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学校給食民間委託④ 事故の責任

高知市が、学校給食調理の民間委託を強行しようとしている。コスト面で安くならないことははっきりした。
同時に、委託(請負)という形態は、働く人の命と健康に関わる問題でもある。
7月初め、東京都杉並区の中学校の調理室で、ガス器具の不完全燃焼による一酸化炭素(CO)中毒事故が発生した。
 なぜ、こんなことになったか。不安定な雇用が根っこにある。

 民間委託のもと、リーダーとサブリーダー以外のメンバーが次々と変わるので、お昼の時間に間に合わすためには5時半から業務を始めている。が、住民の苦情があり換気扇が回せない。もともとパン食中心の時の施設で換気扇も小さい。その中で起こったと、先日の自治体学校で、報告があった。

 03年には、目黒区の中学校給食室で一酸化炭素中毒が発生している。被災した労働者は頭痛、吐き気など後遺症に悩まされているが、労災の方は治癒認定(症状固定)とされ給付が打ち切られた。しかし、治療は続き膨大な医療費の支払いなどに苦しんでいる(06年3月10日 全国ユニオンが厚労大臣に要望書)
ところが被災者への損害賠償は決着がついてない。行政は「安全管理は契約上業者の責任」、業者は「施設整備を保有している行政の責任」と主張が対立しているためだ。その結果、働く人が補償もされず犠牲になっている。

 民間委託は、このように食中毒や事故が発生した場合の責任が極めて不明確なのだ。
調理業務に起因(受託業者責任)、指示書に起因(行政)で責任の所在が違う。また、施設設備に起因した場合、所有者は行政であり、メンテナンスに起因する場合は受託業者となる。
この線引きが困難であることが、先の目黒区の例である。
 
 そもそも、職業安定法施行規則第4条1号は、「作業の完成について事業主として財政上及び法律上のすべての責任を負うものであること。」と受託業者の責任を規定しているが、だからと言って、行政が食中毒や事故に対し責任を負わないということにはならないはずだ。先の、ふじみ野市のプール死亡事故では、明確に施設を所有する行政の責任が認定された。
 このように受託業者と行政の責任の範囲について、不透明さがあるシステムをこどもの命と健康に関わる部分に導入すべきではない。しかも、行政は、受託業者の調理員に直接、指揮命令できないのだから。

 職業安定法施行規則第4条3号は、「作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定されたすべての業務を負うものであること。」と労働者の安全に大してすべての責任を持つとしている。「請負」は、労働安全衛生法に基づく安全衛生管理責任は受託事業者にある。
 しかし、自治体が所有する施設・設備を利用して調理する場合は、受託事業者が労働安全衛生上の改善措置として自らの責任で施設・設備を改善することはできない。本来は、施設設備の所有なくして労働安全衛生責任は果たせないのである。

 このように調理業務だけを「請負」させるというのは、極めて責任、働く人の保護という点で不透明な制度なのである。

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