救急医療の向上には療養病床の強化を 病院調査より
日本慢性期医療協会が全国の救急病院を対象に実施したアンケート調査結果で、療養病床との連携強化の必要を全病院が「感じている」と回答するなど、救急医療を守るためには療養病床の整備が必要なことが浮き彫りになった。削減・再編計画の中止が必要だ。
「急性期病院と療養病床との連携に関するアンケート 集計結果」
療養病床との連携強化、全病院が「必要」 医療介護CBニュース
調査では、8割近くが昨年度中に救急患者の受け入れを断っており、その理由として
「医師、看護師の不足」34.5%、「空きベッドがない」32.7%、「療養病床との連携不足27.3% が上位三位。 退院先が確保できないために入院延長することがあると答えた病院が87.1%あり、療養病床との連携強化の必要を全病院が「感じている」と回答している。
アンケートは最後に「今回の3次救急病院を対象とした調査結果からは、救急医療はもはや押し寄せる患者に対応しきれず、高齢者疾患のノウハウをもって当らなければならない患者については療養病床に委ねたい、という意識が読み取れよう。救急医療の現場の悲鳴が聞こえてくるような回答に、療養病床としても真摯に応え協調していかなければならないと考える。」と結んでいる。
高知の医療センターでも退院(転移)の手続きに時間がかかるようになってきているとのこと。6月県議会で、療養病床が5千減ることが救急医療に与える影響について問いただしたが、一般論でしか答えず、具体的な検証をしたという感じはうけなかった。きちんとした調査と検討、そして説明責任が必要だ。
【急性期病院と療養病床との連携に関するアンケート 集計結果】 日本慢性期医療協会 平成20年9月18日 人は誰でもいつかは病気になる。そして、残念ながらすべての人が急性期治療のみで自宅に退院できるとは限らない。重度の後遺症や数多くの難治性の合併症を併発し、更なる治療のため、慢性期医療を受けなければならない場合も少なくない。これらの患者をいつまでも急性期病院で治療すれば、医療費は莫大となり、急性期病院の平均在院日数はとてつもなく長くなる。 高齢化はその割合を激増させているし、医療の進捗は昔なら死亡したりした病状も救命し得ることとなったこともむしろ、慢性期医療が必要な患者を増やしている。そして、これらの患者は増えることはあっても決して減少することはない。気管切開や人工呼吸、経管栄養や中心静脈栄養などの重度の患者が医師や看護師の少ない施設で治療することを望む国民は少ないであろう。 また、短期間の急性期治療では、十分回復しない高齢者の治療を引き継ぐ機能を慢性期病床が発揮することにより、救命・救急センターなどの急性期の治療の継承を行なうことで救急難民を救い、医療連携を円滑化することによる医療費の適正化効果は大きいものがある。 救急・救命・急性期病院も後方病床として、安心して急性期治療の継承を任せることのできる病床として療養病床に大きな実績と期待を持っていることが明らかとなった。[調査結果の概要]
調査対象:三次救急指定 全国202病院(回答数74病院)
実施時期:平成20年8月
1.病床種別と機能について
総病床数のうち、救急病床が4.2%、一般病床が86.9%を占める。急性期にほぼ特化していることがわかる。
特徴としては、特定機能病院24.3%、地域医療支援病院25.7%、DPC 適用の一般病院54.1%であった(複数回答)。
2.入退院の状況について
一般病床の平均在院日数は15.3日。救急外来患者のうち75歳以上の占める割合は15.7%。しかし、入院した患者をみれば75歳以上が30.8%を占め、外来に比べ入院では高齢者の率が2倍になっている。
退院先が確保できないために入院延長することがあると答えた病院が87.1%。救急の受け入れを断らざるをえないことがあったと答えた病院は76.7%。受け入れを断った1月1病院当たりの平均患者数は56.2人。
救急患者の受け入れを断る理由として、「職員体制が不十分」「空きベッドがない」「後送病院との連携が不十分」ということが挙げられている。
以上の入退院の状況をみると、平均在院日数は約2週間という期間であるが、退院先の確保ができれば、入院日数を短縮でき、新たな救急患者を受け入れることができる可能性が高いことがわかる。また、入院患者の3人に1人はいわゆる後期高齢者であり、救急医療、一般急性期医療からそのまま在宅復帰が難しい場合が多いことも推測される。後方病院として、回復期リハも含めた療養病床での受け入れがスムーズに行われていないことが伺える。3.療養病床との連携について
救急病床の患者を直接「他院の療養病床」に移したことのある病院は59.7%、一般病床から直接「他院の療養病床」に移したことのある病院は97.1%であった。
療養病床との連携の必要性は100%の病院が感じており、連携システムに積極的に参加したいと答えた病院が83.3%であった。
救急外来患者のうち、療養病床での治療が可能であると考える疾患は、「保存的治療の腰椎圧迫骨折」「終末期を迎え介護施設から搬送されてきた患者」「脱水」「尿路感染症」「誤嚥性肺炎」など、高齢者に多い疾患は療養病床の適応と考え、救急外来に搬送された高齢患者を療養病床に入院委託することを「できる範囲で積極的に行うべき」と答えた病
院が71.4%を占めた。
介護保険施設や在宅の要介護認定者に急性期医療が必要になった場合、その一部を療養病床が担うことについて、「できる範囲で積極的に行うべき」と答えた病院が80.6%であった。
療養病床に求める3次救急の支援的機能として、上位にあげられたものは、「速やかな転院の仕組み」「急性期・療養病床相互の正確な病院機能・医療情報の伝達」「療養病床の医療技術の向上」などであった。以上の療養病床との連携に関する回答によると、現在でもほとんどの3次救急病院で療養病床へ患者の移送が行われているが、さらに強い連携システムを求めていることがわかる。
今回の3次救急病院を対象とした調査結果からは、救急医療はもはや押し寄せる患者に対応しきれず、高齢者疾患のノウハウをもって当らなければならない患者については療養病床に委ねたい、という意識が読み取れよう。救急医療の現場の悲鳴が聞こえてくるような回答に、療養病床としても真摯に応え協調していかなければならないと考える。
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