高齢化でも社会支出率は微増
またまた「社会保障国民会議」ネタ。4月16日の第三回の議事要旨を読んでいると面白い内容をみつけた。
権丈善一(けんじょう・よしかず) 慶應義塾大学商学部教授の提出した資料と発言。
1つは、高齢化が進んでも国民所得に占める社会保障の割合は少ししかあがらない。2つめは、社会保障費、医療費が今後約20年間で1.6倍、1.7倍になるのは名目値で国民所得で割った値は微増だということ。「費用が激増し大変だ」と騒ぐ論調を諫めている。
氏は、横軸に高齢化率をとって、縦軸にOECD基準の社会支出(社会保障給付費の国民所得に占める給付の割合)をとった「高齢化率と社会保障の給付規模の国際比較」という図を提出している。
そして「横軸に65歳以上人口比率をとったのは、常識的に考えれば、この値が大きくなれば社会保障給付費の国民所得に占める割合も大きくなると思われるのであるが、必ずしもそうではないということを示すためである」と述べて説明している。
厚生省の試算をもとに
2025年。高齢化率約29% 社会保障給付費の国民所得に占める割合は26.1%。2006年より、高齢化率が10ポイント上がってる社会支出は23.9%から約2ポイントしか上ってないと「ほかの国と比べると、日本の社会保障給付水準というのは非常に低い。」と主張している。
ちなみに
OECD基準の社会支出 高齢化率
スウェーデン 44.1% 17.2
フランス 39.8% 16.6
ドイツ 36.8% 18.8
イギリス 26.7% 16.0
アメリカ 20.5% 12.5
日 本 23.9% 21.0
(高齢化率…65歳以上の人口比率は、05年、総務省統計局より。氏の図は03年で示しているが、その時の日本の高齢化率は、総務省の推計人口では19.0%)
さらに、厚生省の予測では「社会保障の給付と見通し」として
2006年から2025年で
社会保障費は 90兆円→141兆円、1.6倍
医 療 費 27.5兆円→48兆円(これは後期高齢者医療制度などで8兆円削減した上での数字)と1.7倍。となっているので、「非常に大変だ、大変だと」と社会保障は論じられていると指摘し、こう批判している。
「しかし、これは名目値の値であり、この名目値の社会保障給付費をその時々の国民所得で割った値が下の図になる。そうすると、日本の社会保障というのは、これから20年間で国民所得に占める割合が2ポイント増えるかどうか。医療給付費も2ポイントは増えないという状況でしかない。」と説明している。
そして「「いやはや、日本という国は、何とも『小さすぎる政府』指向の国家である。今のままでは、年金給付費の国民所得に占める割合は2006年度1.26%から2025年12.0%へと0.6ポイント低下、医療給付費の国民所得に占める割合は2006年度7.3%から2025年度8.9%へと、わずか1.6ポイントの増加が見込まれているだけである。そうであるのに、将来の社会保障のための負担を心配して、今いっそうの歳出削減努力をと、この国では日夜国民に説かれているのである。今日の為政者たちは、20年後、この『小さすぎる政府』日本で暮らす人びとの生活を、どういう目に遭わせたいというのだろうか」と指摘している。
だいたい「社会保障費が伸びて大変だ。国が潰れる」というような論があるが、日本より社会保障費の高いヨーロッパの国は潰れてない。違うのは、日本の大企業の税と社会保障の負担の軽さだ。
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