食料増産 破綻済みの「規模拡大」に固執
福田首相が3日の食料サミットでで、食料自給率の向上に「あらゆる努力を払う」と述べた。しかし、先の5月14日の経済財政諮問会議で議論をみると、民間議員が「国内では、農業の生産性向上の努力を続けてきたが、長期下落傾向に歯止めはかかっていない」として「農業改革」について語っているが、その柱は、「企業型農業経営の拡大」であり、「規模の拡大によりコストを下げ」て「自給率を上げる」と述べ、この線で議論がなされている。机上の空論である。3日、NHKが「秋田・大潟村 転作面積最大に」と報じている。
自民党農政は、一貫して規模拡大を言ってきた。
15haと、その大規模経営でモデル農村といわれる秋田大潟村で、転作する田んぼの面積が最大となったとのことで、記事の中で、農業政策に詳しい秋田県立大学の佐藤了教授は「米の価格がずいぶん下がり、モデル農村と言われた大潟村でさえも米中心の大規模経営が立ちゆかなくなってきた。日本の農業全体が危機的になっている現れだ」と指摘している。大規模化にするコスト削減は、すでに破綻している。
また、国土、環境を支える中山間地の農業を切り捨てるような認定農家制度では、8兆2千億円という農業のもつ他面的機能の多くを失うだろう。
本気でやるなら、イギリスで自給率向上に成功したように価格保障を実施するべきである。そういう声は政府からは一つも出てきていない。義務でないミニマムアクセス米の輸入中止も・・・(アメリカと財界が許す範囲の)「あらゆる努力」なのであろう。
◆高知の米どころ・香長平野でコメをくつっている中村さんの話
(5月31日、農業シンポの発言より。文責は当方)
「会場をみてびっくりしました。こんなにおるとは思いませんでした。南国市にうまれで50歳、48歳までサラリーマンしていた。父母がハウスしていた。農繁期にはかりだされて手伝っていた。高校のときすでにコンバインで稲刈りしていた。以来農機具使うのがおもしろくて今ままできてる。本当に稲作の経営はじめたのは32歳、1町4反でスタートした。30キロ11000円位で売買していた。当時のサラリーマンの給料からすると相当の金額になってた。平成17年度まで18年間、稲をつくり設備投資をコメの収益で全部やってきた。3町歩に広がったが、収益は変わってない。収入は18年で2分の1になってる。18年19年はまた激変した。17年にサラリーマンに嫌気をさし退職。農業収入は一銭も家に入れず投資してきた。女房はやめるの反対した。生活できるだけ稼げるか、ということ。しかし借金はなかったので18年度から始めた。コメ専業農家で食うには設備投資1億円はかかる。退職金も全部つぎこんだ。借金無かったのが少し借金してしまった。10町歩は作らんと食えんと設備投資しているので自分の5町歩、請負5町歩ならやれるだろうとスタートした。初年度18年度、コメの刈り取りをしてびっくりした。コメの皮をはぐと真白。それまでそんなことなかった。品質低下で価格が下がった。コメ自体の価格も下がっていた。収量も平年作の8割。1反あたり9俵をめどに試算してた。私一人でやっていて、妻はサラリーマン。農繁期は人を雇っている。初年度の収益はあまりに少なかった。そんなにあるとは思ってなかったが、思った以上に少なく、請負なかったら完全な赤字。米価は30キロ6500円。19年度も価格の下落がとまらない。6200円ぐらいで取引。品質は18年より若干よかったが。収量は9俵目標の7割。6~77月に台風。極早稲1町2反が倒れた。不稔粒も発生。
農家なら自分の作を点数つけ、来年はよくするため何らかの策をとる。これが楽しいところ。でもここに天候が牙をむく。乳白米の発生は気温上昇、台風の6~7月発生も地球温暖化の影響。収量ゼロなら300万円の赤字。それに借入金もある。一年でつぶれる。今年の収量も下方修正せざるをえない。
今年は作付け7町歩、請負9町歩。どうなるか。安全でおいしい食料をつくるのが農家の使命とするなら、農家は必要。しかし、農地の改廃はすでに南国でも始まっている。いまのまま農家が減ると改廃は急速に加速して手がつけられなくなる。地産地消が必要。送料を払って早場米を県外で売っている、新潟のコメを送料を払って買ってる。高知県の100%コシヒカリを食べたらたぶんおいしいと思う。材料費が上っても販売価格を操作できない。農家の所得は、価格安定が一番必要と思う。紙さんの話、神さんにきこえてきた。
日本の穀物事情、日に日に急変してる。去年6500円でコメ売ったときは来年も下がるなと思っていた。世界一安全な日本のコメ、いまの価格では生産者いなくなり日本のコメ流通しなくなる。高い値段でかわなければならなくなる。食料を買えない人もでてくるかもしれない。もう五年すれば必ずコメの状況かわる。そのときには消費者によろこばれる生産者になっていたい。」
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