蟹工船ブーム 「甘く見てはならない」
27日付・読売新聞の出版トピックに「蟹工船ブーム 『格差の証拠』」で、この2か月間だけで、30万部以上を売り上げたことを、今なぜ、「蟹工船」なのか、論評している。私は「社会へ声をあげる」「連帯」がポイントと感じている。
支配層に近い雑誌の中で「政府与党、財界は、このブームを甘く見てはならない」との警告を発している。すこし、論評を拾ってみた。
また、近く、高知の青年が「蟹工船」を題材に学び語る催しを開催するとのこと。
読売の論評の中で、「反貧困」の著書もある湯浅誠さんが「我々のところへ相談に来る人たちはどん底まで行った人たち。物理的にも精神的にも何かを考えたり行動したりするパワーすらない状態だが、『蟹工船』を読んで自殺でも自傷でもない団結というやり方もあることを知っていく可能性はあると思う」と語ったことを紹介している。
さきのNHKの「おはよう日本」の特集でも「社会に対して声をあげること」「人への思いやり、連帯」がテーマだった。
湯浅氏は著書の中で、「貧困は貧乏と違う」と、生活苦だけでない社会的排除、最後には自己の排除、否定に行き着く、強烈な孤立、孤独をともなっていることを指摘している。
エンゲルスの「イギリスにおける労働者階級の状態」の中で、その悲惨な暮らしの状態の中で“背筋も凍るような他人への無関心”が生まれていることを指摘している。
構造改革路線のもとで「自己責任」と分断のイデオロギーが席巻をしたが、そうした状況に、「蟹工船」は「たたかい続けること」「力をあわせる」ことをメッセージとして送っていると感じている。
本日の産経に編集委員が「いまなぜ、蟹工船なのか」を書いている。
「ほかにも名著はある」「小林の意図や目的、昭和初期の時代状況を抜きにして『そっくりだ』と単純に比較するのは、ちょっと乱暴である。」「フィクションにすぎない」〈見識のなさを露呈。事実の取材に基づいている〉 「すでに破産してしまった理論によるアジテーションである」などブームになっていることがよほど気に入らないようで難癖をつけている。
しかし、それでも「派遣会社からはピンハネに近い搾取を受け、派遣先でも差別的な待遇を受けるなど、かれらが深刻な状況に置かれているのは事実である。」「『蟹工船』ブームは、非正規の若者たちの存在をアピールしたという意味での功績だけは残した。」と書かざるを得ない。
そのたたかいは始まったばかりである。これからが派遣労働の規制、人間らしい働き方のルールの確立にむけてのたたかいの本番である。よって「蟹工船」のメッセージは生き続けることとなる。
朝日の25日の文芸時評は、正論7月号「なぜ今『蟹工船』なのか 小林多喜二にすがる危うき現代社会」をとりあげ、「『蟹工船』ブームを甘くみてはならない。政府与党と財界は本気で慌てるべきだ。」との筆者の指摘を紹介している。
こちらの方が、的を射ていると思う。
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