再び米イージス艦 宿毛へ
来る5月21~26日、「乗組員の休養と親善」を目的に、アメリカ海軍のイージスシステムを搭載したミサイル駆逐艦「オカーン」が、一昨年の「ラッセル」に続き、宿毛湾に入港することが計画されている。(写真はOKANE ホームページより)
この問題については、
① 米軍再編との関係で、宿毛が狙われていること(「国防の論点」より、後述)。
② 尾崎知事が国防、外交は「国の専管事項」という俗論にたって、アメリカ大使館に「非核証明」をもとめないという前県政よりも、後退した姿勢をしめしたこと。
が特徴である。
「ラッセル」と「オカーン」は姉妹艦であり、核兵器を搭載できる能力をも持っているミサイル駆逐艦である。前回の寄港にあたっても、高知県民の「非核平和」の願いを大きく脅かすものと反対運動を展開した。
高知県議会は、1997年12月19日、全会一致で「高知県の港湾における非核平和利用に関する決議」を採択し、港湾の平和利用を宣言しており、この立場で行動するのは県の役割である。
県は、政府が「事前協議がないので核を積んでいない」との主張をくりかえすだけだが、アメリカは、艦船への核搭載は事前協議の対象外という態度を一貫してとっており、なんら証明にはならない。
昨年、8月、アメリカ空軍のB52戦略爆撃機が、誤って核弾頭6個を搭載したまま米本土上空を飛行していた事実が明らかにっている。核兵器管理のずさんさを示すとともに、その調査結果の公表にあたり、ウィン空軍長官は記者会見で「通常は核兵器が関与しているかどうかについて、肯定も否定もしないのが方針だ。今回の事件についてはとくに例外としたい」と述べていることからも明らかであり、明確な「非核証明」を求めることには、高知県民の願いである。
また、06年、「乗組員の休養と親善」を「目的」として、宿毛湾に入港したラッセルの艦長は「寄港の目的は日本、東アジア地域に米国がいかにコミットしているかを示すことだ」「コミットとは日本と一緒にオペレーション、作戦するという意味だ」と明確に述べている。この発言がしめす通り、日米両政府は、05年10月の在日米軍再編に関する合意で、軍事協力を向上させる分野として港湾の使用を明記し、共同作戦計画を検討するため、民間港などの詳細な調査や演習を実施することを盛り込んでいおり、日本各地の民間港を米軍艦船の補給・中継・出撃拠点する動きが活発化している。07年、06年と米軍艦船の日本の民間港への寄港は、ともに28回と、旧ソ連崩壊以降、最多を記録し、復帰後はじめて沖縄の民間港にも与那国町の反対、沖縄県の自粛の要請を無視し寄港を強行している。今回の寄港もこうした在日米軍再編、日米共同作戦の一環として行われることは、火を見るよりもあきらかである。アメリカは、現在も違法なイラクへの侵略戦争を続け、多数の犠牲者を生み出している。
また、多発する在日米軍の凶悪犯罪や米軍作戦を支える海上自衛隊イージス艦の漁船衝突・沈没事件など各地で住民の安全を脅かしている。
宿毛湾については、07年3月に、石破防衛大臣らとの共著「国防の論点」で、防衛政策に深く関わっている森本敏・拓殖大教授が「空母が寄港できる港を、佐世保以外にもう一つつくったほうがいいと思います。私の頭の中にあるのは、四国の西端にある宿毛湾です」と述べており、特別な警戒が必要となっている。
高知県民の安全と港湾の平和利用を守るためにも、米戦艦の入港を拒否すべきである。
憲法は、戦前、地方が国の下請け機関となり、戦争を推進していった反省から、地方自治を明記し、中央政府と地方政府の二重構造によって、人権保障を担保する構造となっている。国と地方は対等であり、県民の平和、命にかかわる事項に地方自治体が関与、対応することは当然の権利である。先日、航空自衛隊のイラクでの活動を憲法違反と断じた名古屋高裁の判決は、憲法が保障する平和的生存権には「具体的権利性がある」と断じており、県民の代表として県が平和的生存権に基づく行動をとることには合理的根拠がある。
米軍の入港は安保条約や地位協定に基づく超法規的措置でもなく、「国防は国の専管事項」という主張は、なんら法的根拠のない俗論でしかない。
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