定住自立圏構想 ~道州制への仕掛け
総務省が検討してきた「定住自立圏構想」の提言が15日、発表された。「もはや、すべての市町村にフルセットの生活機能を整備することは困難である」--憲法で保障された地方自治の人権保障規定を否定したことから「定住自立圏構想研究会」の提言は始まっている。構想は、大都市への人口流出の防止に向けた自治のあり方を検討する、というもので、人口5万人以上の「中心市」に都市機能を重点的に集積させ、周辺町村との連携で自立可能な「圏域」の形成を目指す・・・と言うものだが、 読んでみて、「選択と集中」のもとに仕切りなおしした中心市街地活性化法など都市部への投資の集中、公立病院ガイドラインなどで提起されている医療供給体制の削減を前提としたネットワーク化、そして連携をするための交通網の「重点的・戦略的な投資の促進」、ICTなど情報インフラを「新しい公共事業」として進めるというあいかわらずのハコモノと医療・福祉の切り捨て以外何も見えてこない。 本当の目的は別にあると感じた。
一番説明がつくのは、「道州制ビジョン懇談会」の中間報告でも書いたが、小規模自治体の処理をどうするか、ということにあるのではないか。都道府県が担っている衣料、教育、環境など広範な事務を基礎的自治体におろし、都道府県を空洞化させていく、しかし、そこで小規模自治体がネックとなる。しかも、空洞化した都道府県で小規模自治体を直轄することは不可能、非効率である。だったら大きな自治体と協定を結ばせて、その障害を克服しよう、という道州制にむけての仕掛けということに実際の目的は尽きるのではないか、という気がする。教職員の人事・給与の権限、教員委員会の一元化など特例的な権限委譲は、その流れで見ると納得できる。地方自治を破壊し、財界の近視眼的な利益に見合った地方をつくるということだろう。
だいたい、中心部の都市機能を、すでに協定を結ばなくても住民は利用しているし、そもそも地方が疲弊してきた原因の分析もないから、処方箋もまともなわけがない。道州制への仕掛けなら、そんなものはどうでもいいからゾンザイになるのは当然だが…
「提言」は、定住に不可欠な雇用の確保について「地域を支える基幹産業が重要」と指摘するだけである。新産業の育成・企業誘致、棚田オーナー制度や市民農園など交流人口の拡大、地産池消などあげ、「いまさら何を」という内容ばかりがならんでいる。
特に、農業では「食料自給率の低下や食の安全が課題になる中、ビジネスチャンスとする必要がある」とか「中心部へ都市機能を集中し、周辺市町村に農地を集約化する」という、まったく地方の状況、農業の実態も知らない、机上のプランを並べたてている。
地方の人口減は、一次産業の衰退、社会保障の切り捨てに尽きる。一次産業が元気であれば、それに付随して、製造業もサービス業も発展する。医療、介護の充実すれば雇用効果は大きい。若者が地方に定着する。
「提言」は東京は出生率が低い、貧しくても地方が高いところがあるとして、地方の発展が少子化にも貢献すると述べているが、それなら地方へ疲弊させ、日本社会の未来のゆがみをつくっている一次産業、若者切捨て、社会保障と地方切り捨ての政治の転換こそ処方箋となる。
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社会保障をそれぞれの自治体に保障した規定なんて憲法にはありません。保障の単位は個人です。
市町村が主体になる必要はまったくありません。広域で連合したほうが充実したサービスが提供できるなら、当然、問題はありません。
広域的な連合を認めないなら、合併させて各地区の自治権を失わせ、代わりに巨大化した市が行政サービスを担うことになるでしょう。
そのような強制合併を避けるためにこそ、広域で連合できるようにするのです。
合併か、広域で協力してのサービスの共同提供か。二つに一つですね。
Posted by: mirai | December 03, 2008 11:08 PM