役所支える「非正規」 予算上はモノ扱い
高知市が「経費削減」のために給食調理の民間委託をしようとしているが、2年間で3300万円以内を応募の基準としている。一年1650万円。この中には、利益、本部管理費、消費税など約300万円が含まれるので人件費は1350くらい… これで4から7人の正規、パートを雇うのであるから、官製ワーキングプアを生むことは確実だ。
同時に、役所には「非正規」という官製ワーキングプアが多数存在する。
非正規職員の賃金、民間への委託費は、予算上は「物件費」とモノ扱いになっている。専門性の蓄積にとっても大きな問題だ。
「働けど:’08蟹工船/番外編 役所支える『非正規』」9/9 毎日新聞
「消費生活相談員 待遇改善置き去り」 8/20 神戸新聞
【働けど:’08蟹工船/番外編 役所支える『非正規』 毎日9/9】 自治体の財政難などに伴い職員数の削減が進むなか、非正規職員が増え、いまや職員全体の5割を超す自治体も現れている。しかし、正規職員(公務員)とほぼ同じ仕事をしながら、半年や1年など短期の契約を何度も繰り返し、年収は200万円に満たないケースも少なくない。「安定」が売り物の役所を、条件の厳しい非常勤職員が支える実態を見た。 ◇予算上は物品費扱い、待遇厳しく 大阪府南部の自治体で図書司書として働く女性(39)は勤続7年。2年前にパートから非常勤になり時給910円から月額報酬制になったが、社会保険料などを引かれると手取りは月13万円。年金暮らしの父親と2人で暮らす。「1人で生活できる額ではない」という。 勤務先の図書館では、非常勤職員は週に働く時間数が正規職員の4分の3という以外、仕事内容はほとんど変わらない。1年契約だが、仕事がなくならない限り雇い止めはしないといわれている。それでも将来への不安は尽きない。そもそも非常勤は予算の項目上、人件費ではなく物品費扱い。「大学を卒業して司書資格を取ったのに、非常勤の月額報酬の根拠は高卒初任給の4分の3。専門性も経験も認められていない」と話す。 日本図書館協会によると、公立図書館の司書・司書補のうち非正規は約6割に上る。 * 埼玉県内の消費生活センターで20年以上働く女性相談員(63)は県内2カ所のセンターで週2日と週3日、掛け持ちでそれぞれ1日5~6時間働く。 司書と同じ1年契約の非常勤職員。1自治体で週30時間に満たない勤務のため、社会保険への加入もない。手取りは17万~18万円。以前は往復1000円の交通費も自腹だったが、同じ相談員で労働組合を作り自治体側と交渉するなかで交通費支給や年休、残業手当などを勝ち取った。 こうした非正規の自治体職員は80年代後半から増加。総務省の調べでは、全職員約304万人のうち、非正規は約15%に当たる約46万人(06年調査、週20時間・6カ月以上)。自治体の外郭団体職員などを含めると100万人程度とみられる。 大阪自治労連の調査では、職員数の多い大阪府と大阪市を除いた職員全体に占める非正規の割合は07年調査で32%。5割超も2市町あった。女性が多く8割以上とみられる。 公務員の定数が増やせないなか、住民のニーズが高い窓口業務など一般事務のほか、保育、学童保育、図書司書、消費生活相談員、看護師など住民サービスの最前線で非正規職員が目立っている。 こうした自治体の非正規職員について、吉田耕三・人事院職員福祉局長(当時)は昨年4月の衆院総務委員会で「継続的雇用を前提として考えられていないのが現在の仕組み」と指摘。実態として長期雇用していても、あくまでも臨時・緊急的な雇用として扱われるため、育児休業は認められず、ボーナスや退職金などもない。一方、労働者の保護強化を目的に今年4月に施行された改正パート労働法も適用外となっている。 また、財政難に伴う業務の民営化で非正規職員の雇用が危うくなるケースも出ている。 大阪府門真市で7カ所の市立保育園で正規(約80人)と非正規(約120人)が同じ職場で働いてきた。非正規は時間を区切った「パート」(約50人)と、フルタイムで働き正規職員とともに担任につく「アルバイト」(約70人)に分かれる。 アルバイトは年齢、勤続年数にかかわらず給与は日給一律8100円で、月の手取りは13万~14万円。アルバイトに育児休業はない。正規職員は妊娠がわかった時点で時短勤務もあるが、アルバイトは出産前にやめざるを得ない場合もある。雇用は半年ごとに更新され、通算15年働くアルバイトもいる。 市は来年度から7施設中4施設を民営化する。この4施設で来年度以降も働く場合、運営を引き継ぐ社会福祉法人の採用試験を受ける必要があるという。 ◇一方的解雇に違法性指摘する判決も 自治体の非正規職員をめぐっては変化の兆しも出ている。 昨年11月、東京都中野区が区立保育園の非常勤保育士28人全員を一方的に解雇したのは違法だとして元保育士4人が区に損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁は注目すべき判決を下した。解雇は容認したものの、「解雇権の乱用といえるほど違法性が強い」「実質が変わらないのに民間の雇用契約より非常勤公務員が不利になるのは不合理。実情に即した法整備が必要」との判断を示したのだ。 これを受け、国は地方公務員の短時間勤務の在り方に関する研究会を発足させ、法改正も視野に年内に結論を出すことにしている。また今年6月、人事院は非常勤職員の給与について、通勤手当や経験給・ボーナスの支給などに努めるようガイドラインを示した。非正規の自治体職員の待遇改善につながるとの期待がある一方、厳格な有期雇用(3~5年)や外部委託が進む可能性も指摘されている。
【消費生活相談員 待遇改善置き去り 神戸新聞8/20】 消費者庁創設に向け、国と地方自治体で消費者行政が一元化される中、実働部門というべき各地の消費生活センターの相談員の待遇問題が置き去りになっている。複雑化する悪質商法への対応などで専門性が求められる半面、相談員の多くは非正規雇用。問題解決のノウハウの継承に支障が出るとの不安は解消されないままだ。(文化生活部・吉本晃司) トラブルにあった住民に適切な助言をしたり、解決に向け仲介したりする相談員。内閣府によると全国で約三千五百人(二〇〇七年)で兵庫県内では約百九十人がいる。 全国消費生活相談員協会(全相協、東京)によると、消費生活センターが一九七〇年代に整備されたのに伴い、相談員も順次配置。ベテラン主婦が暮らしの知恵を伝えていたという。 様変わりしたのは八〇年代。豊田商事事件に象徴される悪質商法が社会問題化してから、法律知識などの専門性が求められるようになった。 半面、大半が非正規雇用で、全相協の〇八年調査では約九割が年収二百五十万円未満で「労働条件は旧態依然のままだ」と指摘する。 兵庫県内では、但馬地域の三市二町をカバーする相談員はわずか三人で全員が非正規雇用だ。 県立但馬生活科学センター(豊岡市)では〇七年度、二人の相談員が年間で千八百件の相談に対応した。内容把握に時間がかかり、交渉が長期化しやすい多重債務はうち五百件もあった。 「ほかの相談に対応できず、かえって被害が拡大しないか心配」と相談員の義本みどりさん(41)は嘆く。 相談員の足かせとなっているのが、採用時に雇用期間を限る「雇い止め」という契約だ。「相談員は五年、十年と働いて一人前」ともいわれる中、多くが経験を積んだ時点で、職場を離れざるをえない。「経験が十分に生かせない」といった声が出ている。 義本さんも専門知識を学ぶため、月二回、大阪での勉強会に自費で参加しているが、二〇一一年度末に契約が切れる。「研さんを重ねてもいずれ仕事ができなくなることを考えるとむなしい」と話す。 〇二年には、明石市の相談員が、組合を結成して雇い止めを撤回させた。しかし、姫路市では今年、延長を求めた交渉が実らなかった。三月末に相談員の仕事を打ち切られた女性(60)は「相談員が次々入れ替わると経験が継承されず、業者と交渉する『あっせん』も減る。弁護士につなぐだけでは、市民サービスの後退ではないか」と指摘する。 兵庫県職員として二十年間消費者行政に携わった明治学院大学の圓山茂夫准教授(消費者法)は「正規職員として雇用し、十-二十人が働く広域拠点をつくれば、高度な相談にも対応でき、待遇も改善できる。国が消費者行政を再編する中、自治体も従来の組織を見直すべき」と指摘している。
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