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大企業等への課税強化で富の再分配を 日本農業新聞

15日の日本農業新聞の「論点」に慶應義塾大学 金子勝教授が「世界の経済危機 農業・地域を立て直せ」と一文を載せている。
その中で「日本が今、優先すべきことは以下の3点だ。第1は社会保障と雇用の再建。現在のグローバル同時不況が長引けば、社会は持ちこたえられない。第2に環境エネルギー革命だ。原油・原材料高を克服し、新しいエネルギー転換に伴う産業の構造転換で雇用をつくり出すことが必要だ。第3に農村と地域の再生だ。食料がなければ国民は死んでしまう。自給率を上げ、地域レベルで持ちこたえられる経済の構築を優先しなければいけない。」と述べ「これらのためには、大企業と高所得者への課税を強め、富の再分配を進めることが欠かせない。」と述べている。
 こうした主張が「日本農業新聞」の一面に載っているところが興味深い。

 また、アメリカの金融危機との関係で、外貨準備高1位の中国と3位のロシアで、米政府系住宅金融公社の社債保有高は5000億㌦近くもあり、両国がこれを一斉に売れば、米国の金融システムは崩壊する、と指摘している。
 ドルが大暴落し、アメリカ経済は破綻する。最大の「帝国主義国」は中国とロシアに命綱を握られているのに等しい。(そんなことしたら、当然、外貨準備の目減り、最大の輸出先の崩壊など中国、ロシアも大きな打撃をうけるが)アメリカの双子の赤字を支えてきたのが従順な同盟者・日本から、中国などに変わったこと世界の構図は大きく変わろうとしている。
 「グローバルスタンダード」というバブルの後にきた現状は、「資本主義の限界」を強く意識させる。
 ちなみに金子氏の新著「閉塞経済」は、マルクス主義の未来社会論について、あえて青写真を書かなかった意義をとらえずに「原理主義」ととらえる一面的なところはあるが、「経済成長に必要なインフラ投資は教育投資」「セーフティネットがないと市場はまわらない」「結果の平等を保障することが機会の平等を保障する」「最低限(の生活)が保障され、互い(の人生)に優劣をつけられないから平等」「複数の価値のあるほうがリスクに強いむなど共感でき、なかなか面白い内容だった。
         

【「世界の経済危機 農業・地域を立て直せ」 金子勝 日本農業新聞9/15】
グローバリゼーションの逆転が始まっている。原油価格の高騰で、運搬費が高くなり、国境を越えて食料など低付加価値のものを移動させるメリットがなくなりつつある。資源と食料をめぐり国家原理がぶつかり合う時代になった。世界全体が共存できる経済の枠組みが求められている。
 米国の金融危機を発端に始まった景気後退は止まる気配がない。同国では、低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)から中所得者向けローンに破たんが向かっている。商業用不動産の下落、消費者ローンの焦げ付き、自動車大手3社も経営破たんに近い状況だ。
 英国、アイルランド、ノルウェー、スペインの住宅バブルの崩壊で、欧州もマイナス成長に入った。フランス、ドイツの景気減速も明確になっている。
★大恐慌の恐れも
 世界は良くて石油ショック、一つ間違えると1930年代のような大恐慌になってしまう危険性もある。かつて、米国の財政と貿易の「双子の赤字」を支えたのは日本だった。だが、今は中国が支えている。中国は外貨準備高が1兆80
00億㌦と世界第1位だ。このうち国債を中心に米証券が9250億㌦に上る。この中国と外貨準備高3位のロシアを含めれば、米政府系住宅金融公社(ファニーメイとフレディマック)の社債保有高は5000億㌦近くもある。両国がこれを一斉に売れば、米国の金融システムは崩壊する。
 ロシアは世界第二の産油国で、天然ガスの埋蔵量も莫大(ばくだい)だ。これを背景にグルジア問題で強気に出て、米国と対立している。その米国に、経済が落ち込み支持率が下がって英国のブラウン首相、フランスのサルコジ大統領らがくっついている。経済戦争を裏にはらんだ一触即発の状態だ。米国も欧州連合(EU)も資源ナショナリズムに動き出し、極めて危険な状況にある。
 世界の危機が深まる一方で、日本では福田康夫首相までも政権を放り出し、あきれ果てた状況だ。国民の目は、自民党の政権担当能力のなさや、小泉、安倍、福田、そして麻生と世襲議員ばかりという点に集まっている。しかも、「世界が今どういう危機にあるのか」という現状認識について、どの政治家も語れないのが実情だ。
 政権奪取を狙う民主党からも、世界の危機認識とそれを踏まえた政策は見えてこない。自民党が瓦解に近いから「政権交代しかない」と繰り返すだけだ。何のために政権をとるのかを、率直に指し示すことが必要だ。
 日本が今、優先すべきことは以下の3点だ。
第1は社会保障と雇用の再建。現在のグローバル同時不況が長引けば、社会は持ちこたえられない。第2に環境エ
ネルギー革命だ。原油・原材料高を克服し、新しいエネルギー転換に伴う産業の構造転換で雇用をつくり出すことが必要だ 
★食料自給高めよ
 第3に農村と地域の再生だ。食料がなければ国民は死んでしまう。自給率を上げ、地域レベルで持ちこたえられる経済の構築を優先しなければいけない。
 これらのためには、大企業と高所得者への課税を強め、富の再分配を進めることが欠かせない。さらに、食料・農業政策は、原油や食品の価格を抑えるという単なるばらまきではなく、農業を活性化させ、地域が生きていけるようにするものであるべきだ。

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