「母子家庭の就労支援研究」を読む
労働政策研究・研修機構が6月12日「母子家庭の母への就業支援の研究」というレポートを発表している。
その中では、あらためて母子家庭の暮らしの厳しさが浮きぼりになっているが、比較的実績を挙げている8 つの自治体の事例の紹介・研究と、それをうけて「自治体行政運営上の配慮と工夫」という政策提言などもおこなっており、自治体の取り組みを点検するうえで参考になる部分も結構ある。
【母子世帯の状況ついて】
母子世帯の増加とその収入の低さが各種の調査であきらかになっているが、同レポートでも、母子家庭等就業・自立支援センター等が保有している名簿登録者にアンケート調査を実施し、1311人の回答をえている。
その結果
・就業率 母の就業率が86.8%と非常に高い。
・正社員比率 有業者の正社員比率は31.2%。と女性平均の5割をはるかに超えて非正規雇用が多い。
・稼働年収 有業者平均は185.7 万円。うち、正社員平均は261.1 万円。
ときびしい実態を明らかになっている。
【自治体行政運営上の配慮と工夫について】
4点を報告している。他に自立支援活用の実効性をたかめるための指摘などもしている。
①母子家庭等自立支援計画の策定
まず現状把握。実態調査を行い、生活状況や要望などを把握しておく必要し、計画を立てることをもとめている。
県は05年度に調査しているが、高知市独自のものはない。
②母子福祉行政とハローワークとの連携強化
自治体の福祉行政と国の労働行政に予想以上の溝があると指摘。千葉市が「連絡票」や「連絡会議」などをつかいフォローアップし、継続的に支援できるようにしている。
「千葉市の『連絡表』(P91)」
③就業支援にかかわる職務のマニュアル化
母子福祉行政が就業支援に不慣れな点をとりあげ、業務のマニュアル化を求めている。その中で、「横浜市のマニュアルはかなり優れた内容であり参考となる。」と紹介されている。
「横浜市のマニュアル(添付資料2)」
④就業支援を担当する職員の処遇
「母子自立支援員」「就労支援員」という職員の圧倒的多数が非常勤職員であり、専門性、経験の蓄積という観点から「常勤職員にみあった待遇や権限で仕事ができるような状況を用意していくことが有効」としている。
★自治体の意識的なワンストップサービスの構築や連携の強化
また自立支援プログラムの有効活用という項目では、「制度を知らない」との回答が多数あり、児童扶養手当、保育所の窓口と一本化している貝塚市の例が紹介されている。
こうしたことをしっかり行うためには、地方財源の確保、職員定数の削減を強制する法の廃止などが必要となる。「同レポートは、そうした点には言及してないのが、難点である。
また、正職員になるには、看護、介護、パソコンなどの資格をとることが有効としているが、その研修期間中の生活には、「『母子福祉資金貸付金』」制度の活用を通じて実現可能」としているが、ただでさえ苦しい生活の中で、新たな職の展望も不確かなまま借金をせよ、というのはどれほど有効かと疑問をもつ。こうしたときこそ、生活保護制度で、もっと柔軟にサポートできるようにできないものか。と思う。
「貧困の連鎖をたちきる」との、高知と同じく求人倍率の低い釧路市のとりくみは共感を覚える
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