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この国の行方 不破哲三氏インタビュー 毎日新聞

 高知の総合版ではでていないが、毎日新聞に、不破哲三氏のインタビューがでている。

特集ワイド:この国はどこへ行こうとしているのか 共産党前議長・不破哲三さん 毎日
 小見出しは・・・
 <蟹工船の時代に>
 ◇社会のルール少なすぎる
 ◇「国際競争力」の言葉に惑わされ財界の言うなり
  
 今の「国際競争力のため」と戦前の「お国のために」とを比較し「納得してはいけない」とてしいるのはおもしろい。  

特集ワイド:この国はどこへ行こうとしているのか 共産党前議長・不破哲三さん  <蟹工船の時代に>

 ◇社会のルール少なすぎる
 ◇「国際競争力」の言葉に惑わされ財界の言うなり
 「蟹工船」ブームで共産党に熱視線が送られているという。40歳で党書記局長に就任、「共産党のプリンス」と言われ、論客としても名高い前議長の不破哲三さん(78)はどうみているのか。東京・代々木の党本部を訪ねた。

 「今の若い人たちが蟹工船を読んで、実感をもって受け止めるというのは、日本の社会のとんでもない一面を表していると思うんですよ」

 グレーのスーツに身を包み、さっそうと応接室に現れた不破さんは、滑らかに話し始めた。

 「私も若いころに読みましたよ。戦後すぐですから、食べ物がなくて、生活は恐らく蟹工船のころより大変だったんじゃないかな。それでも民主主義のもと、選挙権や女性の権利、労働者の権利などが確立されて、戦争中の暗い時代から抜け出して、意気を持っていた。蟹工船を読んでも昔はひどかったなあという感想でしたよ。それから60年以上たった日本で、若者たちに、自分たちのことと受け止められているというのは、日本がとんでもないところに落ち込んでいるということです。まさに『この国はどこへ行こうとしているのか』ですよ」

 日本のこのおかしさを感じたきっかけは毎日新聞の記事だった。「90年ごろかな。メキシコ特派員の記事で、確か見出しは『豊かな日本、なぜこんなに貧しいのか』。日本の特集をしたテレビ番組を現地の記者仲間と見ていたら、最初は豊かな日本をうらやましがっていた現地記者が、通勤ラッシュや狭い日本の家などが出てくるにつれ『人間の生活じゃない』と言い出し、評判がガタ落ちしたという話でした。当時のメキシコは決して経済水準は高くなかった。そのメキシコから見ても、日本の暮らしぶりは人間のものではないと言われる。これではいけないと強く感じました」

 同じころ読んだ盛田昭夫ソニー会長(当時)の論文にも考えさせられたという。

 「労働時間が長い、賃金の分配が安すぎる、株主との関係も良くない、地域社会への貢献を考えない、環境保護も省資源問題にも無関心だ……と列挙して、これでは世界の企業と対等に付き合っていけない。だが1社で正そうとしてもつぶれるだけだから、社会でルールをつくってくれという趣旨の痛烈な文章でした。盛田さんが言ったことは、マルクスが言ったことと同じなんです。社会が強制力を持たなければできないこともある。日本は大事なところで、ルールが少なすぎます。私は日本の資本主義はルールなき資本主義と位置づけているんです」

 「ルールなき資本主義」が320万人を超える派遣労働者を生み出した元凶だという。

 「派遣労働のひどさは、政治と大企業がつくり出したものです。今の政治は規制緩和という言葉が好きですよね。規制がない方が、企業が自由に経済活動ができて大もうけができるだろうと、戦後何十年も守ってきたルールを変えた結果、10年足らずで今の状況になったんです」

 *

 熱く語る姿に10年前の出来事を思い出した。

 98年7月、埼玉県のJR大宮駅前だった。当時、党委員長だった不破さんは、参院選候補の応援にやって来た。集まった聴衆の熱気に押されたかのように、不破さんは予定を30分もオーバーし熱い演説をした。次の演説会場へ向かうため車に乗り込もうとした時、女性から声援が飛んだ。「不破さ~ん」。不破さんはかがめた背筋をスッと伸ばし、右手をパッと挙げそれに応えた。堂々たる態度。「大物は違う」。駆け出しだった私が感じた瞬間だった。

 「そうですか。10年前ね……。じゃあ古なじみなんだ」

 その98年の参院選で共産党は800万票(比例代表)を得て、過去最多の15議席を獲得。惨敗した自民・橋本龍太郎首相は退陣した。消費税上げ、金融破綻(はたん)、景気低迷……深刻化する社会不安に対し、解決策を打ち出してくれない政権に国民はそっぽを向いたのだ。何だか今の状況と似ていないだろうか。

 軽くうなずきながら、不破さんは言葉を継いだ。

 「確かによく似た状況です。ひとつ違うのは、自民党が持たなくなっているということです。10年前の自民党は、本気で政権を失う危機なんて感じていなかった。『自民党をぶっ壊す』人が出て、一度は盛り返しましたしね。それが今は、首相が1年で政権を放り出すという前代未聞のことが2度も繰り返された。その後の総裁選を見ても、実に軽いじゃないですか。自民党の今日はどれぐらい続くか分からないけれど、明日はない」

 国会の論戦から退いて5年だが、政治の話には力がこもる。

 「今の政治は『国際競争力』って言われると、財界にものが言えないんです。蟹工船の時代は、ひどい労働はすべて『大日本帝国のため』と正当化された。今はその代わりが国際競争力です。国際競争力が落ちると言われれば、どんなことも我慢しなければならない。財政が大変だから増税しようとなると、一番負担能力を持っている大企業は初めから頭の外に置いて、取りやすい消費税増税だとなる。ワンパターンの議論なんです。国民も国際競争力という言葉で納得してはいけない」

 *

 16歳で共産党に入党したが、意外にも、小学生のころは作家志望だったという。吉川英治さんに小説を見てもらったことも。「『20歳になってまだ書く気があったらまた来てくれ』って。でも20歳になったら作家希望は消えちゃった」
 理由を問うと、なるほど、の答えが返ってきた。「共産党の活動が忙しくて、作家どころじゃなかったんですよ。共産党に入ってからの62年は、なかなか波瀾(はらん)万丈でしたよ。それでも、日本と世界の現在と未来に貢献しようと思ったらこの道しかないというのが今の気持ちです。それは最後まで大事にしたいですね」
 柔らかな笑顔につられ、思わず「枯れ専ってご存じですか」と聞いたら、きょとんとされた。「何それ?」。「枯れた男性を好きな女性のこと」と説明はしたが、さすがに「プリンス」に向かって「すてきな枯れオヤジですよ」とは言えなかった。【小松やしほ】

■人物略歴
◇ふわ・てつぞう
 1930年、東京都生まれ。日本共産党前中央委員会議長。元衆院議員。党書記局長、委員長など歴任。03年に11期務めた衆院議員を引退。現在は常任幹部会委員、社会科学研究所所長。近著に「小林多喜二 時代への挑戦」。著書は140冊を超える。
毎日新聞 2008年10月3日 東京夕刊

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