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「金融立国」の行く末

 福田内閣は「金融立国」をめざすというが、実態はどうだろうか。
 サブプライムローン問題の影響の拡大はとどまることを知らない。100兆円のホーム・エクイティ・ローン、30兆円の金利入札証券など次々と波及している。同時に、実態経済とはなれた金融と経済のあり方を問う声やマネーの暴走に規制を求める声も広がっている。
 米政府系住宅金融、株価底なし 公的資金注入の観測も 8/21朝日
「証券買い戻しを迫られた米金融機関」 日経社説 8/21
「住宅含み担保で残高100兆円 ホーム・エクイティ・ローンは新たな不良債権の火薬庫か」東洋経済オンライン 8/19

 金融当局首脳ら専門家の間で評価が高い「投資銀行バブルの終焉―サブプライム問題のメカニズム」(日経BP社刊)の著者、倉都康行・RPテック代表取締役へのインタビュー。金融の肥大化と異常さを批判し、新たな規制の導入を主張している。
「サブプライム危機はあと何年も続く  シャドウバンキングに金融規制を導入せよ」ダイヤモンドオンライン

 日経社説は「米国の金融界が得意としてきた証券化などの手法は何だったのかが、改めて問い直される機会にもなりそうだ。」と書いてある。
 その点では倉都氏の話はコンパクトで本質に迫っている。
 氏は「金融は運用である、という常識が、この10年間に定着した。定着しすぎた。実体経済を支え、実体経済とコインの裏表のはずの金融が遊離し、肥大化しすぎたのだ。」「投資リターンが30%も40%もあること自体、尋常な金融取引ではない。」と異常性を指摘したうえ、世界中の金融機関が証券化商品を買い込む原因となった「格付けシステム」を「信用ではなく、信仰だ。」と指摘している。結びに「金融に限らず、あらゆる市場は自由がベースになければならない。だが、今回明らかになったのは、金融は自ら膨張し、自壊し、自爆し、実体経済をも破壊するということだ。となれば、設計は非常に難しいが、新しい規制は必要だろう。」
 ―― これってマルクスが指摘した「資本主義の限界」という話と通じるものがある。

 「金融立国」とは、実体経済や国民の預貯金を投機マネーの食い物にしやすい環境整備するというものであり、考え直した方がよい。

 東洋経済の記事は、アメリカで一般化しているホーム・エクイティ・ローン(HEL/住宅の時価からローンの額を引いた「純資産」を担保にしている)が個人消費を刺激してきたが、それが住宅価格の下落で不良債権化が進む影響について言及している。
 100兆円というローン残高の規模とともに、HELは第2抵当(第1は住宅ローン)であり、住宅価格の下落によって担保価値が目減りしやすいこと、「融資枠型のHELOCの元本返済(一般的に融資期間10~15年の終了後)が徐々に到来するため、問題は相当長期化することも考えられる。」と深刻さを示している。

【米政府系住宅金融、株価底なし 公的資金注入の観測も  8/21朝日】  米国のサブプライム住宅ローン問題の深刻化で、ローン市場を支えてきた米連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディーマック)など政府系住宅金融機関(GSE)の株価急落が止まらない。  この1週間で両社の株価は半値近く下がり、20日の終値はファニーが前日比1.61ドル安の4.40ドル、フレディーは0.92ドル安の3.25ドル。ともにこの1年間で9割余り暴落し、89~90年以来の安値。ローン焦げ付きの急増で赤字決算が続く。  両社は住宅ローン最大手だが、先行き懸念で資金調達コストが過去約10年間で最高水準に上昇。それを反映して住宅ローン金利も高止まりし、金融危機をさらに深刻化させる可能性も指摘されている。  両社はメディアなどを通して「財務はしっかりしている」などと説明している。だが、株価下落が一層の不安を招き、財務強化に必要な増資が難しくなるとの見方も出ている。株式市場では「両社の株価はサブプライム問題の象徴となり、金融関連相場も押し下げている」(ディーラー)とされる。  救済策として、米政府には公的資金を活用し、両社への融資や資本注入を無制限に実施できる特別権限が与えられた。「政府は来月末までに資本注入を迫られ、最大計300億ドル(約3兆円)もの優先株を購入せざるを得なくなる可能性もある」(大手債券運用会社の担当者)との観測も浮上している。

証券買い戻しを迫られた米金融機関 日経社説(8/21)】
 米国の大手金融機関が、司法当局から投資家への販売方法が不適切だったと指摘され、証券の買い戻しを余儀なくされている。当面の買い戻し額は合計数兆円規模。証券の価値は大幅に下がっているだけに、金融機関の経営がさらに悪化し、景気の足を引っ張ることが懸念される。
 いま焦点になっているのは、金利入札証券(ARS)と呼ばれる金融商品だ。地方自治体などが短期の金利入札を繰り返し、長期の資金を調達する証券で、市場規模は3000億ドルを上回る。証券の発行期間は30年などと長いが、期間1カ月程度の入札を繰り返すことで短期金利で資金を調達する形となる。
 普通は短期金利の方が長期金利より低いので、自治体などにとっては有利な資金調達となる。購入した投資家にとっても、ARSは発行者の信用力が高く、いつでも換金可能というのが魅力だった。
 ところが、住宅バブル崩壊を機に短期金融市場が機能マヒに陥り、ARSの前提となる金利入札が困難になったのだ。投資家は保有するARSを売ろうにも売れない状況に陥った。ARSの流通市場といっても、実際には数社の金融機関が参加していただけで、いまや市場そのものが消えてなくなってしまった。
 ニューヨーク州司法当局が問題にしたのは、金融機関が一連のリスクをきちんと説明せずにARSを売りまくったことだ。訴訟に持ち込まれても勝ち目がないと考え、金融機関は相次いで販売した際の価格で全額買い取りに応じている。現時点のARSの価値は当初の販売価格の半値になっているものも少なくない。
 各社とも大幅な損失は避けられそうにない。金融機関の自己資本が傷つき、金融商品を保有し続ける力がなくなることになりかねない。貸し渋りが深刻になる恐れもある。
 米国の金融界が得意としてきた証券化などの手法は何だったのかが、改めて問い直される機会にもなりそうだ。借り手と貸し手の間に金融商品を介在させることで、借り手の資金調達コストを下げ、貸し手の投資利回りを向上させる。そんな仕組みが言いはやされたが、多くの場合はリスクの説明が不十分で、市場の流動性は乏しかった。
 日本ではバブル崩壊を機に、株式と不動産の値上がりを前提にした金融のうまい話が崩れた。類似の現象が住宅バブル崩壊後の米国で起きている。金融の機能不全が実体経済に影響を広げ、景気悪化が金融への重圧となる。そんな悪循環を断つ果断な対応が米当局に求められる。

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