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療養病床は高知の文化 医療シンポ

 24日「高知の医療・介護を考えるシンポジウム パート2」が開かれ、600名が参加。後期高齢者医療制度、療養ベッドの6割削減問題題をテーマに議論。医療改悪の全体像が浮き彫りとなるものとなりました。
 パネラーは田中誠上町病院院長、田中きよむ高知女子大学教授、川村信夫高知市老人クラブ連合会会長、畠中伸介高知県健康福祉部長、春名なおあきさん。
 この中で、田中・上町病院長が「高知は全国より10年以上先を走る超高齢先進県」「療養病床は高知の文化。なくてはならないもの」と力説。分かりやすい話でした。私なりに理解した内容を下記にまとめてみました。

田中誠・上町病院長の報告(大要)    
上町病院は、179床の療養ベット92医療、87介護。今日現在、178人が入院。平均年齢81歳。90歳以上が45人。うち女性42名。最高齢は102歳。平均在任日数600日を越えてます。
超高齢化社会。日本の医療制度は世界一。その結果、世界一の長寿国。全国平均で男性78.8歳 女性85.8歳。高齢者は、身体的には弱者ですが、経験と知識は豊富な大先輩。戦中戦後、混乱期を通じ、今日の日本を築き、支えてこられた。その方々が病気になり、寝たきりになり、医療費がかかりすぎる、ダメだダメだと差別しまして、後期高齢者医療制度をつくった。この日本政府とは何なんでしょうかねぇ。こんな国でしょうか。
まず、高知県は全国の10年以上先を走っている高齢者の先進県だと、ということを1つ頭に入れてください。
さて療養病床とは何なんでしょうか。
昭和48年に老人医療費が無料になり、総合病院のベットが高齢者で溢れるんです。その受け皿として老人病院が急増します。いろいろ社会問題がおこり、厚労省は、特例許可老人病院をつくりました。病院の中に家族が申し込んで介添人をおくのです。平成なると介護職員の配置を義務付けました。介護力特化病院といいます。H5に療養型病床群となり、H13に第四次医療制度改革で、療養病床と名前を変え、平成12年の介護保険の設立によって、医療型、介護型となって、現在の療養病床となるわけです。猫の目のように変わってきた。関係者でないと今どうなっているかわからない。
 国の医療制度改革。財務省主導による医療費適正化計画。小泉・竹中ライン、経済財政諮問会議。それによる「小さな政府」路線をおしすすめてきました。小さな政府とは、国民が豊かな生活をするために、社会保障よりも、まず経済を成長させなければならない。だから、医療費の事業主負担は低いままに保って、家計の負担は増加の一方。国民はこれで豊かになったか。OECD加盟諸国で、経済成長率は最低。貧困率は下から三番目。貧困層の共働き世帯の割合は突出している。働けど働けど・・・啄木の世界です。聖域なき構造改革というのが社会保障を削減するという中で医療費の削減がすすめられた。当時、国民医療費31兆円、パチンコ産業30兆円、葬式産業15兆円。国民医療費決して高くないと思いますね。国民が長生きしたら医療費はのびるのは当然です。医療費削減は、健康な生活を否定するものです。
 17年に経済財政諮問会議の方針により財務省が厚労省に医療費削減しろと圧力。一番へラしやすいとはどこか考えた。救急や一般をなくすと非難ゴウゴウとなる。とても出来ない。そこで、高齢者の医療費が高い、それは入院期間が長いからと考えた。療養病床は、長期の慢性の入院を使命としております。当然入院期間が長い、それがなくなれば、平均在院日数が劇的に短縮し、医療費を抑制でき、経済財政会議に顔向けができると考えた。高齢者医療に医療費が使われているという万人向けの話はまやかしですね。療養病床の半分は社会的入院だ、という説もこじつけです。どんな医療しても定額だから十分な医療をしてない、というのは偏見です。そういうことでマスメディアや学者を巻き込んで、「理由付け」をして周囲を納得させて、慢性期の寝たきりになった高齢者の病床を半分にする。おまけに費用のかさむ介護型の療養病床をなくす、というとんでもない法案を作って、小泉首相は、当時、郵政民営化のドサクサにまぎれて、アッと言う間に通してしまった。全然、議員さん達も大きな声をあげてくれなかった。介護療養病床はできて、たった6年しかたってない。それを壊して、38万床を15万床にする。ろくに議論もされず拙速な形ですすめられた。もともと動機が不純、その理由もこじつけですので、一杯問題が出てきております。医療費削減のための病床削減。本末転倒です。
 病床を減らす仕組みを厚労省は考えた。それが医療区分という考え方。1を社会的入院、診療報酬を赤字に設定。療養病床の入院患者さん、脳梗塞、脳出血、脳血管障害、認知症、骨折、悪性新種(がん)、糖尿病。この医療区分はと見ると2にも3にもない。医療区分1です。これらの方々は入院の必要がない、とした。とんでもない。終生にわたる医療、管理が必要です。ほとんど寝たきりです。在宅ではとてもとても無理です。実際、医療区分1の方がどれだけいるか。35~40%、だいたい全国もこのくらいです。このカラクリで療養病床をなくす。老いを否定する社会です。
 療養病床が一番多い高知県がターゲットとなった。医療5000、介護3000。財務省、厚労省の攻撃を県はまじめに受け止めて、県民の現状もおかまいなしに削減策に走った。厚労省の計算式に当てはまると2848床。ただ3千床以下へ削減することに突き進んだ。「住み慣れた地域で暮すのが一番」というが、これは夢。現実無視の机上のプラン。全国に先駆けて、模範解答をつくった。
 療養病床が人口10万人当たりで、高知県は日本一多い。老人医療費も高い。当たり前です。本県は全国より10年以上先を走っている超高齢先進県です。10年後には、虚弱老人の数が二倍になる。全国一でどこが悪い。慢性疾患を持つ虚弱老人にとりまして最高の県だと思います。高知県の療養病床は、その必要性があって育ってきた。療養環境の改善に非常に熱心だった。療養環境を改善してきた。全国に自慢していい。療養病床は高知県の文化だと思います。文化を壊してどうするんですか。
 療養病床に入れない方をどうするか。その怒りの声をごまかすため厚労省は介護療養型老健というものをつくりました。現状の看護と介護の体制は残しますと言った。確かに残しましたが、しかし介護報酬は2割減。それでやったらこの施設もつぶれます。詐欺です。普通の老健、特養もありますよ、といいますが医師はゼロか一です。終末期を看取るというのは、夜間も休日もないのです。医師は24時間必要なんです。助か人も助からなくなる。人員が少なくサービスは低下するでしょう。過酷な労働条件で看護、介護スタッフも疲労困憊でやめていくことになる。 厚労省も本音では在宅はとても無理と思っている。ごまかすわけです。居宅系施設と名前をつけて、在宅とする。ケアハウス、特養ホームなどみな在宅ですよ、として、ここに医療は往診してください。訪問看護に行きなさいというもの。しかし、本県の在宅医療を担う在宅支援診療所は日本で一、二位という少なさです。ありません。24時間とても無理です。医療難民、介護難民と言われるゆえんです。
 現状では在宅医療の方が費用がかかります。療養病床ならだいたい8万~10万円の自己負担。これを在宅で療養病床と同じ程度のサービスを行うといくらかかるか試算したら78万円かかる。びっくりしますね。
 皆様方、今、後期高齢者医療制度で頭が一杯だと思いますが、緊急の課題は介護難民、医療難民をどうするか、ということです。どうやったら皆様方が支えていけるのか。療養病床をこのまま残していくのが一番。残す以外にない。
 在宅で見るためには、家族が仕事をやめなければならない。高知県の労働力はますます低下していく。経済基盤の衰退は目を覆うばかりです。
 医療費は公共事業よりはるかに、経済効果、雇用効果が高い。半分が人件費。一昨年、日銀の高知支店が試算をしていました。県内の医療の総生産額は1617億円。県内の総生産に占める割合は、6.8%。製造業が10%ですから、医療業は県の主要産業です。療養病床が5千床削減されると年間250億円がなくなります。県内の総生産のおよそ1%です。主要産業の医療をつぶして、それでどうします。療養病床があるから、この高知の超高齢社会がなりたっている。そう思いますがどうでしょうか。
 一昨年、入院されている患者さんの家族の方々に緊急アンケートをとりました。資料につけています。あとでゆっくり読んでください。そして考えてください。読んでいると胸が詰まって涙がでてきます。
 重度の意識障害、要介護高齢者をどうするか、認知症の人をどうするか。現在では見て見ぬふりする議論ばかりです。無責任です。社会的弱者には、手厚いセーフティネットを、という建前はのべられていますけれど、手厚くすればするほど高齢者は長生きしコストはかかります。これは常識です。この国の政策は、元気なお年よりはもっと元気でいてください。病気になったり、弱いお年よりは早く死んでください。運の悪い人は早く天国に行ってください、というものです。
 私は便利で刺激のある所にあってこその療養病床だと思っています。気軽に見舞いにこれる、通勤の合い間に顔を見にこれる。そういう街中での療養病床をやっています。これからも続けていきたい。
みなさんも大きな声をあげてください。療養病床は必要です。高知の文化です。
(文責は当ブロガーです。)  

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