学校給食民間委託⑤ 調理室は貸出できない
派遣労働、ワーキングプアが社会問題となる中で、曖昧にされてきた問題がクローズアップしている。その1つが学校給食調理での「偽装請負」… 法を守れば民間委託は不可能である。
単なる労務提供を禁止した法と行政財産の貸し付けを禁止した地方自治法とがあいいれないからである。
「請負」の内命を定めた「旧労働省告示37号」は、「業務の処理のための機械、設備、器材、材料、資材を自らの責任と負担で準備している又は自らの企画又は専門的技術、経験により処理している」ことを求めている。
そして、「機械、資材等が相手方から借り入れ又は購入されたものについては、別個の双務契約(契約当事者双方に相互に対価的関係をなす法的義務を課する契約)による正当なものであることが必要である。」
としている。製造業の場合は「保守及び修理を受託者が行うか、ないしは保守及び修理に要する経費を受託者が負担していること」としている。
つまり請負であるための「業務の独立性」を確保するためには、学校調理室の機材を借りていることについて使用資料、保守・修理のための費用負担の契約がなければ「偽装請負」となる。
ところで、地方自治法は、「行政財産の管理及び処分」について、238条の4で「行政財産は、次項から第四項までに定めるものを除くほか、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、出資の目的とし、若しくは信託し、又はこれに私権を設定することができない。」と規定している。庁舎その他の建物及びその附帯施設などを貸し付けられるのは「その床面積又は敷地に余裕がある場合」となっておりこの規定には入らない。つまり民間業者に貸し付けはできない。
これを脱法するために学校調理は告知37号のいう「専門的技術、経験」を有していると説明している自治体があるが、先の自治労連と厚生労働省の交渉で、職業安定局需給調整事業課は、「調理業務の専門性」についても、「告示第37号 第二条二.ハ二にいう専門性とは、普通の事業者にはない高い専門性や技術のことをいっているのであり、発注者が自分のところでできないから高い専門性をもつ事業者に請け負わせるもの。逆に言えば、発注者が指揮命令できるような業務は専門性があるとは言えない」と明快に解答した。
よって法を守れば、施設面でも、学校給食の民間委託は不可能である。
また、行政が一括購入した食材を、無償で委託業者に提供することも違法との判断をしめした。これについては次回のべたい。
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