS損失リスク フジサンケイ ビジネスアイ】 10月17日  米証券大手リーマン・ブラザーズが経営破綻(はたん)して1カ月が経過したが、世界的な連鎖株安が続くなど金融市場の激震が収まらない。欧米では金融危機克服の“切り札”とされる公的資金による金融機関への資本注入に踏み切る動きが出始めたが、先行き不安はなお根強い。特に、金融市場を一段の混乱に陥らせかねないとして、市場関係者を脅かしているのが企業倒産時の債務不履行リスクを取引するCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)だ。CDSは損失リスクを回避すると同時に、多額の収益を生む投機的な金融商品として市場は大きく膨張したが、リーマン破綻以降、世界中に損失を飛散させる“火薬庫”になる懸念が強まっている。

 「CDSは取引所ではなく、金融機関同士の相対で取引されるため、各金融機関にどれだけ損失が発生しているのか、にわかには見えない」。みずほ証券の野村朗クレジットアナリストは、CDSがはらむ損失リスクの闇に危機感を募らせる。
 CDSは、融資先や社債の発行体である企業が倒産して債権が焦げ付く可能性に備えた保険商品のような金融商品だ。CDSの買い手は、売り手に保証料を払う代わりに、企業の倒産時には売り手から回収不能となった債権の元本の補填(ほてん)を受ける。企業が倒産する可能性が高いほど、保証料率(スプレッド)も高くなる仕組みだ。

 ◆取引残高54兆ドル
 金融機関が債務不履行による損失リスクを回避するため、利用を始めたが、次第に破綻懸念のある企業を見つけ出し、高い保証料の獲得を狙う「ハイリスク・ハイリターン」の金融商品として取引が拡大。6月末の取引残高は54兆ドル(約5400兆円)に達し、世界のGDP(48兆ドル)や株式時価総額(49兆ドル)を上回る。
 そのCDSのリスクが表面化したのが9月15日の“リーマンショック”だ。リーマンを対象企業とするCDSのスプレッドは破綻直前に3%から7%に跳ね上がったが、リーマン破綻以降、連鎖破綻懸念が広がり、欧米の金融機関のスプレッドは軒並み急上昇した。スプレッドの拡大は破綻リスクの上昇を意味し、金融機関の信用力の低下を招く。その結果、金融機関は資金調達がしにくくなり、資金繰り難で破綻を余儀なくされる懸念がさらに高まるという悪循環に陥っている。

 ◆損失総額70億ドル
 リーマン破綻に伴い、国内外の金融機関へCDSによる多額の損失が波及する可能性も大きくなっている。リーマン関連のCDS元本は4000億ドルとされその大部分をCDSの売り手が補填する必要があるからだ。金融機関の損失はCDSの買いによる収益と相殺しても世界で計70億ドル以上との見方も出ている。
 このほか、米政府系住宅金融大手の連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)を対象にするCDSの清算も決まり、破綻した米貯蓄金融機関(S&L)最大手のワシントン・ミューチュアルが対象のCDSも近く清算手続きに入る見込みで、金融機関がリーマンと同様の損失を被る恐れが強まっている。
 CDSの売り手は主に保険会社やヘッジファンドで、CDSの損失リスクが顕在化すれば、これらの金融機関が痛手を負う可能性は大きい。ただ、CDSは証券化商品に組み入れられており、損失がどこに飛び火するか分からないのが実情だ。企業の破綻を賭けて、マネーゲームに興じてきた金融機関がつけを払わされる恐れが強まっている。(本田誠)
                   ◇

□債権への保険、投機的/取引、米英で7割 「CDS」とは
 CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は、企業が倒産などで融資返済や社債の償還が不可能(債務不履行=デフォルト)となった場合に備え、債権者に万が一の際の元本支払いを保証するデリバティブ(金融派生商品)だ。いわば債権への保険のような性格を持っている。金融工学と呼ばれる高度な手法の発達に伴い、2000年ごろから市場で急速に拡大した。
 債権者はCDSの売り手に対し、対象となる債務(融資、社債など)について契約期間中の保証料を支払い、期間中に債務不履行が起きれば元本を保証してもらう権利を買う。実際に債務者が倒産すれば、CDSの売り手は元本を支払う代わりに債権を引き継ぐ。その際、支払った元本と、債権の清算による回収額との差が損失となる。
 CDSの売り手は、証券会社や投資銀行、保険会社、ヘッジファンドなど多額の資金を運用する機関投資家。主に保証料収入を目当てに取引を行っている。買い手は、債権の信用リスクを抑制したい銀行やヘッジファンドが多い。
 保証料率は、債務者の倒産リスクが高いほど上昇する。現在は取引所がなく、ブローカーを通じて相対で取引されているが、その相場は英金融調査会社マークイット・グループが調査し、指標として示している。金融大国である米国での取引が世界シェアの4割程度、英国も3割以上を占め、他国を引き離している。
 CDSは債務保証に似た仕組みだが、債権者ではない第三者も買い手になれる点などが特徴で、投機的な性格を持つ。証券化商品に対するCDSや、CDSを組み込んだ投資商品も取引されており、こうしたケースでは債務不履行による損失の把握が困難になっている。

【株暴落とまらないには理由がある どこまで膨らむ「CDS」の損失規模 10月18日 J-CASTニュース】

 デリバティブの手法を使ったクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)と呼ばれる取引の実態が注目されている。例えば、経営破たんしたリーマン・ブラザーズを対象とするCDSだけで推計4000億ドル(40兆円)にのぼる。この商品を売った金融機関はほぼ全額を失うことになる。金融危機をきっかけに景気が悪くなれば、CDSによる損失の全体額も膨らみ、それがさらなる不安を招き、株暴落の背景にもなっている。

■リーマンの40兆円、ほぼ全額失うことに
 CDSは、企業が債務不履行に陥った場合、投資銀行などが債務を肩代わりする、いわば「保証」契約。たとえば、08年10月から2013年10月までの5年間に、ある企業が取引先であるAメーカーの倒産リスクを回避したいとする。Aメーカーが倒産した場合、CDSの売り手である金融機関は買い手である企業に1億円(想定元本)を払う。ただし、企業の方は金融機関に毎年、保証料として50万円を支払う、と約束する。
 1年後、メーカーが倒産しなければ、企業は金融機関に50万円を支払う。2年後も倒産しなければ、もう50万円支払う。こうして契約期間中に倒産しなければ、企業は金融機関に総額250万円を支払うことになる。
 しかし、契約期間中にメーカーが倒産した場合は、金融機関が企業に1億円を支払わなくてはならない。
 デリバティブを取り扱う事業者の業界団体である国際スワップ・デリバティブス協会(ISDA)は2008年10月10日、経営破たんした米証券大手のリーマン・ブラザーズを対象にしたCDSの清算価値(リカバリー)が、元本の8.625%に決まった、と発表した。
 破たん後に暴落したリーマンの社債の価値などに連動する形で決まったとされ、これにより想定元本(保証金額)の推計4000億ドル(40兆円)のうち、リーマンを「保証」したCDSの売り手金融機関は、リーマンの経営破たんで想定元本の91.375%を支払い、損失を被る。一方、CDSを買った金融機関や企業はその分もうかるわけだ。

■「日本の金融機関はそんなにやっていないはず」
 CDSには規制がなく、想定元本(保証金額)が引き受けた金融機関の自己資本の数十倍以上になることもある。そういった取引が金融機関同士、あるいは金融機関と事業会社のあいだでサインひとつ、「相対取引」で行われているため、どの金融機関が、どの企業を「保証」して、どれほどの想定元本があるのか、つまり実態は不明だ。
 さらにはサブプライムのように、証券会社がこうしたデリバティブ取引を複数束ねて、別の金融商品として販売しているケースがあって、リーマン関連債券がどの程度組み込まれているかなど、購入している金融機関側ですら、すぐにはわからないこともあるという。
 リーマンを対象としたCDSばかりに目が行くが、CDS市場はここ数年拡大の一途をたどり、07年末時点で62兆1732億ドルに上る。この中には連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)を対象としたCDSのほか、経営破たんした米貯蓄金融機関のワシントン・ミューチュアルを対象としたCDSなどが含まれていて、その清算が間近に迫っている。
 CDSの売り手には、バンク・オブ・アメリカやシティグループ、バークレイズにBNPパリバ、クレディスイスなどの世界の名立たる金融機関が並ぶ。今となっては、なにかあれば公的資金で救済される金融機関ばかりだが、「一般的なCDSの契約は倒産以外にも、大規模なリストラなども含まれているはず。実体経済の後退で企業倒産や大リストラが増えれば、契約は履行されて損失は膨らむ」(外資系証券の関係者)との観測もある。
 リーマン級の企業が破たんするのは10年に一度ともいわれるが、世界的な金融危機にあってはそんなデータもまったく当てにできない。ただ、国際金融アナリストの枝川二郎氏は「欧米はCDSに積極的だったが、邦銀はそうでもない。メガバンクなどの一部の大手銀行にあるくらいではないか」とみていて、国内金融機関の痛みが少ないのが救いかもしれない。

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■P.F.ドラッカーの『ネクスト・ソサエティー』―ポスト金融危機を生き抜く知恵
こんにちは。私のブログでは、金融危機後「健全な社会」を作り出すことが、健全な実体経済を取り戻す最短の道であることを訴えてきました。しかし、多くの人の頭の中「経済・金融」というキーワードで埋め尽くされ、「社会」など何も関係のないことと思っているかのようです。そんなことはありません。私のブログではドラッカーの「ネクスト・ソサエティー」について取り上げてみました。この中でドラッカー氏は、すでに先進諸国の「社会」はそれまでの社会とは全く違う「異質な社会」に突入していることを強調しています。一方ではあまり関係ないように見える、ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏のここ数年の辛らつな「ブッシュ批判」は、形こそ違え結局は「健全な社会」を作くるどころか、壊してきたことに対する批判だったと思います。結局は、クルーグマン氏も「健全な社会」を作りだすべきことを主張していたのだと思います。もう「金融・経済」だけでは、何もかもが八方塞になってしまいます。いまこそ、異質な社会に対応するためのインフラ革新と、システム革新が必要不可欠です。詳細は是非私のブログをご覧になってください。

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