政管健保 10月より「協会けんぽ」へ
10月より政府管掌健康保険(政管健保)が廃止され、新たに都道府県単位で運営する「協会けんぽ」が発足する。以前に「政管健保の公法人化 高知は保険料アップ」で書いたが、都後期高齢者医療制度ど同じく、都道府県毎の医療費の多寡が保険料に反映し、多すぎる場合は診療報酬そのものを低くする措置か可能というもので、都道府県や企業を国の医療費削減の下請けとするものである。 しかし、後期高齢者医療制度の時と同じく、ほとんど知らされてない。
新制度「協会けんぽ」のもたらすもの…政管健保廃止で都道府県支部に移行 保険医団体連合会
また、厚生労働省がこのほど発表した全国医療費適正計画の最終案は、平均在院日数を06年の32.2日から4年後の12年には2.4日短縮し29.8日にする目標値を初めて明らかにした(厚生政策情報センター)。
「在院日数を減らすことで医療費抑制につなげたい考え」というが、今、問題となっている療養病床の廃止が「在院日数」の削減から出てきたことを制度設計にかかわった元財務省の村上氏が語っている。同氏は「国民滅びて健全財政残る、になりかねない」と語っている。
介護、看護のための離職者が4割も増え過去最高となっている。
社会保障費抑制が地域の医療や生産を支える体制の崩壊をすすめている。根本的転換が必要である。
【新制度「協会けんぽ」のもたらすもの…政管健保廃止で都道府県支部に移行】 2006年に成立した「医療制度改革関連法」によって、2008年10月より政府管掌健康保険(政管健保)が廃止され、新たな保険者である全国健康保険協会が運営する健康保険(略称:協会けんぽ)が発足する。一方で、今年度に入り、収支の悪化を理由に健保組合を解散して政管健保に移行するケースが発生している。都道府県単位に分けて財政運営を行う全国健康保険協会の問題点を探った。 ★全国一本の制度から都道府県単位に分割 政管健保は約3600万人が加入し、国(社会保険庁)が保険者として運営しているが、今年10月1日以降は、国と切り離した保険者として「全国健康保険協会」が運営する。47都道府県に支部を設置し、支部単位の財政運営を行う。 保険料徴収や被保険者等についての情報提供については、新設の「ねんきん事業機構」が行う。 現在、社会保険庁が保有する全国の社会保険病院(53カ所)と厚生年金病院(10カ所)は、医療施設を譲渡・売却するための組織である年金・健康保険福祉施設整理機構(略称:PFO)に移管する方向で準備が進んでいる。 全国健康保険協会は、厚生J働大臣が任命した運営委員(事業主3人、被保険者3人、学識経験者3人の計9人)による運営委員会が、予算、事業計画、保険料(率)を決定する。事実上、保険者となる都道府県支部では、支部長が委嘱する評議員による評議会が置かれる。 ★厚労省試算でも 保険料格差は深刻 全国健康保険協会の保険料は、現在の政管健保の保険料(保険料率8・2%)が適用されるが、協会成立後1年以内に、地域の医療費を反映した保険料が設定されることになっている。したがって、2009年10月から全国一律の保険料は廃止され、都道府県ごとの保険料となる予定だ。 都道府県支部は、単年度の収支が均衡するよう保険料を設定して財政運営を行う。保険料率の上下限は、健康保険組合と同様とし、3%~10%の範囲で設定する。 ただし、支部が決めた保険料について、厚生労働省が「収支の均衡を図る上で不適当」と認めた場合は、「協会けんぽ」に対して、支部の保険料を変更するよう求めることができる。さらに、保険料の変更の求めに応じないときは、厚生労働省の社会保障審議会の議決を経た上で、厚生労働大臣が職権で保険料を変更することも可能である。 都道府県ごとの保険料への移行に当たり、保険料が大幅に上昇する場合には、5年間に限り、激変緩和措置が講じられることになっているが、激変緩和措置が終了したときには、都道府県間の保険料の格差は著しいものとなることが予測される。事業所と従業員の数が多く、給与水準が高い地域と、そうでない地域の格差がいっそう深刻になるものとみられる。 厚生労働省が2003年度の政管健保の医療費実績で、都道府県ごとの保険料を機械的に試算したところ、最も低い長野県は保険料率が7・6%(つまり、長野県の医療費が全国で最も低い)で、最も高い北海道の8・7%とは、1・1ポイントの差が生じた。 ★都道府県別診療報酬が可能に―地域医療に大きな混乱 厚生労働省は、都道府県ごとの保険料では、年齢構成が高い県は、医療費が高くなり、保険料も高くなることから、都道府県ごとに差異がある年齢構成、所得水準については、都道府県の間で財政調整を行うことにしている。 一方で、都道府県ごとに差異がある医療費については、地域間の差異をストレートに保険料に反映するとしている。保険者を事実上、都道府県ごとに細分化し、医療費を点検・削減するねらいである。 「平成20年度全国健康保険協会 事業計画び予算(検討のための素材)」では、「医療費の適正化の推進」を課題に挙げ、「2011年4月からのレセプトの原則オンライン化を見据えた点検体制の検討を進める」としている。「被保険者1人当たり点検効果額(6カ月) ・内容点検:439円以上 ・外傷点検:218円以上」という削減目標を掲げている。 医療費を削減し、保険料の上昇を抑える切り札として考えられるのが、県内の医療機関に支払う診療報酬の削減である。例えば、その県だけは診療報酬単価を1点10円から何円に削減する、半年以上入院している後期高齢者の診療報酬を何割カットするなどの特例措置によって医療費(ひいては保険料)が削減できる仕組みになっている。 第1期の都道府県「医療費適正化計画」が終了した翌年の2013年度以降に、都道府県を実績評価の上、医療費の高い特定の都道府県だけにこうした特例措置を認めることが可能となる(高齢者の医療の確保に関する法律 第13条・同14条)。都道府県別の診療報酬が導入されるならば、同じ医療行為が都道府県によって費用が変わることになり、地域医療に大きな混乱をもたらすことになる。 ★医療費抑制政策からの転換を 2006年7月11日、厚生労働省と社会ロ険庁が開催した「健保法等一部改正に伴う施行準備に関する説明会」で、社会保険庁の武田俊彦医療保険課長(当時)は、「全国健康保険協会は全国一つの法人だが、可能な限り、独立の保険者の集合体として運営することがこの制度改正の本旨である」(国保実務 第2517号)と、そのねらいを語っている。 これまで国が保険者として担ってきた全国一本の健康保険制度を、事実上、都道府県単位の健保制度に分割し、国の責務を投げ捨てるとともに、都道府県単位で医療費削減を行い、競い合わせようとするものである。いまでも崩壊が進む地域医療が、ますます荒廃することになる。 医療費抑制政策を根本から転換することが求められている。
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