後期高齢者医療の源流 財界とアメリカ
後期高齢者医療への怒りはついに自民党内にも見直し派を生み出したが、この医療改悪の源流はどこか・・・毎年、2200億円の社会保障予算削減のもと、医療費の負担増など国民を苦しめられているが、巷には民間医療保険の宣伝が溢れている。社会保障の税負担や医療保険の企業負担軽減、そして新たな市場の拡大…そこに一貫した財界とアメリカの要求がある。関連文書を見直すと・・・
当時の経団連、日経連の共同宣言「高齢者医療制度改革に関する基本的考え方」(01年5月16日)では、「医療費が際限なく増え続け、医療保険財政は危機的状況にある。」とし「保険財政を圧迫する高齢者医療制度の抜本改革なくして、持続可能な医療制度の再構築は望み得ない」と「医療改革」の必要性を述べている。
そして方向性として「現役世代と同様に扱うことが困難な年齢層については、現役世代の保険制度から分離して、世代内・世代間を通じた公平な負担のもとに、新たな制度を構築する必要がある。」「就業スタイルの変化や疾病リスクの変化に対応し、新たに「シニア医療制度」(仮称)を創設する。」…これが「後期高齢者医療制度」のことであることは明白だ。
内容面では「新たに設置する医療制度は、『自立・自助・自己責任』の要素を高める観点から、対象者を一律に経済的弱者と見なさず、負担能力と受益に見合った拠出を求める必要がある。」「可能な限り現役と同じルールに則った保険料、自己負担を求める。」と被扶養者をふくめた保険料負担へ道を開くことに繋がってる。
医療費抑制策の「特に、伸びが著しい高齢者医療費について、経済の動向や老人人口の伸び等を勘案した一定の範囲内におさめる取組みが必要である。」「診療報酬については、包括払いを基本とする。」「患者のコスト意識を喚起する観点から、適切な自己負担を求めることが重要である」と述べ、「具体的施策」では「定率1割負担の徹底 」「診療報酬体系の原則包括払い化」「介護保険への移行の促進(介護保険制度に移行しない療養型病床群の診療報酬の適正化等)」「終末医療の見直し等」と、ほぼ後期高齢者医療制度に引き継がれている。療養病床削減にも触れられている。
一方、日本に規制改革を求めてきたアメリカはどう要求してきたか。
◆01年の「年次改革要望書」では、「医療機器・医薬品」のところで、
「日本の医療費を押し上げている制度の非効率性(世界一の平均入院日数、過剰な数の医療施設…)」と認識をしめし、
「市場競争原理を導入し、日本の医療制度を改善するために、一般に対する医療情報開示の水準を向上させ、病院や看護施設での民間の役割の拡大等を含む構造改革を推進する。」と提言している。
02年は「全体的なコストを抑制する一方で高齢者に質の高い医療を提供し続けるため、制度全体の効率を高める方策を検討すべきである。」と高齢者の医療制度改革を提言している。
◆「日米投資イニシアティブ報告書」の医療サービス部門の米国側関心事項から
・02年/「米国政府は、魅力的な企業投資の観点から、いわゆる「混合診療」の解禁について関心を表明。」「米国政府は、営利企業による医療サービスの提供を認めること…を要請。」
・06年/「 米国政府は、いわゆる「混合診療」の解禁について関心を表明。」「米国政府は、営利企業による医療サービスの提供を認めることを要請」
・・・と公的医療を後退させ、「シッコ」で描かれるようなアメリカ型の民間保険による医療の道を要望してきている。
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