災害対策の本筋は… 高知の自衛隊増強
来年、高知の香南市に自衛隊普通科連隊が駐屯する。その理由の1つが災害対策だ。
確かに、自衛隊の役割の中に、「災害対策」も入っており、四国の14連隊の増強(2000人→2800人)の説明にも、そのことが強調されている。しかし、一方で、市町村が運営する「消防」は、日常的に火事、救急、災害救助、防火点検など対応する地域の安心・安全の拠点であるにも関わらず、国の地方財政の切り捨てにより、体制の後退を余儀なくされている。
災害対策というなら、本筋である消防の体制、装備の面を抜本的に強化する方向に切り替えるべきではないか…
◆予算規模と体制を比べてみよう。
・自衛隊 防衛費は4.8兆円 隊員総数25万、陸上自衛隊だけで15.2万人、海上自衛隊4.5万人 航空自衛隊 4.7万人などである。
一方消防は、全国で約2兆円(消防白書 16年度 市町村1兆8400億円、都道府県990億円、18年度 消防庁140億円。消防は、住民の生命に直接責任を負う、国や県の都合で行動を左右されないという考えから、市町村が実施主体となっている。)
職員数 現員数 155,016 人。それは定数205,136 人の75.6 %(03年4月1日)である。
特に、消防車両等に搭乗する職員数(ポンプ車・はしご車・化学車・救助工作車・救急車等)の定員充足率は65.9%。(定員数 131,008 人 現員数86,304 人)。
はしご自動車、化学消防車、救助工作車も定数に対し実数は83~85%と不足している。
・高知にくる第50普通科連隊は700人。
一方、県全体で職員数1109人で定数1986人に対し56.5%の充足率しかない(06年4月)。これで火事、救急など年間48245件の出動をしている。日に132件。
防災ヘリは四国各県一機しかない。しかも直営は高知のみ(他の3件は運行は民間委託)。
・高知県の消防費の推移
01年 143億4208万円
02年 136億9751万円
03年 139億0234万円
04年 131億3266万円
05年 122億2151万円
… 05年では、車両購入、庁舎整備に使われる普通建設事業費の比率は7%で、9億円弱にまで減っている。90式戦車1台分しかない。
また災害対策と言えば、土佐清水市、大川村では豪雨災害の中で地域のコミュニティが力を発揮し、高齢者、障害者などの災害弱者に声をかけ、避難を助け、奇跡的と言われる死者ゼロを記録した。
人が住み続ける地域をつくることは、災害対策の巨大な力だ。山の荒廃対策・・林業の振興も重要だ。その点でも地域切り捨ての政策は、災害対策の土台をくずしている。
◆強化される四国の自衛隊の配置
14旅団/06年3月27日創立。四国全域を担当してきた第2混成団(約2千人)を新たに即応近代化旅団「第14旅団」(約2千8百人)に改編、部隊数を6から11にし、四国4県すべてに配置。善通寺にある第15普通科連隊に加えて「第50普通科連隊」を新設し増強。多様な脅威に対処するとして対空ミサイル部隊の高射特科中隊、戦車中隊を新設、将来的には飛行隊も設置する予定。
【14旅団の構成部隊と配置場所】
香川 旅団司令部・付隊、15普通科連隊、偵察隊、通信中隊、後方支援隊、音楽隊
高知 50普通科連隊(21年度に高知に移動予定)、
愛媛 特科隊、高射特科中隊
徳島 施設中隊(09年度、阿南市に移駐)/第14飛行隊(海自・徳島航空基地(松茂町)に09年度までに併設
岡山 戦車中隊(日本原)
………… 自衛隊にはイラクやアフガンなどアメリカの先制攻撃戦略と共同する日米軍事一体化という本質的に危険で、かつムダな巨費を使っている問題がある。政府の防衛大綱でも「わが国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下」と言わざるを得ない事態の中で、「増強」の「根拠」を捜しているのである。
それを地方切り捨てで、まともな消防体制もできないように追い込みながら「災害対策」を口実に増強をはかる。酷い話だ。
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