生活保護の通院・移送費 「必要な医療は制限しない」と高知市
本日、高知市に、生活保護の通院・移送費問題で市議団が申入れ(文書は下記参照)を行いった。対応した副市長らは「必要な医療を制限するようなことはしない」と明確に回答した。「県外に治療に行っている人もいる。」「医大病院は南国市で、福祉事務所の管内という機械的なことは実態にあわない」など議論になった。ことの発端は、厚労省が一部の特異な問題をとりあげて生活保護の実質切り下げに結びつく通達を出したことにあり、四国の県庁所在地の市でも「機械的な対応」が現になされている。「そんなところがあるのか」と市側は驚いていた。
また、22日には、医者の証明、領収書、レシートなど適正な手続きで過払い、不足がないようにせよ、との新たな通達が来たとのことだが、この点は市は「従来より適正な手続きをしており是正すべきことはない」と回答した。
【申入れ文書】
高知市長 岡崎 誠也 殿
生活保護の通院・移送費の削減反対、医療を受ける権利を守るための申し入れ
2008年4月23日
日本共産党高知地区委員会
日本共産党高知市会議員団
08年4月にはいり、厚生労働省は、生活保護の実質切り下げを強行する通知をだしました。これまで生活保護利用者に対し支給されてきた通常の通院にかかる移送費が原則支給対象外となるというもので、保護基準の実質的切り下げ、医療を受ける権利の侵害による「棄民政策」といえる暴挙です。
昨今の地域での医師不足ともあいまって、難病等の対応など広域的な医療機関への通院が余儀なくされる現状がひろがっており、通院先は原則、福祉事務所「管内」とすることに、障害者、難病団体などからも「通院や医療デイに継続して通うことは命綱」であり「命の切り捨てにつながる」と強い批判の声がだされています。
そもそも、こうした不利益変更を行うには、「正当な理由」(生活保護法56条)が必要にもかかわらず、厚生労働省は、全国調査の結果もまたず、また、関係者、利用者の意見を聞くこともなく、北海道の「滝川事件」など特異な不正受給を口実にし、一方的に切り下げに踏み切りました。「滝川事件」は、暴力団関係者などの不当に圧力に屈した行政の姿勢に起因するもので、なんら「正当な理由」とはなるものではありません。
生活保護世帯の43.5%は高齢世帯であり、37.5%は障害・傷病世帯です。こうした世帯の多くが、何らかの疾病を抱え、日常的に通院をしていることは容易に想像でき、「滝川事件」を「口実」にした改定によって不利益を受けるのは、多くの一般の保護利用者です。もっとも弱い立場にあり声を出せない人々から、広く薄くその権利をむしりとっていくやり方であり、断じて許すことができません。
4月1日の国会質疑(参院厚生労働委員会。小池晃議員への答弁)で厚生労働大臣は「必要な医療を受けられないという事態は起こさない」、厚労省社会援護局長は「現に受けられている方の継続性については十分配慮したい」と答弁していいます。また、17日の生活保護問題対策全国会議などの交渉の中で厚労省は「へき地の基準を国として明確に示していないので、東京23区内にあっても必要な場合には出すことができる」「高額の範囲は、地域事情もあり国として一律に示す考えはない」とも回答しています。福祉の窓口の機械的な対応で、必要な医療から排除されるようなことを起こしてはなりません。
よって、住民の福祉の増進を目的とする自治体の長として以下の点で努力をつくされるよう申し入れるものである。
記
1.通院・移送費を含め、必要な医療が制限されることがないよう、福祉事務所等で住民の立場にたった対応をおこなうこと。
2. 一方的な生活保護の切り下げである今回の改悪に対し、国に対し撤回をもとめること。
3. 急増する生活保護に対し、親身に相談できる体制が確立できるよう財政措置を国に対し求めること。
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