高知の若者雇用対策
若者雇用の問題で、労組、議員団などとの意見交換の場で、問題意識を報告するためのレジュメから・・・
1. 問題の性質
①非正規雇用、フリーターなど不安定な環境
その中で、官制ワーキングプアの問題、
企業誘致での雇用条件の確保〔高知市はほとんどが常用雇用〕。
②そもそも高知にはたらく場所が少ない、労働条件のわるとところしかない。 / 有効求人倍率0.5
ミスマッチ ジョブカフェ、若者就職応援セミナー〔高知方式として評価は高い〕
キャリア教育 高知の地元企業の魅力を若者が知らない 工業界と教育機関がスタート
産業育成 新パッケージ事業と製造業、食品加工
農業の再興、医療介護、福祉労働の重視〔雇用効果が高い〕
③自立対策 「ニート」ひきこもりなど・・・ 若者サポートステーション、自立塾、/不登校施策
④社会保障 キャリアアップ中の生活保障、子育て支援など
という大きく言って、働き方の問題、雇用の場の問題、いわゆる「自立」支援の問題、若者の生活支援という4テーマがあると思っている。若者雇用の問題は、若者の県外流出、高知の明日の担い手の不足という県政課題となっている。
2. 若者雇用対策について
① 「若者の就職の現状と課題」 労働政策研究所の研究を参考に…
・国は、この3年間包括的な若者自立支援、就職支援策を展開してきた。
チャンスがないなど労働力の需要の側に大きな問題があるとして、初めて政策を実施
*政府の「新雇用戦略」(08.4)・・・ トライアル雇用、「ニート」の自立支援、企業が実施する職業訓練の評価や履歴などを記入するジョブ・カードの普及で3年間で100万人を正社員化、の方針。しかし、具体性がない上、唯一の目玉も、シンクタンクのNIRAは「ジョブカードは実効性がない」と批判している。
・「景気回復」とあわせ、失業率は改善してきているが、若者の失業率が2~3倍高いという構造はかわってない。
・若者で、失業率が改善している部分は、「大卒の女性、男性」で、学歴による格差が広がっている
また非正規でも、男性28%(大卒14.3%) 女性34.2%(大卒25.9)
・就職氷河期 30代前半では、無業と失業の合計は変化がすくない。NIRA「将来、生活保護に20兆円」
→ 採用年齢の引き上げ。キャリアアップ〔SOHOの若者枠など〕
・若者 正社員の半数が大卒。ニート状況の3割が中卒
→ 教育費負担の軽減、機会均等の実現など貧困の連鎖を断ち切る施策が必要。
・就職3年間の離職率に変化なし。転職によって、正規から非正規という傾向が高まっている。
・社会的排除の状態にある若者の調査がない。
高校中卒者がどうなったか、など最も困難な層の状況、問題点を全体としてつかむ公的な統計がない。それは、若者の自立は、従来は、企業と家庭が担ってきたため、視野の外になっている。実態をつかむ調査が必要
② 働くルール、公的なサービスと雇用の場についての動き
・ 介護・福祉職場の「人材確保に関する指針」 人材不足を解消するための労働環境の整備を示す。
・「次世代育成支援・基本的考え」 08年5月20日
「質の高い専門性のあるサービスを提供することで、子どもの最善の利益を保障し、子どもの健やかな育ちを支援することが重要である」「将来的に優れた人材確保を行っていくためには、保育士等の従事者の処遇のあり方は重要」
・自治体の非正規職員について 総務大臣の答弁(08年3月19日 予算委員会)
「同じ業務で働く人に(賃金や権利の)違いがあってはならない」
・高知市 「公契約条例と言えるものが必要」「市の事業でワーキングプアを出すことがあってはならない」
③ 製造業などの支援・・・ 工業技術センターの聞き取り参照〔下記参照〕
3.当面する具体的なとりくみの方向性
①公務労働、福祉労働、農業、製造業の位置づけを明確にし、くらしの充実とあわせ雇用の場の確保。
高知の未来、県民くらしの要求とあわせ、担い手問題としての発信が重要。
グリーンツーリズムなど田舎暮らしの魅力のノウハウの発信
②官制ワーキングプアとのたたかい。 公契約条例、ふじみ野プール事故判決〔公務の責任〕
③貧困の連鎖・・・教育の機会均等などの取り組み 就学援助、学費・教材費負担。働く権利の教育、稼働年齢の生活保護の適用〔キャリアアップ支援〕
などではないだろうか。
〔資料〕
【高知の工業、ものづくり基幹人材育成講座についての聞き取り 08年2月21日】
高知工業技術センター、市雇用対策担当理事などの話から・・
・ものづくり基幹人材育成講座~ 高知市の新パッケージ事業
12月から実施。夜6から9時まで。出席率は非常に熱心。基礎的中味、入社3年くらいを対象。座学でなく製造現場で役立つものをしている。講師は若手。4コース実施しているが、受講生の水準によって難しい、簡単すぎると評価が分かれるのでは。その声も聞いて次期に生かしたい。
・工業会は145社が結集。H17年に活性化計画をつくり、後継者、技術者養成などまとまりをもってとりくんできた。
たとえば、高知県は溶接レベルが低い。資格試験に他県は7割合格。高知は65%。技術力は資格保有者ではかられるので、資格保有者が多いと仕事がとれる。工業会で、国の事業をとって2年間、講習を実施してきた。高知高等技術学校で無料で、企業が材料を負担する形で実施。
食品加工も重視している。土佐町、土佐清水市のパッケージ事業で、センターが支援している。
工業会には、共同受注部会がある。センターも参加。それぞれの持ってる技術や商品をくみあわせる努力もしている。最近は、鍛造が景気がよい。一時、中国に出て行ったが、品質が保てず、その後始末に大きな費用がかかるというので国内にもどっている。しかし、高知でも8社あったものが3社になっている。室戸に工場が進出したが、熱処理ができる工場で、今まで鍛造したものを大阪に送っていたが、現地で熱処理ができる。それで、機械加工まで高知でやろうと動いている。
香川のクレーン製造業者は、品質を大事にして独自の規格を設定。問い合わせもある、溶接技術があがれは、この仕事もとれる。また、造船が好調だが、規格がかわり、高度な溶接技術がもとめられるようになった。外側のバリをグラインター処理すると、錆が出やすく耐久性が落ちるので、グラインターが禁止された。
高知は、自動車産業など大量生産になれてない。技研の圧入工法?がヒットして、多くの県内企業が潤っている。他の仕事をことわっているところもある。技研は開発だけ。しかし、その仕事がいつまでもあるわけでなく、大規模な設備投資はどの会社も躊躇する。また。今後のこともあって他の仕事を切るわけにもいかない。そうした生産体制の弱さという問題がある。
・地元企業のよさを知ってもらうことが必要。トヨタなど大企業と地元の●●鉄工では印象が違う。給与も違うが高知で自宅でつとめることを考えればそんなに差はない。県内求人が遅いということもある。最近、高校の先生方と交流が深まってきた。
また、溶接などはどこも不足しているが、現場で汚れる仕事。避けられている。
組み込みソフトでも本当に使える技術者をほしがっている。高知の企業で、首都圏の仕事を請け負っている会社があるが、人がほしい、という要望がだされている。こういう人材も育てていきたい。
県と教育委員会が再チャレンジの事業として「高知で働く」という意味づけにとりくみだした。
奨学金制度も必要。富永さんが工科大に基金をつくり、応援している。
・講習は、8名で対応しているが、目一杯。今回は12月~2月の3ヶ月で4コースを同時にやったが、5~12月で4コースを順次実施するようにしたい。来年は県単で1コース追加される。主にセンターは共同開発ということで技術レベルの向上につとめているが、お金のあるところしかできない。中小企業などの後継者育成など研修をするためにも、費用の要らない今回の取り組みはよい。いま現場では、高専や工業の卒業生でなく、普通科を出た人が就職しており、基礎がない。
・センターの体制充実、予算の確保が大事。他の部署よりは削減率が低くなるようがんばっている。新知事にはがんばってもらいたい。
→感想。都市部にいっても、ボロボロになって帰ってくるということもあるし、でていったら帰ってこないという問題もある。若者の県外流出は、県民的課題となっている。技術力のある人材を育てれば、仕事があるし、つくれる。 センターや後継者を支援する制度(奨学金とか)がいる。また、高知の工業を知ってもらうためにも、中学生の時に職業教育をすること(労働局均等室も女性の職業選択の幅を広げる観点から)が、必要だと思う。
★工業会・北村会長(技研製作所)が1月に発表したレポートの中で、・・・一次産業が基盤、土佐の文化、条件にあった工業化。一次産業に工業が恩返しする番。その中で高知発の工業の発展を、という提言内容はなかなかおもしろい。
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労組の取り組みとしては、広告労協の就職フォーラムが教訓的。高知でも、組合員が職場の状況や働きがいなどをセミナーとして開くことは可能では?
ネットカフェ難民3を見て、もやいの活動実態がよくわかった。就労自立のステップの階段は長い‥
社会的理解と同時に、そういう空間が必要だと実感したしだい。
PS‥反貧困フェスタのDVDが2本完成!
Posted by: いのぱ | May 28, 2008 09:23 AM