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農業保護は世界の流れ アメリカ新農業法

 31日の農業シンポが目前となったが、自国農業を守る意志をアメリカ議会が示した。
 不足払い制度の復活など補助を強化したアメリカの02年の農業法が、昨年9月に失効し、議会の求める新農業法に大統領が拒否権を使い、現農業法が1年延長となっていたが、いよいよ新農業法が成立することとなった。「米国農業経済は絶好調」(ブッシュ大統領)というもとで、14日、議会下院が318対106の大統領が拒否できない大差でこの法案を承認したからだ。

これまでの2002年農業法の名前は”The Farm Security and Rural Investment Act of 2002”、「2002 年農業保障・農村振興法」から、今回の法案名は”Farm, Nutrition, and Bioenergy Act of 2007″「2007 農場・栄養摂取・バイオエネルギー法」と対象が拡大したと言える。02年の農業法で、これまでの不足払い制度(02年農業法で復活)・短期融資制度などの価格保障、直接固定支払い(96年、不足払い制度の廃止にともなって導入)、遊休地の所得補償などで農家を保護する施策を残しながら、それに加えて、果樹野菜生産に対するインセンティブ、生態系保存、栄養摂取、バイオエネルギーに対する対策を拡充したものだ。
予算は、今後5年間で約3000億ドル(約31兆円)、主要作物に対する農業補助金だけで計約350億ドル(約3兆6800億円)。年間所得100万ドル以上の農業者への補助金支払の停止、事業単位の分割により1農場が受け取ることのできる上限を越える補助金を受け取るという抜け穴を塞ぐための新たな規程を導入はした基本は変わっていない。
 07年新農業法のポイントを各種の資料から私なりに整理すると
◆農業保護政策としては・・・
・旧来ベースの価格保護(不足払い、短期融資制度、直接固定支払いなど)と、新しい市場志向型の収入補填支払いの選択システム
・従来支援が薄かった野菜・果樹生産の強化と支援。16億ドルを投資。新たに園芸や有機農業があり、さらに、栄養摂取の研究や、外注管理、貿易振興プログラムなどが含まれる。
・地域間の不公平をなくすための商品間のローンレートや目標価格均等化
◆バイオ、環境保全として・・・
・土壌保全プログラム(浸食防止のために農地の草地・林地への転換促進)、湿地保全プログラム(洪水常襲地などで耕作を中止。湿地や草原などに回復)、森林資源の保護と維持などの保全プログラムへの250ドルの投資。 この制度により、土地を休まさせることで農家に収入が補償されている(1ha 2900ドル、30万円)。
・バイオを主とした再生エネルギー確保のための投資の拡大。他の研究開発含め290億ドル。
 しかし、バイオ燃料生産によるトウモロコシの連作が肥料の大量投入、土壌流出、河川の富栄養化を招き、環境を悪化させることが指摘されている。
◆食生活改善では・・・
・原産国表示の強化、学生の食生活の改善、低所得者のフード・スタンプ計画の充実に1900億ドルなど食生活の改善も入っている。
などとなっている。

世界最大の農業大国のアメリカでさえ、こうした手厚い農業保護政策をしているのだ。アメリカの農業所得のうち政府の直接支払いが占める率は、99~05年で46、48、40、31、29、16、32%を占めている。
この新農業法の成立により、WTOのドーハ・ラウンドの交渉はさらに「難航」するだろう。
 だいたい、深刻な食料不足・価格高騰が世界を襲っている時、アグリビジネスと輸出国にとって都合のいいWTO農業協定を抜本的に見直し、国民の食料主権を基本とした農業生産を確保するルールづくりを追求しなくてはならない。WTOは、食料は「外国から買えばいい」という状況を前提に、価格保障や不足払いを「貿易歪曲的」とし削減させ、関税引き下げなど国境措置の空洞させようとしているが、そうした政策の前提は、すでに破たんしている。
 この1月、国連人権理事会の食料問題に関する特別報告は、WTOおよびIMF・世銀を名指しして、これら機関の政策が「食料を得る権利の擁護を掘り崩している」と指摘している。

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