フリーターの正社員化 2つの報告
「フリーターの正社員化」を議題にした政府とシンクタンク2つの報告が続いた。
23日の経済財政諮問会議に「フリーター100万人を3年間で正社員化」するという「新雇用戦略」を厚労大臣が提出したというので、関係資料をのぞいてみた。
若者については、トライアル雇用、「ニート」の自立支援、企業が実施する職業訓練の評価や履歴などを記入するジョブ・カードの普及で3年間で100万人を正社員化。女性の就労促進は、3歳未満児15万人分の保育施設を増設、仕事と家庭の両立支援などで20万人の就業増。定年延長など高齢者の就業者を100万人増やすというもの。読んでみてどこに実効性が担保されてるのかさっぱりわからない。
一方、24日には、総合研究開発機構(NIRA)が、「高まる雇用リスクにどう対応するか」と就職氷河期に急増したフリーターやニートの問題を取り扱っている。この中で、政府のジョブカード制度について「企業の自主的な判断で正規雇用への転換を受け入れる可能性は限られている」「実効性は期待できない」と批判している。
また、バブル後に若年層の採用減を通じた雇用調整を行った企業は、「次の景気後退局面でも、かなり類似した手段を取る可能性が高い」と指摘している。きちんとした雇用の義務化、安易な非正規雇用、派遣労働の規制しないがきり、解決はないと、政府の検討内容が、財界系のシンクタンクによって不合格と言われたに等しい。
だいたい、「新雇用戦略」というが、派遣労働を禁止するとか、そういう思い切った手立てはない。全体として正規雇用というが、「短時間正社員制度の導入促進」がうたわれており、「自由に出入り、移動できる雇用システムの構築」という側面が強い。
それとかみ合うように、経団連会長らが同会議に出した「生活直結型産業の発展にむけて」では、医療・健康、保育、介護、教育などを「産業」として位置づけ、医療・介護だけで75兆円産業とし、「市場の改革」「規制の見直し」として、いっそうの規制緩和をもとめている。特に保育分野では、保育所の設置基準の廃止、認定子ども園、保育ママの推進など保育行政を根本から解体する要求を突きつけている。「非正規」より、ちょっとましな安く、細切れの「正規雇用」を拡大である。
NIRAのレポートでは、サッチャー政権の政策に「失業、貧困をすべて個人の責任問題とする考え方にたって市場競争を強く推し進めた結果として、深刻な社会のゆがみが発生した」とかのべながら、非正規雇用者へのセーフティーネットの充実を掲げ、その柱として「負の所得税」――低所得者は最低保障給付を行うとともに、高齢者に所得再配分のための所得課税を行い、税と社会保障を組み合わせ、労働による所得増加に応じて手取り収入を増やす方式を提案している (生活保護費の収入認定の際の勤労者控除を拡大することと似てるような気もするが・・・)。そして、まとめの最後に、「本来の正規雇用は、社内での十分な能力開発を通じて、地域コミュニティでの長期安定雇用確保を目標するのがよい」、それが「短期的な収益性のみを優先する経営方針とは相容れない部分もある」として、雇用制度全体の国民的合意を呼びかけている。
若者を使い捨てにする社会に未来はない…
ちなみに、マルクスの解明によれば、賃金とは、他の商品と同じく、労働力という商品の生産に必要な費用から構成されている。それは、1、労働者の衣食住の費用 2、子育て費用など次世代の労働者の再生産費 3、労働者本人の育成費・教育費。・・・少子化というのは、労賃が、再生産費を割りこんでいることの証である。
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