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格差世襲~子どもの貧困

Newdw080830
「下流の子は下流」は本当か? 格差世襲社会の現状を徹底分析 週刊ダイヤモンド8/25。
 5月の週刊東洋経済の「子ども格差」に続いて「子どもの貧困」につての特集。
 特集について編集子は「学歴や資格、地位を得るには、試験など各種の選抜システムを経るだけに、本人は『自力で得た成果だ』と錯覚しがちですが、生まれつき手にしていた親の学歴、収入の差という『既得権』を元手につかんだ実績なのであれば、それは最初から公平な競争ではなかったのではないでしょうか。」「自分は公平なレースを勝ち抜いてきたという誤解と奢りは、弱者の存在を見えなくします。そして、『貧しいのは自己責任』と勝者の論理を振りかざすようになります。」・・・と述べているが、その通りである。
 心理学者の高垣忠一郎氏は「競争社会に向き合う自己肯定感」の中で、「内的資産」の多寡として言及している。

 

 編集子は「解決策は容易には見つかりませんが、まずはだれもが事態を自覚し、考えることにこそ意義がある」と述べているかが、以前紹介した 「子どもの貧困 ~ 子ども時代のしあわせ平等のために」を著者の浅井春夫氏の指摘に聞いてみよう。
 浅井氏は、 「子どもの貧困に関する政策論議進んでない。逆に児童扶養手当、生活保護母子加算の削減。廃止など『貧困児童の排除政策』を強めている。『子どもの貧困』克服は、親の責任論や世帯支援などの考えのもと、社会福祉政策の課題にもなってない」と批判し、「夫婦と子ども1人、年収240万円(貧困ライン以下)の現実を変える政策が必要」とのべている。
 その内容のついて・・・以下は、私の備忘録から

◆「子どもの貧困克服政策・4つの基本的視点」
(1)子ども個人を単位にした政策展開
「家族依存体質」というべき児童福祉・教育政策の現状
  親の子どもに対する「第一次的扶養責任」(子どもの権利条約18条)―― しかし、問題の「分岐点」は家族の 生活水準をぎりぎりまで落としたうえで、はじめて扶養者である保護者への公的支援が実施される。
       → 親子関係の絆の強化にならず、子どもの生活基盤としての家庭的環境を脆弱化している
・「子ども個人」を単位として援助する視点を
 北欧~「養育費の立替」制度 離婚などで養育費支払い義務に対し、実施されない場合、国が立替て、親に請求
  養育費は子どもに支払われるものであり、親の再婚に左右されない。
  子どものボルネラビリティ(脆弱性、もろさ)の緩和、軽減、援助していくことが課題に。
   脆弱性の特徴~ ①自己決定能力が不十分(経済支援をうけても適切に使えるか?)
             ②年齢が低いほど親・保護者の所得水準、養育能力に依存せざるをえない。
             ③教育権保障が十分にされないと、その後の人生のハンディとなる。

(2)「積極的格差」の原則でえぐられた発達を補てん
 ・「劣等処遇」の原則から、「積極的格差」の原則で具体化を
    劣等処遇~ 一般の市民のレベルの生活を超えない範囲で処遇すべきというもの。
           → 子どもの貧困は、その扶養者の努力がたらないという自己責任論がある。
 ・子どもの貧困の増大 ~日本型雇用の解体による不安定と大幅な低賃金化、貧困を削減しない社会保障の貧弱さ
    → この改善には「積極的格差」の原則と子どもの権利保障の視点が必要  
 ・「積極的格差」の原則 ~ これまでの奪われた権利を補充し、平等を実現するには、上乗せした支援が必要
 ・子どもの権利条約の視点 ~
 ①人間としての権利 ②ボルネラブルな存在としての子どもの権利 ③発達可能態としての権利
・「子どもの貧困」克服対策は、 えぐられた発達部分をきちんと補てんする役割がある。

(3)施策対象年齢を25歳までに
 ・児童福祉法は18歳(例外的に20歳)  児童自立生活援助事業、児童福祉施設は20歳まで延長処置
 ・18歳以降の教育、就労トレーニング機会の保障の具体化
   貧困の世代継承性の克服… 学等を卒業し、生活的安定が確立されることを目標にし施策を整備する必要
    → 25歳までを施策の対象にすることが必要
       例) 勤労青少年福祉法を発展させ、児童福祉法と労働諸法との連続性を具体化する   

(4)包括的かつ長期的展望にたった政策の必要
・児童福祉、保育、保健、生活保護、就学援助、非行問題への対応、保護者の経済的支援など包括的対応が必要
・中長期的視点 教育的なハンディが、就労の社会的不利に連動している

3.所得の再配分の政策
(1)教育扶助・就学援助の機能強化を
 ・低所得者世帯の割合(04年)
   生活保護基準未満 17.5%。 同1.4倍未満 31.4% (金沢誠一試算)
 ・教育扶助の対象を、すべての高等教育に。就学援助の基準を生活保護の1.5倍に。
 ・「子どもの発達・生活保障の最低生活費」を算定し、政策を確立する

(2)勤労世帯への所得保障
①公的所得移転と税制優遇措置 ~ 脆弱性を持つ子どもに対して有効な施策
・OECD16カ国平均で同措置は「すべての子どもいる家庭の約40%を相対的貧困から引上げた… 北欧諸国における70%から、イタリアと日本における無視できるレベルまで広範囲に及ぶ」(OECD編著「世界の社会政策の動向」)
・この差は、特定の所得移転施策の導入、税制優遇措置の拡大による
  イギリス 子ども税控除(タックスクレジット)、勤労税控除、就労家族税控除など全体施策の中で位置づけ
  「OECD対日経済審査報告書」(06年) ~ 所得再配分の結果、子どもの貧困率の低下 
    23カ国平均 8.8%減少 米4.9%、加7.5%、独9.0%、英12.9%、仏20.4%減 日1.4%増加
②子ども世帯の賃金依存率91%の改善と社会手当等の増額
・新自由主義の国民生活への影響
  子育て世帯の平均所得(06年「国民生活基礎調査の概要」) 96年781.6万 05年718.0円 63.6万円減
・最低賃金の大幅な改善と社会手当ての拡充を  例 フランス 家族給付30種。広く一般市民対象
  所得のうち91.2%が稼動所得 ~ 諸手当ての貧困さの克服
  浅井氏は、家族手当(2人以上の子ども)、養育手当(子育てのため求職、パートで就労)、家族補足手当(3人以上のこどもの扶養)保育費用補助、在宅保育手当などをすぐにも実現できるものと紹介
  → 日本では対象が限定されていることが特に問題。所得要件なしか、少なくとも対象の9割をフォローする。

(3)人生のはじめの社会保障としての保育
・全国の状況(厚労省07)22848ヶ所、201万5382人が利用。定員充足率95.7% 就学前児童の30.2%が利用
・保育の質の低下 この10年~民営化と企業参入、パート保育士の増加、定員弾力化(超過入所) 
・保育~「子どもの貧困」克服の施策としての社会保障のあり方 /親の経済や就労状況で格差をうまない。
①保育料の無料化の推進ないし、応能負担原則の堅持 ~ 社会連帯の原理に基づき費用徴収
OECD編「人生のはじまりを力強く」~ 0~2歳児の保育料無料化を課題として提示
これに対し、認定こども園は、契約制度、料金の自由設定、応益負担原則…市場原理の費用徴収制度

②すべての「保育に欠ける」子どもの入所の保障
 07.4/待機児童1万7926人(新定義。無認可保育所に入ってる児童はカウント外)/実際には倍。
潜在的待機児童は相当数 ~ 働く条件が整備されれば保育所を利用したい層の存在

③保育所運営費の改善 ~ 実態にあってない国の基準 
   最低基準は8時間 だが現状の運営費で11時間の保育実施が可能。4.5歳児30人に保育士1人
   一般生活費(給食経費、保育材料費、保育にかかわる全ての経費) 3才児以上 つき6466円
     → 一般会計予算の保育所関係予算 0.4% → 1%へ。 

(4)子ども版ベーシック・インカム構想の検討 
  ・ベーシック・インカム「すべての個々人に対し、予め(事後的にではなく)、性別や結婚の有無を問わず、労働に就いていたか就いていなかったかも問わずに、所得保障を行おうというもの」~無条件で支給される普遍主義的な「社会手当て」
・同構想は、簡単には日本で具体化することは困難だろうが、発想を生かし政策に反映をさせる
    例)児童手当を所得制限なしに、18歳までに。それと連動し、大学進学も保障する施策へ。

◆労働政策の具体化
(1)民主的な規制のもとでのワークフェアの展開
・ワークフェア 福祉と就労を結びつけ、能力・才能の形成をめざす政策 /実態と方向性は様々
 → 英米「福祉から就労」 北欧「就労にともなう福祉」 後発資本主義国「はじめに就労ありき」
*背景 予算の効率化、福祉給付を勤労意欲につなぐインセンティブを高める政策意思  
・日本での具体化… 労働現場の非人間的状況の広がりとワーキングプアの現実 
    → 福祉給付(所得保障)と労働インセンティブが人間的連関をもって展開されることが困難

(2)世界的にも低水準の最低賃金制度の改革
・07年 日本673円、英1267円、仏1326円、米872円 (労働政策研究・研修機構)
・認識の広がり フルタイムで働いても生活が成り立たない 生活保護基準より低い 先進国の中でも最低
・少なくとも1000円以上に(平均賃金の2/3を確保することを基準としたとき)

(3)家族的責任を果たすための労働時間の短縮
・労働時間(年間) OECD 06年/ 旧西独1421時間 仏1535時間 日本1775時間(非正規、パート含む)
  実際の日本の労働時間 2016時間 / 2ヶ月多く働いている。週当たり実労働時間42.7時間(2位)
・男女の役割分担 「女性の仕事と家庭生活に関する調査」(02年 厚労省)
    家事時間 女性 3時間30~50分 男性 24~30分 ~女性が7倍以上 「新・伝統的役割分業」の現実
・「子どもの貧困」克服の政策の根底に、家族的責任を果たすことのできる労働政策を
  ドイツの労働政策~ 「親時間」の確保、パートナーと過ごす時間の力点
   特に、子育て世帯の労働時間の軽減措置の検討を
     イギリス ~ 6才未満の子ども(18才未満の障害児)を持つ親 「柔軟な働き方の申請権」
               労働時間、勤務時間帯、在宅勤務のいずれかの申請をする権利
     スウェーデン「サバティカル休暇」、フィンランド「ジョブローテーション制度」など長期休暇制度
     オランダ コンビネーションシナリオの推進 夫婦で1.5人分働き、仕事と家族責任を共同する
・具体的改善策
①深夜労働の原則禁止 ②1週間ごとの休息時間確保 ③半強制的な年次休暇取得 ④子育て家庭の法定労働時間は35時間を基本 ④出産休暇の充実(6週+8週、配偶者出産休暇)

◆エンパワメンととしての教育改革
(1)学校で学びとケアの保障
・「子どもの貧困」のひとつの焦点は教育権の保障! 
   大阪府教育委員会 06年度 全日制高校での授業料未納者 444人(180人は減免措置の適用)
      経済的理由289人、所在不明155人 ~ 家庭の貧困の広がりと深刻さの証左
・スクールソーシャルワーカーの配置(08年 公立小中学校 141地域)~就学援助、生活保護の助言など。
   → 学校制度の中で、学びとケアとを作り直していくことの必要性 
~ 「子どもの貧困」克服に向かう子どもたちにエンパワメントするとことになる
  ・食生活の保障  中学校給食04年73.5%の改善、給食費の無料化も

(2)低学力の子どもたちの教育達成保障は自治体の役割
学歴・教育達成保障を自治体の責務としてすすめる(イギリス)/学費や生活費の保障が課題となる。

(3)高校進学を前提に、大学進学の保障
・大学授業料 日本 国立大約80万 仏、独はほぼ無料、米・州立大47万。奨学金が貸与だけは日本だけ。
  高校教育予算 OECD平均  GDP比1.3%、日本0.4%
・「親の学歴が大卒層は子どもにそれ以上を望む。親が高卒であれば大学進学の欲求はそう強くならない」
   → 貧困の世代的継承を打ち破っていくために、大学進学の保障は政策的な柱となる。

(4)セカンドチャンスとしての再入学保障
・高校中退05年 7万6693人 学校生活・学業不適応38.6%、進路変更34.2%と7割
   → もう一度、高校生活・専門学校へのチャレンジを保障するシステムが必要ではないか?
  ~ 成熟学歴社会では、一度の“失敗”で職業における下降移動を余儀なくされる。 

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