地方からの人口移動に警鐘 日本総研
日本総研が8月1日に「社会移動が加速する人口の地域偏在 ~急速に進む地方からの人口移動に警鐘を鳴らす~」とのリポート(要旨は下記)を出している。
「地方の衰退と首都圏の繁栄という二極化が一層進展」「国家の持続可能性に対する懐疑的な見方を拭い去ることは出来ない。」と問題意識をのべ、現状の成長スタイルは「中長期的に見て限界にある」「若い世代をつなぎとめるための、官民による積極的な投資が行えるかどうかが、地方からの人材流出抑制の鍵となる」と結んでいる。
「構造改革路線」の失敗を、人口を切り口に示したものといえる。
「三位一体改革」で、地方財源は5.1兆円削減された。高知県ではその影響で一般財源が400億円減少(一般財源の1割近く)している。一方、03~06年の東京都と特別区の財源超過額は1兆4292億円(昨年4月25日の政府の「税制改革」議論の資料より)
―― 人口移動は自然現象ではない。こうした地方財政政策に加え、 WTO体制のもとでの一次産業の衰退、社会保障抑制政策による福祉・医療・介護の働く場が縮小、劣化しているからだ。
「官民による積極的な投資」を不可能にしてきたのが構造改革路線である。
また、人口が集中する東京が合計特殊出生率が1.01で全国最低(平成17年度「出生に関する統計」の概況より)だから、少子化問題でも構造的な問題を抱えていると言える。
日本総研 8/1 「社会移動が加速する人口の地域偏在」 *レポートのねらい 近年、東京など大都市に向けた地方からの人口移動が顕著になっている。そのため、国立社会保障・人口問題研究所(以後、社人研)が示している「日本の都道府県別将来推計人口」よりも、人口の地域偏在が強まる可能性が高い。地方からの人口の流出は、地域の活力をそぎ、地方経済の地盤沈下をもたらす。当然、人口の流出が加速し、減少がより進む地域では、将来を見据えた社会インフラの整備のあり方や財政の持続可能性にも影響を与える。その結果、わが国では地方の衰退と首都圏の繁栄という二極化が一層進展し、「地方を財政的に支える東京」というこれまで以上に中央集権的な国家へと向かうことになる。 しかし、東京への人口集中が進む-方で、厳しい状況から抜けられない地方財政を見る限り、そうした国家の持続可能性に対する懐疑的な見方を拭い去ることは出来ない。 本レポートでは、地域の自立を念頭に、近年の人の移動状況を改めて確認し、人口を切り口に今後実施すべき政策の方向性を考える。 *要約 1.昨今、地方から生産年齢の幅広い年齢層が転出超過になっている。その理由は、新卒者の就職先として、首都圏や愛知県などの企業への志向性が高まっていることと、地方の支所や営業所の人員削減などが影響している。 2.このような社会移動の状況が長期にわたり持続すれば、国立社会保障・人口問題研究所が2007年5月に公表した「日本の都道府県別将来推計人口」が描く将来像よりも大きな人口の偏在が生じる。地方からは生産年齢人口が流出する-方、東京などでは-般に言われる生産年齢人口の減少はなく、今後も現状維持もしくは増加する。 3.地方から東京などへの人口移動の進展は、①地方における成長の担い手の喪失、②インフラ投資の非効率性、をもたらす。一方、東京都に人口が集中しても、地方が衰退し続ける現状では、わが国全体の成長率を維持していくために、東京都ではバブル期並みの成長が必要になる。これは非現実的であり、人口が東京に集中し、成長を一手に引き受ける中央集権的国家のあり方は、中長期的に見て限界にある。 4.地方においては、人口の流出が地域経済の落ち込みを招き、それが-層の人口流出を生じる人口流出スパイラルに落ら込む可能性が高い。一人でも多くの若い世代を地域につなぎとめ、彼らの活動により地域を活性化させるには、地域主導で域内への投資の拡大を図り、雇用の確保に努めなければならない。各地域がそれぞれのアイデアや財源、手法に基づく分権的な取り組みにより、若い世代をつなぎとめるための、官民による積極的な投資が行えるかどうかが、地方からの人材流出抑制の鍵となる。
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